条文・判例・学説を体系的に整理
相続欠格の代襲相続人の遺留分権利者性
被相続人の子が相続人の欠格事由に該当して相続権を失ったときは、その者の子(被相続人の直系卑属)が代襲して相続人となり(民法887条2項)、兄弟姉妹以外の相続人として遺留分権利者となる(民法1042条1項)。
相続分なき指定を受けた者の特別寄与料
相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に、民法900条から902条までの規定(指定相続分を含む)により算定した相続分を乗じた額を負担するから、遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない。
共同相続人の相続放棄と他者の遺留分額
共同相続人の一人が相続の放棄をしたときは、その者は初めから相続人とならなかったものとみなされるから、他の相続人が遺留分として受ける額は、その相続分が増えることに応じて変わる。
代襲相続人の遺留分
兄弟姉妹以外の相続人は遺留分を有し、被相続人の子の代襲者として相続人となる者も、兄弟姉妹以外の相続人であるから、遺留分を有する。
遺留分算定の基礎財産
遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額である。
遺留分侵害額請求と金銭支払
遺留分権利者は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
特別受益の持戻しと遺留分侵害額の算定
特別受益に当たる贈与は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものでない場合、相続開始前の10年間にしたものに限り、遺留分を算定するための財産の価額に算入される。
遺留分権利者の承継人と遺留分侵害額請求
遺留分権利者の承継人は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
死亡保険金受取人変更と遺留分侵害額請求
死亡保険金の受取人変更行為は遺贈や贈与に該当しないため、原則として遺留分侵害額請求の算定対象とならない。
平成14年11月5日最高裁第一小法廷民集56巻8号2069頁(死亡保険金支払請求権確認請求事件)
相続放棄と代襲相続の不発生
相続放棄をした者の子は代襲相続人とならないため、相続放棄者の子は遺留分権利者にもならない。
持戻し免除と遺留分算定基礎
共同相続人への特別受益に当たる贈与が相続開始前10年以内にされた場合、被相続人が持戻し免除の意思表示をしていても、その価額は遺留分算定の基礎となる財産額に算入される。
平成24年1月26日最高裁第一小法廷集民239号635頁
相続開始前の遺留分放棄
相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限りその効力を生ずる。
遺留分侵害額請求権と債権者代位
遺留分侵害額請求権(民法1046条1項)が、債務者の一身に専属する権利として債権者代位の目的から除かれるか(同法423条1項ただし書)は、条文上明示されておらず、解釈に委ねられている。
平成13年11月22日最高裁第一小法廷民集55巻6号1033頁(第三者異議事件)
複数受遺者の負担割合
複数の受遺者が遺留分侵害額を負担する場合、遺言者に別段の意思表示がなければ、各受遺者は遺贈目的の価額の割合に応じて金銭債務を負担する。
包括遺贈の遺留分侵害請求による権利の性質
遺言者の財産全部の包括遺贈に対して遺留分権利者が遺留分侵害額の請求をした場合、遺留分権利者が取得するのは受遺者に対する遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求権であって、遺産分割の対象となる相続財産ではない。
平成8年1月26日最高裁第二小法廷民集50巻1号132頁(包括遺贈に対する遺留分減殺と帰属権利の性質)
遺留分侵害額請求権の債権者代位
2018年の民法改正前の判例は、遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位の目的とすることができないとしたが、現行の遺留分侵害額請求権(民法1046条1項)について同様に解されるかは条文上明示されていない。
平成13年11月22日最高裁第一小法廷民集55巻6号1033頁(第三者異議事件)
遺留分侵害額請求の相手方と目的物の譲受人
遺留分侵害額の請求は受遺者又は受贈者に対して金銭の支払を求めるものであり、遺留分権利者は、受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対して遺留分侵害額の請求をすることはできない。
昭和35年7月19日最高裁第三小法廷民集14巻9号1779頁(土地建物所有権移転登記等請求)
生前贈与を受けた相続人の遺留分侵害額請求
生前に婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として贈与を受けた相続人であっても、自己の遺留分からその贈与の価額等を控除してなお遺留分侵害額があるときは、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
遺留分侵害額請求の金銭債権化と価額弁償
遺留分侵害額の請求を受けた受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継した相続人を含む)は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払義務を負うのであって、遺贈等の目的物の返還義務を負うものではないから、返還義務を免れるために個別の目的物について価額による弁償を選択するという問題は生じない。
平成12年7月11日最高裁第三小法廷民集54巻6号1886頁(土地建物共有物分割等請求事件)
子のみが相続人の場合の遺留分
被相続人と配偶者が同時に死亡した場合、配偶者は相続人とならず子のみが相続人となるから、子が二人であれば各子の遺留分は、遺留分算定の財産の価額の2分の1に法定相続分2分の1を乗じた4分の1である。