条文・判例・学説を体系的に整理
公財産の濫費防止説と公の支配の解釈
憲法89条後段の趣旨を公財産の濫費を防ぐことにあると考える立場(濫費防止説)からは、慈善・教育・博愛の事業への公的援助は一般に公の利益に沿うものであることを前提に、「公の支配」に属することの意味を緩やかかつ広義に解することになる。
私的事業への公権力支配防止説と助成
憲法89条後段の趣旨を、私的な事業への不当な公権力の支配が及ぶことを防止するところにあるとする立場(自主性確保説)は、「公の支配」に属することの意味を厳格かつ狭義に解し、団体の自主性が失われる程度の監督権を要求する。
厳格かつ狭義の「公の支配」と私学助成
「公の支配」に属することの意味を厳格かつ狭義に解する立場からは、監督官庁が私立学校の自主性が失われる程度に達する人事・予算上の権限を有していないことから、私学助成には違憲の疑いがあることとなる。
国政調査と係属中の刑事事件
議院が係属中の刑事事件において審理されている事実と同一の事実について調査することは、その調査の方法や目的を問わず司法権の独立を侵すものであって許されないわけではなく、調査の方法や目的によっては許容される場合がある。
国政調査権と知る権利
国政調査権の法的性質を議院の憲法上の権能を実効的に行使するための補助的権能であると捉える立場からしても、国政調査権が国民の知る権利に仕える機能を有すると理解することはできる。
労働組合の統制権と立候補の自由
労働組合は団結権が保障されており組合の団結を維持するための統制権の行使として公職選挙における組合員の立候補の自由を制約することができるが、公職選挙において統一候補を擁立した場合に当該候補以外の組合員が立候補をやめなかったことを理由にその組合員を処分することまではできない。
昭和43年12月4日最高裁大法廷刑集22巻13号1425頁(公職選挙法違反)
連座制と被選挙権の制限
組織的選挙運動管理者等が買収等所定の選挙犯罪を犯して拘禁刑に処せられた場合に公職の候補者等であった者の当選を無効とし5年間当該選挙に立候補することを禁止する連座制の規定は、民主主義の根幹をなす公職選挙の公正を保持するための合理的な規定であり、憲法15条に違反しない。
平成9年3月13日最高裁第一小法廷民集51巻3号1453頁(当選無効及び立候補禁止)
無効投票の投票先の調査と投票の秘密
選挙権のない者又は代理投票をした者の投票についても、その投票が何人に対してなされたかは、議員の当選の効力を定める手続において、取り調べてはならない。
昭和23年6月1日最高裁第三小法廷民集2巻7号125頁(村会議員当選無効決定取消)
会社の政治献金と政党の役割
政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、かつ国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるから、その健全な発展に協力することは会社にとって当然の行為として期待されるという考え方は、政治資金規正法が会社による政党及び政治資金団体への政治活動に関する寄附を一定の限度で認めていることの根拠となる。
昭和45年6月24日最高裁大法廷民集24巻6号625頁(取締役の責任追及請求)
国会議員の免責特権と国の賠償責任
国会議員には憲法51条で発言及び表決についての免責特権が保障されているが、免責特権は議員個人の民事上・刑事上の責任を免除するものであり、国会議員が国会での質疑等において個人の名誉を毀損する発言をした場合に国が国家賠償法上の賠償責任を負う可能性までを排除するものではない。
平成9年9月9日最高裁第三小法廷民集51巻8号3850頁(損害賠償)
国政調査権と刑罰
憲法62条において議院は国政調査に関して証人の出頭、証言及び記録の提出を要求することができるとされているところ、その実効性を担保するため法律は証人が正当な理由なく出頭を拒否した場合や偽証した場合に刑罰を科す旨を定めている。
予算と法律の不一致への対処
予算の裏付けを必要とする法律が成立しているにもかかわらずその執行に必要となる予算が不存在ないし不成立の場合、法律を誠実に執行すべき内閣としては、補正予算の提出、経費の流用、予備費の支出などにより対処することが求められる。
予備費の支出と国会の承諾
予備費は予見し難い予算の不足に充てるため国会の議決に基づいて設けられ内閣の責任で支出されるものであるが、その支出については事後に国会の承諾を求める必要がある。
決算の審査と効力
内閣は毎年の国の収入支出の決算について会計検査院の検査を経た上で翌年度国会に提出しなければならず、提出された決算については各議院で審査されるが、不承認とされても決算の効力に影響は生じない。
政党助成法と政党の活動の自由
国が政党に対し政党交付金による助成を行うことを定めた政党助成法は、政党の政治活動の自由を尊重し、政党交付金の交付に当たっては条件を付し又はその使途について制限してはならないとしており、この規定は、政党の結社としての活動の自由が制約されることはやむを得ないとする考え方を根拠とするものではない。
衆議院比例代表選挙の政党要件
公職選挙法が衆議院比例代表選出議員の選挙で一定の要件を満たす政党等に限り名簿届出を認めていることについて、政党の規模による選挙参加機会の不均等は信条又は社会的身分による差別に当たる疑いがあるとする考え方は、その根拠とはならない。
議員身分と政党除名
小選挙区選出の衆議院議員について、政党の方針に反したことを理由として除名された場合に議員の身分を当然喪失するとの制度を設けることは、憲法に違反すると解される。
政党国家現象
政党国家とは、政党が国の政治的意思形成過程に重要な役割を果たすようになった現象をいうが、そのような現象は、政党が広く国民と議会を媒介する組織として発達した段階に生じた。
小選挙区制の二大政党化と死票
小選挙区制の下では、二大政党化の傾向が生じ、いずれかの政党が議会の過半数を占めて政権が安定する可能性が高くなるが、死票が多くなり、少数者の意思が議会に反映されにくくなる。
比例代表制の死票の少なさと小党分立
比例代表制の下では、死票が比較的少なく、有権者の様々な意思が議会に反映されやすくなるが、一つの政党が議会の過半数を占めることが困難となり、小党分立を招き政権が不安定になるおそれがある。