条文・判例・学説を体系的に整理
注文者の帰責事由による完成不能と償還
注文者の責めに帰すべき事由によって仕事を完成できなくなった場合において、請負人が自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを注文者に償還しなければならない。
引渡しを要しない請負の報酬支払時期
仕事の目的物の引渡しを要しない請負契約においては、報酬は、仕事を終えた後でなければ請求することができず(民法633条ただし書・624条1項)、請負人の仕事完成債務と注文者の報酬支払債務とは同時履行の関係に立たない。
注文者の材料の不適当の告知と請負責任
請負人が注文者の供した材料の性質によって生じた契約不適合について責任を負わないのは、請負人がその材料が不適当であることを知りながら告げなかったのでない場合であり、知りながら告げなかったときは、請負人は担保責任を負う。
請負代金の大部分の支払と建物所有権
請負人が材料の全部を提供して建物を建築した場合でも、注文者が棟上げの時までに報酬の半額以上を支払い、その後も工事の進行に応じて残報酬を支払っていたときは、特段の事情のない限り、建物の所有権は、完成と同時に原始的に注文者に帰属する。
昭和44年9月12日最高裁第二小法廷集民96号579頁(所有権確認等請求)
完成前の請負解除と報酬
請負が仕事の完成前に解除された場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなし、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
請負の目的物の契約不適合の通知期間
請負の目的物の種類又は品質に関する契約不適合について、注文者は、不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知すれば足り、その期間内に訴えを提起することを要しない。
注文者の帰責事由による完成不能と報酬
注文者の責めに帰すべき事由によって請負人が仕事を完成することができなくなったときは、注文者は、反対給付(報酬)の履行を拒むことができず、請負人は報酬を請求することができる。
請負の解除と損害賠償
請負人は、仕事の完成前であれば、損害を賠償していつでも請負契約を解除することができるわけではなく、注文者のみが損害を賠償して解除できる。
修補請求と過分の費用
請負の目的物の契約不適合に対する注文者の修補請求(民法559条・562条1項)は、修補に過分(極めて多額)の費用を要するときは、履行不能(412条の2第1項)と評価され得て、その場合、注文者は請負人に対し修補を請求することができない。
注文者の指図による不適合と告知義務
仕事の目的物の契約不適合が注文者の与えた指図によって生じた場合であっても、請負人がその指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、請負人は担保責任を免れない。
工作物請負の契約不適合責任の通知期間
請負の仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合(建物その他の土地の工作物の請負も同じ)、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない(民法637条1項)が、引渡しの時(引渡しを要しない場合は仕事が終了した時)に請負人がその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この期間制限は適用されない(同条2項)。
請負の契約不適合責任の通知期間
請負の目的物の種類又は品質の不適合について、注文者が知った時から1年以内に通知しないと原則として追完・減額・損害賠償・解除を請求できないが、引渡時等に請負人が不適合を知り又は重大な過失で知らなかった場合はこの制限を適用しない。
下請負人の築造した出来形部分の所有権帰属
建物建築工事請負契約において、契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権を注文者に帰属させる旨の約定がある場合、注文者と下請負人との間に格別の合意があるなど特段の事情がない限り、一括下請負人が自ら材料を提供して築造した出来形部分も注文者に帰属する。
平成5年10月19日最高裁第三小法廷民集47巻8号5061頁(建物明渡等請求事件)
契約不適合損害賠償と報酬の同時履行
請負の目的物が契約の内容に適合しない場合、注文者の修補に代わる損害賠償請求権と請負人の報酬請求権は同時履行の関係に立ち、注文者は、損害賠償債権をもって報酬残債権全額の支払を拒むことが信義則に反するときを除き、損害賠償債務の履行の提供を受けるまで報酬残債権全額の支払を拒むことができる。
平成9年2月14日最高裁第三小法廷民集51巻2号337頁(工事代金)
請負の契約不適合責任と通知期間の特約
請負目的物の契約不適合について注文者が通知すべき期間は、当事者間の特約によって伸長することができる。
仕事の一部完成と注文者の解除
工事請負契約において、工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に契約を解除する場合、工事内容が可分であり、当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、特段の事情のない限り、未施工部分についてのみ契約を解除することができる。
昭和56年2月17日最高裁判時996号61頁
建物建築請負と完成建物の所有権帰属
建物の建築を請け負った者が完成建物の所有権を常に取得するわけではなく、注文者が材料の全部又は主要部分を提供したときは完成建物の所有権は原始的に注文者に帰属し、請負人が材料の全部を提供した場合であっても完成と同時に注文者に所有権を帰属させる旨の合意があると認められるときは完成と同時に注文者に帰属する。
昭和46年3月5日最高裁第二小法廷集民102号219頁(所有権確認等請求)
請負の仕事完成義務と滅失リスク
建物の建築を目的とする請負契約において双方の帰責事由なく建築途中の建物が滅失した場合でも、請負人は新たに建物を建築して完成させなければ報酬全額の支払を請求することができない。
請負の報酬支払時期
請負の報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければならず、目的物の引渡しを要する場合には引渡しまで報酬の支払を拒むことができる。
請負引渡時の不適合の顕在性と責任
請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を引き渡した場合、引渡しの時にその不適合が明らかであったことだけでは、請負人は担保責任を免れない。