条文・判例・学説を体系的に整理
前科の事実を手段とする恐喝の起訴状
前科の事実を手段・方法として恐喝したという事実で公訴を提起する場合には、前科が公訴犯罪事実の内容となるから、起訴状の公訴事実中に被告人の前科を記載することも許される。
昭和27年3月5日最高裁大法廷刑集6巻3号351頁(詐欺)
起訴と同時の逮捕状・勾留状の差出し
検察官は、逮捕又は勾留されている被告人について公訴を提起したときは、速やかにその裁判所の裁判官に逮捕状、勾留状等を差し出さなければならず、起訴状の提出と同時にこれらを差し出すことは許される。
告訴欠缺の公訴棄却確定後の再起訴
告訴がないまま起訴された親告罪(器物損壊罪)の事件について公訴棄却の判決(338条4号)が確定した場合でも、検察官は、その後に被害者から告訴を得たときは、同一事実で再度起訴することができる。
起訴状一本主義違反の公訴提起の効果
起訴状一本主義に違反した公訴提起の手続は無効であり、裁判所は、判決で公訴を棄却しなければならない。
昭和27年3月5日最高裁大法廷刑集6巻3号351頁(詐欺)
略式命令請求と書類・証拠物の差出し
略式命令を請求する場合において、その請求と同時に検察官が略式命令をするために必要があると思料する書類及び証拠物を裁判所に差し出しても、起訴状一本主義(256条6項)に反しない。
強盗訴因から手段の異なる恐喝の認定
「被害者を脅迫して現金を強取した」という強盗の訴因に対し、「被害者に暴行を加えて現金を交付させた」という恐喝の事実を認定するには、手段(脅迫と暴行)と被害者の行為(強取と交付)の態様が異なり被告人の防御に影響し得るため、訴因変更の手続を要する。
殺人実行行為者の択一認定と訴因変更
殺人の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合でも、訴因と異なる実行行為者を択一的に認定することは、審判対象の画定の見地からは訴因変更を要せず、審理の経過に照らし被告人に不意打ちを与えるものでなく、認定事実が訴因より被告人に不利益でないときは、訴因変更の手続を経なくても違法ではない。
平成13年4月11日最高裁第三小法廷刑集55巻3号127頁(殺人,死体遺棄,現住建造物等放火,詐欺被告事件)
異なる過失態様の認定と訴因変更
自動車運転による傷害事件で、濡れた靴によりクラッチペダルから足を踏み外した過失という訴因を認めず、接近時にブレーキをかけるのが遅れた過失を認定するには、防御の機会を与えるため訴因変更の手続を要する。
昭和46年6月22日最高裁第三小法廷刑集25巻4号588頁(業務上過失致死、業務上過失傷害)
覚せい剤使用の訴因変更と事実の同一性
日時、場所、方法を特定した覚せい剤使用の訴因を、別の日時、場所、方法の覚せい剤使用の訴因に変更することは、いずれの訴因も被告人の尿中から検出された同一の覚せい剤の使用行為に関するものである場合には、公訴事実の同一性に欠けることはなく、許される。
昭和63年10月25日最高裁第三小法廷刑集42巻8号1100頁(覚せい剤取締法違反)
常習特殊窃盗と別日時の窃盗の訴因変更
訴因を、別の日時の別の住居への侵入・窃盗(別の被害)の訴因に変更することは、両訴因の事実が実体法上は常習特殊窃盗罪を構成する場合であっても、訴因が単純窃盗罪である以上は別個の事実であって、公訴事実の同一性を欠くため許されない。
平成15年10月7日最高裁第三小法廷刑集57巻9号1002頁(建造物侵入,窃盗被告事件)
起訴後勾留継続と質問手続
勾留されている被疑者がその被疑事実と同一の事実で公訴を提起された場合、被疑者勾留は当然に被告人勾留に切り替わるため、改めて被告事件を告げこれに関する陳述を聴く手続を行う必要はない。
不起訴処分の検事正への見直し請求
刑事訴訟法には、告訴又は告発をした者が、検察官のした公訴を提起しない処分に不服があるときに、その検察官を指揮監督する検事正に当該処分の見直しを請求することができる旨の規定はない。
司法警察員の全件送致と微罪処分
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならないが、検察官が指定した事件については送致しないことができる(微罪処分)。
起訴独占主義と起訴便宜主義
刑事訴訟法では起訴独占主義が採られているため、起訴・不起訴について検察官の判断を一切経ることなく事件が公訴提起されることはない。
付審判請求の対象限定
付審判請求(準起訴手続)は、公務員による刑法193条から196条所定の職権濫用罪等に対象が限定されており、刑法177条の罪はその対象に含まれない。
付審判請求の対象事件限定
付審判請求の対象事件は公務員による職権濫用罪等に限定されており、すべての事件について利用できるわけではない。
起訴相当議決の効力
検察審査会が起訴を相当とする議決(起訴相当議決)をしても、検察官に直ちに公訴提起義務は生じない。
起訴後の補充捜査
検察官は公訴を提起した後も必要と認めるときは自らその犯罪を捜査することができる。
検察官の公訴権と起訴便宜主義
検察官は起訴便宜主義に基づき、証拠に基づき有罪判決を得られる見込みがある場合であっても、諸般の事情を考慮して公訴を提起しないことができる。
検察官の公訴取消しと裁判所の許可
検察官は第一審の判決があるまで公訴を取り消すことができるが、その際に裁判所の許可は不要である。