条文・判例・学説を体系的に整理
助言による関与(教唆と幇助の区別)
助言によって他人の犯罪に関与した場合、その助言が犯行を決意させたときは教唆犯であり、既に犯行を決意している者に対しその決意を強固にしたときは幇助犯である。
幇助犯の従属性と正犯の実行の着手
幇助犯が成立するには、正犯者が実行に着手したことが必要であり(実行従属性)、幇助行為を終えていても正犯者が実行に着手しなければ幇助犯は成立しない。
教唆行為と正犯の実行行為の因果関係
他人に特定の住居への侵入窃盗を唆したが正犯がこれを断念し、その後の別の住居における侵入強盗が教唆と因果関係を欠く場合には、教唆者に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯は成立しない。
不作為による幇助の成否(成立し得る)
幇助犯は、作為だけでなく、不作為によっても成立し得る(不作為による幇助)。
幇助の意思(片面的幇助)
幇助犯の成立には、幇助者に正犯者の行為を認識してこれを幇助する意思があれば足り、正犯者が幇助者の幇助行為を認識している必要はない(片面的幇助)。
間接幇助(幇助の幇助)の成否
凶器を他人に提供し、その他人が正犯者に同凶器を更に提供して、正犯者が同凶器を用いて犯行に及んだ場合には、正犯者の犯行を間接的に幇助したものとして幇助犯が成立し得る(間接幇助)。
昭和44年7月17日最高裁第一小法廷刑集23巻8号1061頁(猥せつ図画公然陳列幇助)
必要的共犯と教唆・幇助
ある犯罪が成立するについて当然予想されその成立のために欠くことができない関与行為について正犯として処罰する規定がない場合、関与を受けた側の可罰的な行為の教唆又は幇助として処罰されることは当然ではない。
既に犯意を有する者への教唆と幇助
既に特定の犯罪の実行を確定的に決意している者に対してその実行を勧め、これによってその者の決意が強固になった場合、幇助犯は成立し得るが教唆犯は成立しない。
昭和26年12月6日最高裁第一小法廷刑集5巻13号2485頁(物価統制令違反、臨時物資需給調整法違反各教唆)
間接幇助の可罰性
犯行に必要な用具を第三者を介して正犯に提供した場合(間接幇助)であっても、幇助犯が成立しうる。
幇助の因果関係
幇助犯の成立には、幇助行為と正犯の実行行為との間に因果関係が必要であり、幇助行為が正犯の犯行を物理的または心理的に容易にしたことを要する。
平成25年4月15日最高裁第三小法廷刑集67巻4号437頁(危険運転致死傷幇助被告事件)
精神的幇助
正犯に対して犯行の意思を強化する助言や激励を行う行為は、精神的幇助として幇助犯に該当しうる。
平成25年4月15日最高裁第三小法廷刑集67巻4号437頁(危険運転致死傷幇助被告事件)
教唆犯と客体の錯誤
教唆者が被教唆者に特定の住居への侵入窃盗を教唆し、被教唆者がその住居と誤認して隣の別の住居に侵入して金品を窃取した場合、教唆者には実際に侵入した住居への住居侵入罪及び同住居の居住者に対する窃盗罪の教唆犯が成立する。
昭和25年7月11日最高裁第三小法廷刑集4巻7号1261頁(窃盗教唆、住居侵入教唆、強盗幇助等)
幇助犯と錯誤の処理
傷害行為を幇助する意思で包丁を貸与したところ、正犯者が殺意をもって被害者を刺殺した場合、幇助者には傷害致死罪の幇助犯が成立する。
昭和25年10月10日最高裁第三小法廷刑集4巻10号1965頁(傷害致死幇助、銃砲等所持禁止令違反)
幇助犯の故意
幇助犯の故意は、正犯の犯罪を幇助する認識と正犯が特定の犯罪を実行することの認識を要する。
平成25年4月15日最高裁第三小法廷刑集67巻4号437頁(危険運転致死傷幇助被告事件)
幇助犯の意義
幇助犯(刑法62条1項)は、正犯を幇助した者について成立し、正犯の実行行為を容易にする一切の行為がこれに当たる。
平成25年4月15日最高裁第三小法廷刑集67巻4号437頁(危険運転致死傷幇助被告事件)
黙って見張りをした場合と幇助の因果性
正犯者が空き巣に入ることを知り、正犯者に黙って見張りをしていたが、特に何も起きないまま空き巣が成功した場合、見張りは正犯者の犯行に物理的にも心理的にも影響を与えていないから、幇助犯は成立しない。
平成25年4月15日最高裁第三小法廷刑集67巻4号437頁(危険運転致死傷幇助被告事件)
依頼されて見張りをした場合と心理的因果性
空き巣に入ろうと決意していた正犯者から頼まれて見張りをしていた場合、特に何も起きないまま空き巣が成功したときでも、見張りの存在により正犯者が安心でき精神的に後押しされたという心理的因果性が認められ、幇助犯が成立する。
平成25年4月15日最高裁第三小法廷刑集67巻4号437頁(危険運転致死傷幇助被告事件)
合鍵の交付と幇助・教唆
空き巣に使うことができるものとして被害者方の合鍵を正犯者に渡したところ、無施錠であったため合鍵が使われずに空き巣が成功した場合も、合鍵の交付により正犯者が犯行を決意し又は精神的に後押しされたという心理的因果性が認められ、幇助犯が成立し、教唆犯が成立する余地もある。
平成25年4月15日最高裁第三小法廷刑集67巻4号437頁(危険運転致死傷幇助被告事件)
黙って施錠を外した場合と片面的幇助
正犯者が空き巣に入ろうとしていることを知りながら、正犯者に黙って被害者方玄関の施錠を外し、正犯者がそこから侵入して空き巣に成功した場合、正犯者に知られずになされた幇助(片面的幇助)であっても、判例は片面的幇助を肯定しており、幇助犯が成立する。
平成25年4月15日最高裁第三小法廷刑集67巻4号437頁(危険運転致死傷幇助被告事件)
店員の黙認と不作為による幇助
万引きをしようとしている者を目撃した店員が、その者と意思を通じることなく万引きを黙認し、万引きが成功した場合、店員の立場を考えれば、店員には不作為による幇助犯が成立する。
平成25年4月15日最高裁第三小法廷刑集67巻4号437頁(危険運転致死傷幇助被告事件)