条文・判例・学説を体系的に整理
自衛隊機運航差止訴訟と法定差止め
自衛隊機の運航の差止めを求める訴えは、防衛大臣が自衛隊機の運航を行う権限の行使(公権力の行使)の差止めを求めるものとして、行政事件訴訟法3条7項の差止めの訴えとして適法に提起することができる。
平成28年12月8日最高裁第一小法廷民集70巻8号1833頁(各航空機運航差止等請求事件)
公的義務不存在の無名抗告訴訟の要件
将来の不利益処分の予防を目的として当該処分の前提となる公的義務の不存在の確認を求める無名抗告訴訟は、法定抗告訴訟である差止めの訴えとの関係で事前救済の争訟方法としての補充性の要件を欠くときは、不適法であり、差止めの訴えの訴訟要件である「行政庁によって一定の処分がされる蓋然性があること」を満たさない場合にも、不適法となる。
平成24年2月9日最高裁第一小法廷民集66巻2号183頁(国歌斉唱義務不存在確認等請求事件)
申請型義務付け訴訟の重大な損害の要否
行政事件訴訟法3条6項2号の義務付けの訴え(申請型義務付けの訴え)は、法令に基づく申請に対し相当の期間内に処分がされないこと、又は申請を却下・棄却する処分が取り消されるべきものであること等の要件に該当するときに提起することができ、重大な損害を生ずるおそれは要件とされていない。
使用不許可の仮の義務付けと本案併合
使用不許可処分に対し、仮の義務付けを申し立てるには、義務付けの訴え(申請型であり、取消訴訟又は無効等確認の訴えに併合して提起)を本案として提起する必要があり、取消訴訟のみを本案訴訟として仮の義務付けを申し立てることはできない。
仮の義務付けの償えない損害の要件
仮の義務付けは、義務付けの訴えに係る処分がされないことにより生ずる「償うことのできない損害」を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときに、することができ、義務付けの訴えの提起の要件である「重大な損害」(37条の2第1項)とは異なる。
仮の義務付け決定と処分の効力の関係
仮の義務付けの決定は、裁判所が行政庁に対し仮に処分をすべき旨を命ずるものであり、決定によって、処分を受けた(許可があった)ことになるのではなく、行政庁が決定に従って処分をする義務を負うにとどまる。
仮の義務付け決定前の意見聴取
仮の義務付けの決定は、口頭弁論を経ないですることができるが、あらかじめ当事者の意見をきかなければならず(25条6項の準用)、特に緊急を要する場合であっても、行政事件訴訟法上、意見を聴かずに決定することができる旨の例外は定められていない。
差止訴訟による即時強制の事前救済
違法な即時強制がなされるおそれがある場合の事前の救済手段としては、抗告訴訟による差止めの訴えとして即時強制が行われる前に差止めの訴えを提起することができる。
非申請型義務付け訴訟の要件
非申請型義務付け訴訟は、行政庁が一定の処分をすべきであるにもかかわらずこれがされない場合に提起するものであり、第三者に対する規制権限の行使を求める場合のみならず、自己に対する処分の義務付けを求めて提起することも可能である(行政事件訴訟法37条の2)。
申請型義務付け訴訟と申請拒否処分
申請型義務付け訴訟は、申請拒否処分がされた場合だけでなく、申請に対する応答がない不作為の場合にも提起することができ、不作為の場合は不作為の違法確認訴訟と併合して提起しなければならない。
申請型義務付け訴訟の訴訟要件
申請型義務付け訴訟(行政事件訴訟法37条の3)の訴訟要件として、重大な損害を生ずるおそれや他に適当な方法がないことは要求されておらず、これらは非申請型(直接型)義務付け訴訟(同法37条の2)の要件である。
申請型義務付け訴訟の原告適格
申請拒否処分がなされた場合の申請型義務付け訴訟は、当該申請をした者のみが提起することができ、申請者以外の者は「法律上の利益を有する者」であっても提起することができない。
申請型義務付けと取消訴訟の併合提起
申請拒否処分がなされた場合の申請型義務付け訴訟は、申請拒否処分が無効である場合であっても、当該処分の無効等確認訴訟と併合して提起しなければならず、義務付け訴訟を単独で提起することはできない。
公的義務不存在確認の訴えの適法性
職務命令の違反を理由とする懲戒処分の予防を目的として当該職務命令に基づく公的義務の不存在の確認を求める訴えは、無名抗告訴訟として位置付けられ、法定抗告訴訟である差止めの訴えとの関係で補充性の要件を欠き不適法であり、公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法4条)として適法となり得るのは、行政処分以外の処遇上の不利益の予防を目的とする場合である。
平成24年2月9日最高裁第一小法廷民集66巻2号183頁(国歌斉唱義務不存在確認等請求事件)
申請型義務付けと取消訴訟棄却の帰結
法令に基づく許可の申請を却下した処分の取消しを求める訴えとその許可の義務付けを求める訴えが併合提起されている場合において、前者の処分の取消しの訴えにつき請求が棄却されるときは、当該処分が取り消されるべきものであるという行政事件訴訟法37条の3第1項2号の要件を欠くから、後者の義務付けの訴えは不適法として却下される。
差止めの訴えの重大な損害要件
差止めの訴えの訴訟要件である「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けること等により容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要するが、救済を受けることが不可能なものである場合に限られるものではない。
平成24年2月9日最高裁第一小法廷民集66巻2号183頁(国歌斉唱義務不存在確認等請求事件)
差止めの訴えの補充性要件
差止めの訴えについて、他のより適切な訴訟類型の訴えを適法に提起できるときは、その訴えに係る請求が棄却されるべき場合であっても、「その損害を避けるため他に適当な方法があるとき」に当たり、差止めの訴えは不適法となる。
差止訴訟の訴訟要件
差止めの訴えの訴訟要件として、行政庁によって一定の処分がされる蓋然性があることが、救済の必要性を基礎付ける前提として必要となる。
平成24年2月9日最高裁第一小法廷民集66巻2号183頁(国歌斉唱義務不存在確認等請求事件)
差止判決の本案要件
裁判所は、差止訴訟において、行政庁がその処分をすべきでないことがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ、又は行政庁がその処分をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、差止判決をすることができる。
義務付け判決と第三者効
行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずる判決には取消判決の第三者効の規定が準用されていないから、その判決に従ってされた処分の名宛人は、当該処分の取消訴訟を提起してその効力を争うことができる。