条文・判例・学説を体系的に整理
共同相続預貯金債権の遺産分割対象性
共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる。
平成28年12月19日最高裁大法廷民集70巻8号2121頁(遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件)
特定財産承継遺言による権利承継
特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言(特定財産承継遺言)があるときは、特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継され、遺産分割の協議又は審判を経る余地はない。
平成3年4月19日最高裁第二小法廷民集45巻4号477頁(土地所有権移転登記手続)
特別寄与者と金銭請求
特別寄与者は相続人に対し寄与に応じた特別寄与料(金銭)の支払を請求することができるにとどまり、その寄与に応じて相続財産に属する不動産の持分を取得することはできない。
特別寄与者の要件と親族以外の者
被相続人の親族でない者は、無償で被相続人の療養看護をしたことにより被相続人の財産の維持に特別の寄与をしても、特別寄与者には当たらない。
寄与分と遺贈の控除
寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
相続持分侵害の相続回復請求の時効援用
共同相続人の一人が、他に共同相続人がいることを知りながら、相続財産のうち他の共同相続人の持分に属する部分を自己の持分に属すると称して占有管理している場合(遺産分割協議書を偽造して単独名義の登記をした場合を含む)には、その者は、相続回復請求権の消滅時効(民法884条)を援用することができない。
昭和53年12月20日最高裁大法廷民集32巻9号1674頁(登記手続等)
遺産分割の禁止
被相続人は遺言で相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁ずることができる。
寄与分の算定
共同相続人中に被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときは、寄与分を控除した額をもって相続財産とみなす。
遺産分割協議の債務不履行解除の否定
共同相続人間で成立した遺産分割協議について、共同相続人の一人がその協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の共同相続人は債務不履行を理由として遺産分割協議を解除することはできない。
平成元年2月9日最高裁第一小法廷民集43巻2号1頁
遺産分割協議の合意解除と再分割
共同相続人全員の合意により既に成立した遺産分割協議を解除した上で改めて遺産分割協議を成立させることは妨げられない。
平成2年9月27日最高裁第一小法廷民集44巻6号995頁
相続開始前同居相続人と使用貸借関係の推認
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物に被相続人と同居してきた場合、特段の事情のない限り、遺産分割が終了するまでの間、引き続き無償で使用させる旨の使用貸借関係が推認される。
平成8年12月17日最高裁第三小法廷民集50巻10号2778頁(土地建物共有物分割等)
遺産分割前の遺産処分と代金債権の可分性
共同相続人が全員の合意によって遺産分割前に遺産である土地を第三者に売却した場合、その売買代金債権は可分債権である。
平成17年9月8日最高裁第一小法廷民集59巻7号1931頁(預託金返還請求事件)
特別受益の持戻しと具体的相続分計算
被相続人が生計の資本として特定の相続人に贈与をした場合、その贈与額を相続財産に加算したみなし相続財産に各相続人の法定相続分を乗じ、受贈者の具体的相続分からは贈与額を控除する。
遺言による特別受益の持戻し免除
被相続人は、遺言で、特別受益の持戻しの算定から除外するよう指示することができる(持戻し免除の意思表示)。
特別寄与分の計算方法
特別の寄与をした共同相続人がいる場合、寄与分を控除したみなし相続財産に各相続人の相続分を乗じた額に、寄与者については寄与分を加算した額が具体的相続分となる。
遺産分割後の担保責任
遺産分割によって取得した財産に、遺産分割後に判明した種類又は品質に関する欠陥があった場合、当該財産を取得した相続人は、他の共同相続人に対し、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を追及することができる。
遺産中の特定不動産の持分譲渡と取戻権
共同相続人の一人が遺産を構成する特定の不動産について有する共有持分権を第三者に譲渡した場合、民法905条は適用も類推適用もされず、他の共同相続人は価額及び費用を償還して取り戻すことはできない。
昭和53年7月13日最高裁第一小法廷集民124号317頁(共有物分割)
相続財産中の金銭
共同相続が生じたとき、相続財産を構成する金銭は、相続開始と同時に各相続人の相続分に従い当然に分割されるものではなく、遺産分割の対象となる(相続人は、遺産分割までの間、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることができない)。
平成4年4月10日最高裁第二小法廷集民164号285頁(保管金返還)
遺産分割の請求の方法
共同相続人間に遺産分割の協議が調わないときなどは、各共同相続人は遺産の分割を家庭裁判所に請求することができ、他の相続人全員を被告として遺産分割の訴えを提起することはできない。
遺言による分割方法の委託
被相続人は遺言で遺産の分割方法を定めることを第三者に委託することができる。