条文・判例・学説を体系的に整理
放火罪と死体損壊罪の罪数
自己の犯行の罪証を隠滅する目的で、死体の所在する家屋に放火して死体とともに家屋を焼損させた場合には、放火罪と死体損壊罪が成立し、これらは一個の行為が二個の罪名に触れる場合として観念的競合となる。
傷害の手段としての監禁と罪数
傷害の手段として被害者を監禁した上、暴行を加えて傷害を負わせた場合でも、監禁と傷害とはその行為の性質からみて通常手段結果の関係にあるとは認められないから、監禁罪と傷害罪は刑法54条1項の牽連犯にはならず、併合罪となる。
昭和43年9月17日最高裁第三小法廷刑集22巻9号853頁(監禁、傷害)
常習賭博罪と包括一罪
常習として数回にわたり賭博行為をした場合には、包括して1個の常習賭博罪が成立する。
昭和26年4月10日最高裁第三小法廷刑集5巻5号825頁(常習賭博)
放火罪と保険金詐欺罪の罪数
火災保険金をだまし取る目的で自宅に放火した後、火災原因を偽って保険金の支払を受けた場合、現住建造物等放火罪と詐欺罪は手段結果の関係にはなく、牽連犯ではなく、併合罪となる。
盗品毀棄と不可罰的事後行為
他人の物を窃取した者が、その後に窃取した物を焼却して毀棄しても、窃盗罪に吸収される不可罰的事後行為であって、別に器物損壊罪は成立せず、窃盗罪のみが成立する。
併合罪加重の各罪長期合計の上限
併合罪のうち2個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、最も重い罪の刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とするが、各罪の刑の長期の合計を超えることはできないから(刑法47条)、10年以下の拘禁刑の罪と3年以下の拘禁刑の罪の併合罪では、拘禁刑15年を言い渡すことはできない(上限は13年)。
拘禁刑と罰金の併科
併合罪関係にある拘禁刑の罪と罰金の罪については、拘禁刑と罰金とを併科することができ(刑法48条1項)、拘禁刑2年及び罰金10万円の判決を言い渡すことができる。
宿泊と飲食の無銭利用と詐欺罪の罪数
代金を支払う意思も能力もないのに、あるように装って民宿に宿泊を申し込んで宿泊し、朝食の提供も受けた場合、1項詐欺(朝食)と2項詐欺(宿泊)は、一連の欺罔行為に基づくものとして包括して1個の詐欺罪が成立する。
共謀による別個の被害者殺害と罪数
共謀の上、各自が別の被害者1名ずつを殺害した場合には、共同正犯としての2個の殺人罪が成立し、これらは別個の行為によるものであるから併合罪となる。
同一機会の複数被害者への暴行と罪数
対立するグループのメンバー2名を、各別にバットで1回ずつ殴打して両名に傷害を負わせた場合、2個の傷害罪が成立し、これらは併合罪となる。
業務上過失傷害罪と殺人罪の罪数関係
業務上過失により被害者に傷害を負わせた直後に殺意を生じ、改めて殺害行為に及んで死亡させた場合、業務上過失傷害罪と殺人罪とが成立し、両罪は包括一罪ではなく併合罪となる。
昭和53年3月22日最高裁第一小法廷刑集32巻2号381頁(業務上過失傷害、殺人、死体遺棄)
凶器準備集合罪と暴行罪の併合罪
凶器準備集合罪と暴行罪は、それぞれ別個の法益を侵害するものであり、併合罪の関係に立つ。
昭和48年2月8日最高裁第一小法廷刑集27巻1号1頁(兇器準備集合、暴力行為等処罰に関する法律違反)
詐欺罪と強盗殺人罪の罪数関係
財物を詐取した上で当該財物の返還を免れるため被害者を殺害した場合、詐欺罪と強盗殺人罪が成立し、これらは包括一罪となる。
昭和61年11月18日最高裁第一小法廷刑集40巻7号523頁(強盗殺人未遂、恐喝未遂、殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反)
放火と詐欺の罪数関係
同居する家族が住居に使用している自宅は、家族の不在中でも現に人が住居に使用する建造物(現住建造物)に当たるから、火災保険金をだまし取る目的でこれに放火して焼失させ、その後保険金の支払を受けた場合には、現住建造物等放火罪と詐欺罪が成立し、両罪は併合罪となる。
併合罪の意義
併合罪とは、確定裁判を経ていない二個以上の罪が観念的競合または牽連犯の関係にない場合をいい(刑法45条前段)、火災保険金を詐取する目的で家族と同居する自宅に放火した後に保険金を詐取した場合の現住建造物等放火罪と詐欺罪は、手段・結果の関係になく併合罪となる。
窃盗教唆と盗品等保管罪の罪数
窃盗を教唆した者がその窃取された財物を保管した場合、窃盗教唆罪と盗品等保管罪はそれぞれ別個に成立し、両罪は牽連犯とはならず併合罪となる。
昭和24年7月30日最高裁第二小法廷刑集3巻8号1418頁(強盗、住居侵入、窃盗教唆、賍物牙保)
住居侵入と強盗致傷の牽連犯
強盗目的で住居に侵入し、複数の被害者に傷害を負わせて財物を強取した場合、住居侵入罪と被害者の数に応じた複数の強盗致傷罪が成立し、これらは牽連犯となる。
昭和29年5月27日最高裁第一小法廷刑集8巻5号741頁(殺人)
文書偽造と詐欺の牽連犯
他人名義で口座開設申込書を偽造し、これを行使して預金通帳の交付を受けた場合、有印私文書偽造罪、同行使罪及び詐欺罪が成立し、これらは牽連犯となる。
平成14年10月21日最高裁第二小法廷刑集56巻8号670頁(住居侵入,窃盗,有印私文書偽造,同行使,詐欺,建造物侵入被告事件)
牽連犯の意義
牽連犯とは、犯罪の手段または結果である行為が他の罪名に触れる場合をいい、科刑上一罪として処断され(刑法54条1項後段)、他人に成り済まして他人名義の口座開設申込書を偽造・行使し預金通帳の交付を受けた場合の有印私文書偽造罪・同行使罪・詐欺罪は牽連犯となる。
平成14年10月21日最高裁第二小法廷刑集56巻8号670頁(住居侵入,窃盗,有印私文書偽造,同行使,詐欺,建造物侵入被告事件)
強盗致傷罪と被害者の数
強盗の機会に複数の被害者に傷害を負わせた場合、被害者の数に応じて複数の強盗致傷罪が成立する。