条文・判例・学説を体系的に整理
動産譲渡担保の損害保険金への物上代位
個別の動産を目的とする譲渡担保の目的動産が滅失したときは、譲渡担保権者は、設定者が通常の営業を継続しているか否かにかかわらず、目的動産の滅失による損害を填補するために設定者に支払われる損害保険金の請求権に対して物上代位権を行使することができる。
集合動産譲渡担保の通常営業内売却
構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保の設定者が、通常の営業の範囲内で目的動産を売却したときは、買主は、買主が譲渡担保の設定について悪意であっても、拘束を受けない所有権を承継取得し、譲渡担保権はその動産に及ばなくなる。
平成18年7月20日最高裁第一小法廷民集60巻6号2499頁(所有権確認請求事件)
集合動産譲渡担保と所有権留保の優劣
集合動産譲渡担保権者は、買主(設定者)が所有権留保特約付きの売買で買い受けた動産が設定者に引き渡されて集合動産を構成するに至った場合でも、売買代金が完済されていないときは、売主に対し、その動産について譲渡担保権を主張することができない。
平成30年12月7日最高裁第二小法廷民集72巻6号1044頁(不当利得返還等請求事件)
動産譲渡担保権者の第三者異議の訴え
動産の譲渡担保権者は、特段の事情がない限り、第三者異議の訴えによって、目的物件に対する設定者の一般債権者がした強制執行の排除を求めることができる。
昭和56年12月17日最高裁第一小法廷民集35巻9号1328頁(第三者異議)
後順位譲渡担保権者の私的実行
動産譲渡担保が同一の目的物に重複して設定されている場合、後順位の譲渡担保権者は、私的実行(目的物の引渡請求)をすることができない。
平成18年7月20日最高裁第一小法廷民集60巻6号2499頁(所有権確認請求事件)
弁済期後の譲渡担保権者の処分権能
債務者が債務の履行を遅滞したときは、債権者(譲渡担保権者)は目的不動産を処分する権能を取得し、この権能に基づき、適正評価額で確定的に自己の所有に帰せしめ、又は第三者に売却等をすることによって換価処分することができる(帰属清算型の合意がある場合も同じ)。
昭和62年2月12日最高裁第一小法廷民集41巻1号67頁(所有権移転請求権仮登記の抹消登記手続)
所有権留保と譲渡担保の競合
所有権留保特約付売買の売主は、買主が代金完済前に目的物に譲渡担保権を設定し占有改定により引き渡した場合でも、残代金の回収のため目的物を処分できる。
平成30年12月7日最高裁第二小法廷民集72巻6号1044頁(不当利得返還等請求事件)
借地上建物の譲渡担保と土地賃借権
土地の賃借人が借地上に所有する建物に譲渡担保権を設定した場合、その効力は従たる権利である土地の賃借権にも及ぶ。
昭和40年5月4日最高裁第三小法廷民集19巻4号811頁(建物収去土地明渡請求)
譲渡担保と清算義務・受戻権
所有する土地に譲渡担保権を設定した債務者は、債務の弁済期が経過した後であっても、債権者が担保権の実行を完了するまでの間は、債務の全額を弁済して目的物を受け戻すことができる。
昭和62年2月12日最高裁第一小法廷民集41巻1号67頁(所有権移転請求権仮登記の抹消登記手続)
譲渡担保と同時履行の抗弁権
所有する機械に譲渡担保権を設定して現実の引渡しをした債務者は、債務の弁済と目的物の返還との同時履行を主張することができない(最判平6.9.8)。
平成6年9月8日最高裁第一小法廷集民173号21頁(株式返還)
譲渡担保の被担保債権の範囲
譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲は、強行法規や公序良俗に反しない限り、設定契約の当事者間において元本、利息及び遅延損害金について自由に定めることができる。
昭和61年7月15日最高裁第三小法廷集民148号307頁(土地建物所有権移転登記抹消登記手続、所有権移転登記請求本訴、同反訴)
譲渡担保権者による抵当権消滅請求
抵当不動産の譲渡担保権者は、担保権を実行し清算手続を完了して確定的に所有権を取得する前は、抵当権消滅請求をすることができない。
平成7年11月10日最高裁第二小法廷民集49巻9号2953頁(根抵当権設定登記抹消登記手続)
集合物譲渡担保と一物一権主義
集合物譲渡担保のように、複数の物の上に一つの物権の効力が及ぶことがある。
昭和54年2月15日最高裁第一小法廷民集33巻1号51頁(物件引渡)
譲渡担保の法的性質
不動産を目的とする譲渡担保において、債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には、債権者(譲渡担保権者)は、譲渡担保契約が帰属清算型であると処分清算型であるとを問わず、目的不動産を処分する権能を取得する。
平成6年2月22日最高裁第三小法廷民集48巻2号414頁(家屋明渡)
集合動産譲渡担保と処分権限
構成部分が変動する集合動産を目的とする譲渡担保においては、設定者に目的動産の処分権限が付与されている場合、通常の営業の範囲内で処分された動産については、譲渡担保の効力は及ばない。
平成18年7月20日最高裁第一小法廷民集60巻6号2499頁(所有権確認請求事件)
不動産譲渡担保と清算義務
不動産を目的とする譲渡担保において、債務者が債務の履行を遅滞し、譲渡担保権者が目的不動産を第三者に売却等して換価処分した結果、その売却代金等が被担保債権の額(換価に要した相当費用額を含む)を上回って剰余が生じるときは、譲渡担保権者は、その剰余を清算金として債務者(設定者)に支払う義務を負う。
昭和62年2月12日最高裁第一小法廷民集41巻1号67頁(所有権移転請求権仮登記の抹消登記手続)
弁済期前の譲渡担保権者の処分権能
不動産を目的とする譲渡担保において、被担保債権の弁済期前は、譲渡担保権者は、債権担保の目的を達するのに必要な範囲内で目的不動産の所有権を有するにすぎず、目的不動産を処分する権能を有しない。
平成18年10月20日最高裁第二小法廷民集60巻8号3098頁(第三者異議事件)
弁済期後の差押えと受戻権の行使
不動産を目的とする譲渡担保において、被担保債権の弁済期後に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえ、その旨の登記がされたときは、設定者は、差押登記後に債務の全額を弁済しても、第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることはできない。
平成18年10月20日最高裁第二小法廷民集60巻8号3098頁(第三者異議事件)
譲渡担保清算金による第三譲受人への留置
不動産を目的とする譲渡担保権が設定されている場合において、譲渡担保権者が実行として目的不動産を第三者に譲渡したときは、譲渡担保権設定者は、その第三者からの明渡請求に対し、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる。
平成11年2月26日最高裁第二小法廷集民191号457頁(家屋明渡)
譲渡担保設定者の返還請求権
動産譲渡担保の設定者は、特段の事情がない限り、正当な権原なくその動産を占有する第三者に対して、その動産の返還を請求することができる。
昭和57年9月28日最高裁第三小法廷集民137号255頁(建物収去土地明渡)