条文・判例・学説を体系的に整理
担保権実行の取下げと時効更新
担保権の実行としての競売等の申立てが取り下げられたときは、その事由が終了した時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しない(完成猶予)が、時効は更新されない。
権利協議の合意による時効完成猶予方式
権利についての協議を行う旨の合意は、書面でされたとき(その内容を記録した電磁的記録によってされたときは書面でされたものとみなす)に限り、時効の完成猶予の効力を生ずる。
事前求償権の仮差押えと事後求償権時効
保証人の主たる債務者に対する事前求償権を被保全債権とする仮差押えは、事後求償権の消滅時効についても、時効の完成猶予(民法149条1号)の効力を有する。
平成27年2月17日最高裁第三小法廷民集69巻1号1頁(求償金等請求事件)
代理人への支払猶予申入れと時効更新
時効期間が経過する前に、債務者が債権者の代理人に対し支払猶予の申入れをしたときは、権利の承認として時効が更新され、その時から新たにその進行を始める。
夫婦間の権利の時効完成猶予
夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
国外にいる期間と時効の進行
債権者が国外にいる期間であっても、民法は消滅時効の進行を停止する旨の規定を置いておらず、時効の進行は停止しない。
指定なき一部弁済と各元本債務の承認
同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合において、借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく全債務を完済するのに足りない額の弁済をしたときは、当該弁済は、特段の事情のない限り、各元本債務の承認として消滅時効を更新する効力を有する。
令和2年12月15日最高裁第三小法廷民集74巻9号2259頁(貸金返還請求事件)
再売買の予約完結権の消滅時効の起算点
再売買の予約完結権の消滅時効は、予約完結権の行使につき始期を定め又は停止条件を付したときを除き、予約完結権が成立した時(予約完結権を行使することができる時)から進行する。
品質不適合の賠償請求権の時効起算点
特定物売買の目的物の品質が契約の内容に適合しないことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効の客観的起算点は、目的物の引渡しを受けた時であり、売買契約の締結時ではない。
平成13年11月27日最高裁第三小法廷民集55巻6号1311頁(損害賠償請求事件)
定期金債権の消滅時効の客観的起算点
定期金の債権は、各債権を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する(民法168条1項2号)。
後見人に対する権利の時効完成猶予
成年被後見人がその財産を管理する後見人に対して権利を有するときは、成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は時効は完成しない。
時効の利益の放棄と債務者の意思表示
時効の利益の放棄は債務者の意思表示のみにより効力を生じ、債権者の同意を要しない。
裁判上の請求と訴えの取下げ
裁判上の請求がされ、その後その請求に係る訴訟が訴えの取下げによって終了したときは、その終了の時から6か月を経過するまでの間は時効は完成しない。
催告中の再度の催告と時効完成猶予
催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、時効の完成猶予の効力を有しない。
取消権の消滅時効
詐欺を理由とする取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅し、行為の時から20年を経過したときも同様である。
詐欺を理由とする取消権の行使期間
詐欺を理由とする取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しない場合、時効によって消滅するのであり、行為の時から5年ではない。
時効の完成猶予と承継人
時効の完成猶予の効力は、その事由が生じた当事者のみならず、その承継人に対しても生じる(民法153条)。
債務不履行賠償の消滅時効
債務不履行に基づく損害賠償請求権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
定期金債権の消滅時効
定期金の債権は、債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき、時効によって消滅する。
確定判決と時効期間
10年より短い時効期間の定めのある権利が確定判決によって確定した場合、その時効期間は、短い時効期間の定めによるのではなく、10年となる。