条文・判例・学説を体系的に整理
未供述の事実を前提とする誘導尋問
主尋問で証人がまだ供述していない事実を前提として回答を誘導する尋問は、刑事訴訟規則199条の3第3項各号の例外に当たらない限り許されない。
記憶喚起の書面提示と供述録取書の除外
証人の記憶を喚起するために書面を示して尋問するには、裁判長の許可が必要であり、示すことができる書面からは、供述を録取した書面は除かれるから、裁判長の許可があっても、証人の検察官に対する供述調書を示すことはできない。
相手方の証人尋問への異議申立て
検察官は、証人尋問において、弁護人の尋問に対し、相当でないことを理由として適法に異議を申し立てることができる。
証拠採用決定への異議理由の制限
証拠調に関する決定に対しては、相当でないことを理由として異議を申し立てることはできず、法令の違反があることを理由とする場合に限られるから、検察官請求証拠を採用して取り調べる旨の決定に対し、相当でないことを理由として異議を申し立てることはできない。
裁判長の釈明不行使への異議申立て
裁判長の処分に対する異議の申立て(刑事訴訟法309条2項)は、法令の違反があることを理由とする場合に限りすることができるから、起訴状の朗読後の求釈明に関する裁判長の措置に対し、相当でないことを理由として適法に異議を申し立てることはできない。
尋問異議の時期・方式と遅れた異議却下
異議の申立ては、個々の行為、処分又は決定ごとに、簡潔にその理由を示して、直ちにしなければならず、時機に遅れてされた異議の申立ては決定で却下しなければならないが、申し立てた事項が重要であってこれに対する判断を示すことが相当であると認めるときは、時機に遅れたことを理由に却下してはならない。
再現どおりの事実立証と実況見分調書
被害者に被害状況を再現させた結果を記載した実況見分調書で、要証事実が再現されたとおりの被害の存在である場合には、同意(刑事訴訟法326条)が得られないときは、321条3項所定の要件を満たす必要があるほか、再現者の供述録取部分及び写真については、再現者が被告人以外の者であれば321条1項2号ないし3号所定の要件(写真は署名押印を除く)を満たす必要がある。
平成17年9月27日最高裁第二小法廷刑集59巻7号753頁(大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反,器物損壊被告事件)
伝聞同意の反対尋問権放棄説への批判
刑事訴訟法326条の同意を反対尋問権の放棄とみる見解に対しては、同条1項が被告人の供述調書も同意の対象としていることを説明できないという批判がある。
伝聞同意の証拠能力付与説と違法捜索批判
刑事訴訟法326条の同意を証拠能力を付与する訴訟行為とみる見解に対しては、違法な捜索差押手続による調書にも同意によって証拠能力が付与されてしまい不当であるという批判がある。
伝聞同意の責問権放棄説と直接主義
刑事訴訟法326条の同意を、原供述時に反対尋問ができなかったこと又は裁判所が供述態度を観察できなかったことについて責問権を放棄する訴訟行為とみる見解は、直接主義の観点を取り込んでいる。
伝聞同意の責問権放棄説と証明力の争い
刑事訴訟法326条の同意を原供述時の瑕疵についての責問権の放棄とみる見解によっても、同意後に供述者の証人尋問を請求して証明力を争うことは妨げられない。
援助依頼発言の存在と非伝聞
「明日あの男を殺そうと思う、手伝ってくれないか」という発言を他人から聞いたとの証言は、その発言があったこと自体(殺害の手伝いを頼んだこと)を要証事実とするときは、発言内容の真実性が問題とならないから、伝聞証拠に当たらない。
ナイフ用意発言の真実性と伝聞証拠
「ナイフを用意した、これであの男を刺す」という発言を聞いたとの証言は、発言者が凶器としてナイフを用意していたことを要証事実とするときは、発言内容の真実性が問題となるから、伝聞証拠に当たる。
刺した発言を聞いた証言と犯人性の伝聞
「昨晩あの男を呼び出し、ナイフで刺して逃げてきた」という発言を聞いたとの証言は、被害者を殺したのが発言者であることを要証事実とするときは、発言内容の真実性が問題となるから、伝聞証拠に当たる。
被害者の犯人の呼名と非伝聞
被害者が犯人に向かってその名を呼び「何の用だ」と言ったとの証言は、犯人が被害者からその名で呼ばれていたことを要証事実とするときは、発言の存在そのものが要証事実であり、発言内容の真実性が問題とならないから、伝聞証拠に当たらない。
ドライブ発言によるアリバイと伝聞
被告人が「昨日午後11時頃は、俺はI市内をドライブしていた」と言ったとの証言は、事件発生時に被告人が現場から離れた場所にいたことを要証事実とするときは、発言内容の真実性が問題となるから、伝聞証拠に当たる。
証言拒否と伝聞例外の供述不能
証人が公判廷で証言を拒絶した場合は、321条1項2号前段の「公判期日において供述することができないとき」に当たり得るが、期日を改め期間をおけば証言が得られる見込みがあったことは、その判断において考慮される余地がある。
昭和27年4月9日最高裁大法廷刑集6巻4号584頁(団体等規制令違反、犯人藏匿)
供述録取書の供述不能・不可欠性・特信
裁判官・検察官の面前調書以外の書面(司法警察員に対する供述調書等)は、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるときで、ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、証拠とすることができる。
主尋問の記憶喚起のための誘導尋問
主尋問においては誘導尋問をしてはならないが、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、誘導尋問をすることができる。
証拠物の提示と成立・同一性の尋問
訴訟関係人は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面又は物を示すことができ、証拠調べを終わったものについては、裁判長の許可を要しない。