条文・判例・学説を体系的に整理
明示的一部請求の全部認容の既判力
明示的一部請求で請求が全部認容された場合、訴求債権に関しては、請求した額の債権の存在について既判力が生ずる。
一部請求の相殺と自働債権の既判力範囲
明示的一部請求で相殺抗弁を判断した場合、自働債権の存否の判断に既判力が生じるのは請求部分に相殺をもって対抗した額の範囲であり、未請求残部に対応する相殺額には及ばず、一部請求が全部認容されたことだけで一律に決まるものではない。
平成6年11月22日最高裁第三小法廷民集48巻7号1355頁(損害賠償)
相殺自働債権の全額不存在判断と既判力
被告が相殺に供した自働債権について、裁判所がその一部の存在のみを認めて相殺により消滅させ、残部は存在しないと判断した場合には、相殺をもって対抗した額の全部について、自働債権の不存在(消滅又は不存在)の判断に既判力が生ずる。
贈与の書面によらない解除と既判力
贈与契約に基づく土地の引渡しを命ずる判決が確定した後、贈与者が請求異議の訴えで、当該贈与契約は書面によらないものであるとして解除する旨の意思表示をし、その効果を異議の事由として主張することは、基準時前に行使し得た形成権の行使であるから、前訴確定判決の既判力により遮断されて許されない。
昭和36年12月12日最高裁第三小法廷民集15巻11号2778頁(不動産所有権移転登記手続等請求)
基準時後の解除権の行使と既判力
売買契約が無効であるとして所有権に基づく絵画の引渡しを求める請求を棄却する判決が確定した後、原告が前訴判決の確定後も代金が支払われないことを理由に売買契約を解除する意思表示をして再び引渡しを求めた場合、解除の原因は前訴の基準時後に生じたものであるから、これを認めて請求を認容しても、前訴確定判決の既判力に反しない。
認知無効訴訟の確定判決の対世効
認知無効の訴えを含む人事訴訟の確定判決は、民事訴訟法115条1項の規定にかかわらず、第三者に対してもその効力を有するから、請求棄却判決の効力も推定相続人に及ぶ。
破産管財人の訴訟の判決と破産者の効力
破産管財人が破産財団に属する権利について破産者に代わって提起した訴訟の確定判決の効力は、破産者にも及ぶ。
弁論終結後の善意転得者と虚偽表示判決
通謀虚偽表示による登記の抹消を命ずる請求認容の確定判決が確定した後、事実審の口頭弁論終結後に善意の第三者が当該土地を取得した場合には、その第三者は、確定判決の存在によって左右されず、通謀虚偽表示の無効を善意の第三者として対抗されない地位を失わない。
昭和48年6月21日最高裁第一小法廷民集27巻6号712頁(所有権確認等請求)
弁論終結前の虚偽表示登記と判決の効力
口頭弁論終結前に被告から通謀虚偽表示に基づく贈与により登記を受けた者は、被告のために請求の目的物を所持する者(民訴法115条1項4号)に準じ、確定判決の効力が及ぶ。
登記抹消認容判決と後訴所有権確認
所有権に基づく建物の所有権保存登記抹消登記手続を求める前訴について請求を認容する判決が確定した後、被告が原告に対して当該建物の所有権確認を求める後訴を提起した場合に、前訴基準時前の相続による所有権取得を理由に請求を認容することは、前訴の確定判決の既判力に抵触しない。
所有権棄却後の持分権確認と既判力
取得時効による所有権取得を主張して提起した土地の所有権確認訴訟について請求棄却判決が確定した後、同一当事者間で共有持分権確認を求める訴えを提起した場合、後訴裁判所が前訴基準時前の相続を理由として後訴の請求を認容することは、前訴の確定判決の既判力に抵触し許されない。
平成9年3月14日最高裁第二小法廷集民182号553頁(遺産確認等請求本訴、共有持分権不存在中間確認請求反訴)
限定承認留保付判決と後訴の単純承認
限定承認の抗弁を容れ相続財産の限度で支払を命ずる判決(留保付判決)が確定した後、債権者が前訴の口頭弁論終結時以前に存在した法定単純承認の事実を主張して、無留保の判決を得るために新たに訴えを提起することは許されないが、これは前訴の判決の既判力そのものではなく、既判力に準ずる効力による。
昭和49年4月26日最高裁第二小法廷民集28巻3号503頁(否認権行使による損害賠償請求)
明渡請求棄却と所有権確認訴訟
所有権に基づく建物明渡請求訴訟で原告の所有権取得が認められず請求棄却判決が確定した後、同一の取得原因を主張して所有権確認訴訟を提起しても、前訴の既判力には反しない。
不当利得請求と訴訟物の同一性
売買契約の詐欺取消しを理由とする不当利得返還請求が棄却された後、同一売買契約について通謀虚偽表示による無効を理由とする不当利得返還請求訴訟を提起することは、前訴の既判力に反し許されない。
弁済認定と債務免除の主張
貸金返還請求訴訟で被告の金員支払が弁済に当たるとして請求棄却判決が確定した後、被告がその支払前に債務免除があったとして不当利得返還請求訴訟を提起することは、前訴の確定判決の既判力には反しない。
既判力の基準時後の事由
所有権確認請求認容判決確定後、前訴口頭弁論終結後に所有権を取得したとの主張は既判力に反しない。
基準時前の時効援用と既判力
貸金返還請求認容判決確定後、その訴訟の口頭弁論終結前に時効期間が経過していたとして消滅時効を援用し債務不存在確認を求めることは、前訴の既判力に反し許されない。
反訴と相殺の抗弁の両立
被告が反訴として特定債権に基づく金銭の支払を求める訴えを提起した場合であっても、被告が本訴に対し同一債権を自働債権とする相殺の抗弁を主張することは、判例上許される。
平成18年4月14日最高裁第二小法廷民集60巻4号1497頁(損害賠償等請求本訴,請負代金等請求反訴事件)
予備的相殺の抗弁
本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として、反訴において、当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権とし反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは、重複起訴を禁じた民事訴訟法142条の趣旨に反せず、許される。
平成27年12月14日最高裁第一小法廷民集69巻8号2295頁(不当利得返還請求本訴、貸金請求反訴事件)
離婚請求棄却判決の対世効
離婚請求棄却判決が確定した場合、この判決の効力は第三者にも及ぶ。