条文・判例・学説を体系的に整理
詐害行為取消権の債務者無資力の時期
詐害行為取消権を行使するためには、詐害行為時のみならず、詐害行為取消請求に係る訴訟の口頭弁論終結時のいずれにおいても債務者が無資力であることが必要である。
相当対価の財産処分と詐害行為取消要件
債務者が相当な対価を取得して財産を処分する行為をした場合には、その行為が、不動産の金銭への換価その他の財産の種類の変更により、債務者において隠匿等の処分をするおそれを現に生じさせるものであること、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたこと、受益者がそれを知っていたことの全てに該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。
転得者に対する詐害行為取消請求の要件
転得者が他の転得者から転得した者である場合に、その転得者に対して詐害行為取消請求をするには、その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたことを要する。
詐害行為取消しの転得者認容判決の効力
転得者に対する詐害行為取消請求を認容する確定判決の効力は、債務者及びその全ての債権者に及ぶが、受益者には及ばない。
債務消滅行為の取消しと受益者債権回復
債務者がした債務の消滅に関する行為(弁済)が詐害行為として取り消された場合、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときに、受益者の債務者に対する債権は原状に復する。
転得者に対する取消しと転得者の権利
債務者がした財産の処分行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、転得者は、その前者から財産を取得するためにした反対給付の価額を限度として、受益者が債務者に対して有すべき反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権を行使することができる。
不執行合意と詐害行為取消請求
債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは詐害行為取消請求をすることができず、強制執行をしない旨の合意がある債権は、これに当たる。
支払不能時の弁済と詐害行為の通謀要件
既存債務の弁済に対する詐害行為取消請求は、原則として支払不能時の行為で債務者・受益者の通謀害意がある場合に限られるが、行為又はその時期が義務に属せず支払不能前30日以内に通謀害意でされた場合には特則により請求できる。
過大な代物弁済の詐害行為取消しの範囲
債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、424条の要件に該当するときは、債権者は、消滅した債務の額に相当する部分以外の部分について、詐害行為取消請求をすることができる。
受益者の価額償還と転得者の財産返還
債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、受益者が財産の返還をすることが困難であるときは、価額の償還を請求することができ、転得者に対する財産返還請求ができる場合であっても、受益者に対する価額償還請求が妨げられるわけではない。
転得者がいる場合の受益者取消し
受益者が目的物を転得者に転売した場合であっても、受益者が行為の時に債権者を害することを知っていたときは、転得者の善意・悪意にかかわらず、債権者は受益者に対して債務者・受益者間の行為の取消しを請求することができ、受益者が財産の返還をすることが困難であるときは価額の償還を請求することができる。
転得者に対する詐害行為取消請求の範囲
受益者が悪意の転得者に目的物を売却し引き渡した場合、債権者が転得者に対して請求できるのは債務者がした行為の取消しであり、受益者と転得者の間の売買の取消しを請求することはできない(民法424条の5・424条の6第2項)。
転得者からの転売と詐害行為取消
受益者が悪意の転得者に目的物を売却し引き渡した後でも、債権者は、受益者に対し、債務者がした行為の取消しを請求することができる。
詐害行為取消判決確定後の転得者の権利
詐害行為取消請求を認容する判決により財産を返還した転得者が、受益者に支払った代金の返還を直接受益者に請求できる旨の規定は民法上存在せず、転得者は、民法425条の4により、受益者が債務者に対して有していたであろう反対給付の返還請求権等を限度とする権利を行使できるにとどまる。
虚偽表示と詐害行為取消権
贈与が虚偽表示に該当することを知らない転得者との関係においても、当該贈与を詐害行為取消権の対象とすることができる。
昭和6年9月16日大審院民集10巻806頁
無償行為の贈与と詐害行為
不動産の買主(特定物の引渡請求権を有する債権者)は、売主がその不動産を第三者に贈与し、それによって売主が無資力となったときは、当該贈与を詐害行為取消権の対象とすることができる。
昭和36年7月19日最高裁大法廷民集15巻7号1875頁(詐害行為取消請求)
確定日付ある債権譲渡通知と詐害行為取消権
債務者が自己の第三者に対する債権を譲渡した場合において、その譲渡行為自体が詐害行為を構成しないときは、債務者がこれについてした確定日付のある債権譲渡の通知のみを切り離して詐害行為取消権行使の対象とすることはできない。
平成10年6月12日最高裁第二小法廷民集52巻4号1121頁(供託金還付請求権確認請求本訴、詐害行為取消請求反訴)
詐害行為取消訴訟の被告と訴訟告知
詐害行為取消請求に係る訴えは、受益者又は転得者を被告とし、債務者を被告とすることを要しないが、債権者は、訴えを提起したときは遅滞なく債務者に対し訴訟告知をしなければならない。
明治44年3月24日大審院連合部民録17巻117頁(詐害行為取消訴訟の被告適格)
詐害行為時の無資力と資力回復の立証責任
詐害行為取消権を行使する債権者は、詐害行為の当時に債務者が無資力であったことを主張立証すれば足り、事実審の口頭弁論終結時までに債務者の資力が回復したことは受益者において主張立証しなければならない。
詐害行為取消訴訟における請求の趣旨
詐害行為取消権の行使においては、取消しの対象となる法律行為の取消しのみを請求することも、これと併せて逸出財産の返還や登記の抹消を請求することも許される。