条文・判例・学説を体系的に整理
弁済者の充当指定と受領者の異議
弁済をする者が給付の時に弁済を充当すべき債務を指定したときは、弁済を受領する者が直ちに異議を述べても、その指定の効力は妨げられない。
同時弁済期・同利益の債務への法定充当
当事者が充当の順序を合意せず、双方が指定もしなかった場合に、いずれの債務も弁済期が同時で、弁済の利益も等しいときは、その給付は、各債務の額に応じて充当される。
元本・利息・費用がある債務の充当順序
同一の債権者に対する同種の数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合に、弁済者が全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、全ての債務の費用、利息、元本の順に充当され、弁済者の充当の指定は費用・利息・元本の各段階の内部でのみ働く。
弁済充当の合意と弁済者の指定の優劣
弁済者と弁済受領者との間に弁済の充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従い弁済が充当され、弁済者が合意と異なる指定をしても、合意に従って充当される。
債権者の受領不能と弁済供託
弁済者は、債権者が弁済を受領することができないときは、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。
交通事故の賠償債務の一部供託の効力
交通事故の加害者が、第一審判決が命じた損害賠償金の全額を弁済として提供し、受領拒絶を理由に供託した場合に、提供額が控訴審で損害賠償債務の全額に満たないことが判明したときでも、その供託は、債務の額に満たない範囲で有効である。
平成6年7月18日最高裁第二小法廷民集48巻5号1165頁(損害賠償請求事件)
供託受諾・有効判決確定前の取戻し
債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、債権者の同意がなくても、供託物を取り戻すことができ、この場合は供託をしなかったものとみなされる。
弁済供託の受諾・有効判決確定前の取戻し
債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は供託物を取り戻すことができ、この取戻しができないのは供託によって質権又は抵当権が消滅した場合に限られるから、供託によって保証債務が消滅した場合でも取り戻すことができる。
弁済による代位と求償権の取得
債務者のために弁済をした者は債権者に代位するが(499条)、代位による権利の行使は、代位者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内に限られるから、求償権を取得しない弁済者は、弁済による代位をすることはできない。
連帯債務者の弁済と原債権行使の範囲
連帯債務者の一人が弁済をしたときは、他の連帯債務者に対して有する求償権の範囲内で、弁済による代位により取得した連帯債務に係る債権を行使することができる。
合理的理由のある担保喪失と代位者免責
債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、代位権者は、担保の喪失・減少による免責を受けられない。
後順位抵当権者による先順位債権の弁済
後順位抵当権者は、弁済をするについて正当な利益を有する者として、先順位抵当権者の意思に反しても、先順位抵当権の被担保債権の弁済をすることができる。
機械払による無権限者への弁済
無権限者のした機械払の方法による預金の払戻しについても、民法478条の適用があり、払戻しをした銀行が善意かつ無過失であるときは、その払戻しは弁済として有効となる。
平成15年4月8日最高裁第三小法廷民集57巻4号337頁(預託金返還請求事件)
代物弁済契約後の本来の給付による弁済
債務者が債権者との間で、負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をしたときでも、他の給付がされるまでは債務は消滅しないから、債務者は当初負担した給付をして債務を消滅させることができる。
一部弁済と受取証書の交付請求
弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができ、一部弁済の場合も、その弁済の限度で受取証書の交付を請求することができる。
債権者不確知と供託
弁済者は債権者を確知することができず、かつそれについて過失がないときは、弁済の目的物を供託することができる。
供託の通知義務
弁済者は債権者のために弁済の目的物を供託したときは、遅滞なく債権者に供託の通知をしなければならない。
供託物の取戻し
弁済者は弁済の目的物を適法に供託した場合であっても、供託物を取り戻すことができる場合がある。
供託物の競売と裁判所の許可
債権者が弁済の目的物の受領を拒んだ場合において、その物の保存について過分の費用を要するときは、弁済者は裁判所の許可を得てその物を競売に付し、その代金を供託することができる。
預金口座払込みの弁済効力の発生時期
債務者が債権者との合意により債権者の預金口座への振込みによって債務を弁済した場合、その債務は、債権者が銀行に対して払戻しを請求する権利を取得した時に消滅する(民法477条)。