条文・判例・学説を体系的に整理
虚偽表示の無効と第三者の善意
相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は、第三者がその表示の目的につき法律上の利害関係を有するに至った時に善意であれば、その後悪意になったとしても、その第三者に対抗することができない。
昭和55年9月11日最高裁第一小法廷民集34巻5号683頁(土地建物所有権移転登記抹消登記手続)
代理人の通謀虚偽表示と相手方の主張
代理人が相手方と通謀して売買契約の締結を仮装した場合、相手方は本人がその通謀虚偽表示を知っていたか否かにかかわらず当該売買契約の無効を主張することができる。
売買予約と善意の判断時期
通謀虚偽表示の仮装譲受人から売買予約を締結した者が民法94条2項の第三者として保護されるためには、予約完結権行使の時点で善意であることが必要である。
昭和38年6月7日最高裁第二小法廷民集17巻5号728頁(不動産所有権確認等本訴並反訴請求事件)
虚偽表示と転抵当権者の保護
通謀虚偽表示により仮装された抵当権について善意の転抵当権者が設定を受けた場合、転抵当権者は民法94条2項の第三者に該当する。
昭和55年9月11日最高裁第一小法廷民集34巻5号683頁(土地建物所有権移転登記抹消登記手続)
悪意の転得者からの善意の転得者
通謀虚偽表示の仮装譲受人から悪意の者が目的物を取得し、さらにその者から善意の者が取得した場合、善意の転得者は民法94条2項の第三者として保護される。
昭和45年7月24日最高裁第二小法廷民集24巻7号1116頁(所有権確認等請求)
建物の仮装譲渡と土地賃借権の承諾
建物の所有者が通謀虚偽表示により建物を仮装譲渡した場合、土地の賃貸人は虚偽表示の無効を主張でき、仮装譲受人に対する賃借権の譲渡承諾及び地代請求は認められない。
昭和38年11月28日最高裁第一小法廷民集17巻11号1446頁(土地明渡等請求)
善意の土地譲受人と対抗力ある賃借権
通謀虚偽表示について善意で不動産を譲り受けて登記を備えた第三者であっても、仮装譲渡前から対抗力を備えた賃借権を有する賃借人に対してその賃借権を否定することはできない。
善意の転得者からの悪意の転得者
通謀虚偽表示について善意で不動産を譲り受けた者から更に譲り受けた者は、虚偽表示について悪意であっても当該不動産の所有権を取得する。
昭和6年10月24日大審院新聞3334号4頁
虚偽表示の善意の第三者と登記
通謀虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗できず、第三者が対抗要件としての登記を備えていることは要しない。
昭和44年5月27日最高裁第三小法廷民集23巻6号998頁(94条2項の第三者と登記)
虚偽表示の第三者の善意の判定時期
民法94条2項所定の第三者の善意・悪意は、同項の適用の対象となるべき法律関係につき第三者が利害関係を有するに至った時期を基準として決すべきものであるから、仮装譲受人の債権者が目的不動産を差し押さえた場合において差押えの前に虚偽表示であることを知ったときは、その差押債権者は同項による保護を受けない。
昭和55年9月11日最高裁第一小法廷民集34巻5号683頁(土地建物所有権移転登記抹消登記手続)
仮登記の不実な本登記と94条2項類推
通謀虚偽表示により仮登記を経由した者が本人の関与なく偽造書類で本登記に改め第三者に譲渡した場合であっても、本人に虚偽の外観作出について帰責性があるときは、民法94条2項及び110条の法意に照らし、善意無過失の第三者は保護される。
昭和43年10月17日最高裁第一小法廷民集22巻10号2188頁(所有権確認等請求)
虚偽表示の第三者の善意の立証責任
通謀虚偽表示の無効を善意の第三者に対抗することができないという民法94条2項の適用を受けるためには、第三者において自己が善意であることを主張立証しなければならない。
重い帰責性と94条2項・110条の法意
本人が自ら外観の作出に積極的に関与した場合やこれを知りながらあえて放置した場合と同視し得るほど本人の帰責性が重い場合には、民法94条2項及び110条の法意に照らし、善意無過失の第三者は保護される。
平成18年2月23日最高裁第一小法廷民集60巻2号546頁(所有権移転登記抹消登記手続請求事件)
虚偽表示の転得者と対抗
虚偽表示の善意の第三者は、虚偽表示をした者との関係では所有権を主張できるが、その者から同一不動産を譲り受けた者とは対抗関係に立つから、登記がなければ所有権の取得をその者に対抗することができない。
土地賃貸人と虚偽表示の第三者
土地の賃借人が所有する地上建物を他に仮装譲渡した場合、土地賃貸人は民法94条2項の第三者に該当しない。
昭和38年11月28日最高裁第一小法廷民集17巻11号1446頁(土地明渡等請求)
虚偽表示の第三者と一般債権者の差押え
虚偽表示により譲り受けた目的物を差し押さえた仮装譲受人の一般債権者は、民法94条2項の第三者に当たる(差押債権者を善意の第三者として保護した最判昭48.6.28)。
昭和48年6月28日最高裁第一小法廷民集27巻6号724頁(第三者異議)
虚偽表示の第三者保護
相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
昭和45年7月24日最高裁第二小法廷民集24巻7号1116頁(所有権確認等請求)
仮装譲受人からの抵当権者の第三者性
虚偽表示により目的物を譲り受けた者から抵当権の設定を受けた者は、民法94条2項の第三者に当たる。
昭和45年7月24日最高裁第二小法廷民集24巻7号1116頁(所有権確認等請求)
仮装譲受土地上の建物賃借人の第三者性
土地の仮装譲受人から当該土地上の建物を賃借した者は、土地につき法律上の利害関係を有するに至った者ではないから、民法94条2項の第三者に当たらない。
昭和57年6月8日最高裁第三小法廷集民136号57頁(建物退去土地明渡)
虚偽表示の一般承継人と第三者性
通謀虚偽表示の当事者の相続人は、当事者の一般承継人であって民法94条2項の「第三者」に当たらないから、相続人が偽装の事実を知らなかったとしても、売主はこの者に対して意思表示の無効を主張することができる。
昭和45年7月24日最高裁第二小法廷民集24巻7号1116頁(所有権確認等請求)