条文・判例・学説を体系的に整理
即時取得が成立した場合の不当利得返還請求
買主が動産について即時取得により所有権を取得したときは、元の所有者は、その買主に対し、不当利得を理由として動産の返還を請求することができない。
質権の即時取得
動産質権の設定を受けた者が、設定者を所有者と過失なく信じて現実の引渡しを受けたときは、民法192条により質権を即時に取得する(即時取得は所有権に限らず、動産について行使する権利に及ぶ)。
遺産分割による動産取得と即時取得
相続人間の遺産分割協議による動産の取得は取引行為による占有の取得ではないから、動産が相続財産に含まれると過失なく信じて占有を始めた相続人も、民法192条による即時取得をしない。
盗品の回復請求(盗難から2年間)
占有物が盗品であるときは、被害者は、盗難の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができるから、盗難から2年間が経過していなければ、占有者が善意無過失で現実の引渡しを受けた場合でも、被害者は回復を請求することができる。
動産の取得時効(善意無過失・10年)
動産の占有を開始した時に善意無過失であり、10年間、所有の意思をもって平穏かつ公然と占有した者は、その動産の所有権を時効により取得する(民法162条2項)。
遺失物の回復請求と受寄者
受寄者として動産を保管している者が遺失した場合でも、受寄者は占有者として、拾得者から善意無過失で動産を買い受けて占有を始めた者に対し、遺失の時から2年間、民法193条に基づきその物の回復を請求することができる。
拾得物の占有侵奪と占有回収の訴え
占有回収の訴えは占有を奪われた場合の救済であり、遺失物の拾得は、占有者の意思に基づかず、かつ奪取によらない占有喪失後の他人による占有取得であって占有侵奪には当たらないため、遺失者は拾得者に対して占有回収の訴えにより返還を請求することはできない。
遺失物の拾得者の所有権取得
遺失物法に従い公告がされた後、法定の期間内に所有者が判明しなかったときは、拾得者は、所有の意思をもって拾得したかどうかにかかわらず、その遺失物の所有権を取得する。
消費貸借による動産取得と即時取得
他人から預かっている動産を自己の所有物であると偽って消費貸借の目的として貸し、現実の引渡しをした場合でも、借主が貸主を所有者と過失なく信じたときは、借主は動産の所有権を即時取得する。
無権代理人からの動産の取得と即時取得
無権代理人から動産を買い受けた相手方が、本人が所有者であることを知りながら代理権があると信じて引渡しを受けても、即時取得は成立せず、表見代理の成否の問題となる。
売買取消しと買主の即時取得
売主が錯誤を理由に売買契約を取り消した場合、買主は、引渡しを受けた時に売主の意思表示に錯誤がないと過失なく信じていたとしても、即時取得によって動産の所有権を取得することはない。
相続による占有の承継と即時取得
被相続人が他人から預かっていた物の占有を相続人が承継して始めたときは、相続人が被相続人を所有者と過失なく信じていたとしても、相続は取引行為に当たらないため、民法192条の即時取得は成立しない。
間接占有者の占有回収の訴え
賃貸して引き渡した物を第三者に窃取された場合、賃貸人(間接占有者)も、占有回収の訴えにより、窃取者に対して返還を求めることができる。
詐取物の窃取と詐取者の占有回収請求
動産を詐取した者が、その占有を第三者に窃取されたときは、詐取者は、占有者として、窃取者に対し、占有回収の訴えにより返還を求めることができる。
留置物の窃取と留置権者の占有回収請求
留置権者は、占有者として、その占有を窃取した者に対し、占有回収の訴えによって目的物の返還を求めることができる。
占有回収の訴えと本権の訴えの併存
占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また本権の訴えは占有の訴えを妨げないから、所有者が占有を窃取された場合には、所有権に基づく返還請求と占有回収の訴えによる返還請求とを同時にすることができる。
占有改定による占有の取得
自己が占有する動産を他者に売却し、当該動産を以後買主のために占有する旨の意思を表示したときは、買主は当該動産の占有権を取得する(占有改定)。
賃借人による所有権取得と自主占有
ある動産をその所有者から賃借して占有していた者が、所有者との間で所有者から当該動産を買い受ける旨の合意をしたときは、占有者の占有は自主占有となる(民法185条)。
他主占有者の占有物損傷と全部賠償
所有の意思のない占有者(賃借人等の他主占有者)は、占有物がその責めに帰すべき事由によって損傷したときは、賃貸人が所有者であると過失なく信じていた善意の占有者であっても、回復者(所有者)に対してその損害の全部を賠償しなければならない(民法191条ただし書)。
悪意占有者の必要費償還
占有者は悪意であっても、占有物について支出した必要費を回復者に償還させることができる(民法196条1項本文)。