条文・判例・学説を体系的に整理
原始的不能と損害賠償
契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、その履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。
受領遅滞中の履行不能の帰責事由
債権者が債務の履行を受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる。
金銭債務の不履行と過失相殺
金銭債務の不履行による損害の発生に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める(過失相殺、民法418条)。
約定利率が法定利率を超える遅延損害金
金銭債務の不履行による損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定めるが、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
金銭債務不履行と不可抗力の抗弁
金銭の給付を目的とする債務の不履行による損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができず、過失なく真の債権者を確知できなかったときであっても、責任を免れない。
履行遅滞中の履行不能と填補賠償
債務者が履行遅滞の責任を負っている間に、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務の履行が不能となったときは、その履行不能は債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされ、債権者は債務の履行に代わる損害賠償を請求することができる。
契約締結前の説明義務と債務不履行責任
契約の一方当事者が、契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、契約を締結するか否かの判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはない。
平成23年4月22日最高裁第二小法廷民集65巻3号1405頁(損害賠償請求事件)
履行不能後の目的物の騰貴と賠償額
債務者が不法に処分して債務を履行不能とした際、目的物の価格が騰貴しつつあるという特別の事情を知っていたか知り得たときは、債権者は、その目的物が現在なお騰貴している場合、現在において債権者がこれを他に処分するであろうと予想されたことを要せず、騰貴した現在の時価による損害賠償を請求することができる。
昭和37年11月16日最高裁第二小法廷民集16巻11号2280頁(抵当権設定登記抹消等請求)
免責条項と故意による不履行
債務者は、一切損害賠償責任を負わない旨の免責条項がある場合でも、債務者が故意に債務を履行しなかったときには、当該免責条項による免責が認められない。
平成15年2月28日最高裁第二小法廷集民209号143頁(損害賠償請求事件)
受領遅滞と増加履行費用の負担
債務者が債務の履行を提供したが債権者が受領を拒み又は受領できなかった場合、それによって増加した履行の費用は債権者が負担する(民法413条2項)。
特別損害と予見可能性
特別の事情によって生じた損害については、当事者がその事情を現に予見していた場合だけでなく、予見すべきであったときも含めて、債権者はその賠償を請求することができる(民法416条2項)。
債権者の過失と過失相殺
債務不履行に関して債権者に過失があった場合には、裁判所はこれを考慮して損害賠償の責任自体を否定することができる。
違約金と損害賠償額の予定の推定
違約金を定める条項は、損害賠償額の予定と推定される(民法420条3項)。
損害賠償による代位
債権者が損害賠償として債権の目的である物の価額の全部の支払を受けた場合、債務者は別段の意思表示なくしてその物に関する権利について当然に債権者に代位する(民法422条)。
定型約款と損害賠償予定条項
定型約款中に損害賠償の額を予定する条項があって、定型約款準備者の相手方が定型取引合意前に定型約款の内容を示すよう請求したにもかかわらず、定型約款準備者が正当な事由なくこれに応じないまま定型取引合意がされたときは、当該条項は合意されたものとはみなされない。
中間利息控除と法定利率
将来において負担すべき費用についての損害賠償額を定める場合、その費用を負担すべき時までの中間利息を法定利率により控除することができる(民法417条の2第2項)。
貸金返還遅滞と超過損害の立証
債務者が貸金返還債務の履行を遅滞した場合、債権者は法定利率又は約定利率により算定された額を超える損害が生じたことを証明しても、当該損害の賠償を請求することができない。
消費貸借遅延損害金の利率
金銭消費貸借契約の利息について法定利率を超える約定利率の定めがある場合、返済を遅滞した借主は、法定利率ではなく約定利率の割合による遅延損害金を支払わなければならない(民法419条1項ただし書)。
安全配慮義務違反と履行遅滞の時期
安全配慮義務の違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であるから、損害の発生時ではなく債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
昭和55年12月18日最高裁第一小法廷民集34巻7号888頁(損害賠償)
修繕義務違反と損害軽減義務
賃貸人の修繕義務違反により賃借人が営業をすることができなかった場合、営業利益の喪失は通常生ずべき損害として賠償の対象となるが、賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができた時期以降に生じた損害については、その全てを賠償請求することはできない。
平成21年1月19日最高裁第二小法廷民集63巻1号97頁(修繕義務違反と損害軽減義務)