条文・判例・学説を体系的に整理
強迫取消しと催告による追認のみなし
制限行為能力者の相手方の催告権(20条)は制限行為能力者の取り消すことができる行為についての規定であり、強迫による意思表示をした者に対する催告には適用されず、期間内に確答を発しなくても、その行為を追認したものとはみなされない。
取消後の返還義務と現存利益
行為の時に制限行為能力者であった者は、取り消された行為によって現に利益を受けている限度において返還の義務を負い、受け取った金銭を賭博等で浪費して利益が現存しないときは、その部分の返還義務を負わない。
法定代理人の追認と本人の取消権の消滅
被保佐人がした法律行為を法定代理人が追認したときは、以後その法律行為を取り消すことができない。
未成年者の追認と法定代理人の同意
未成年者は、成年に達するまでは、法定代理人の同意を得なければ、取り消すことができる行為を自ら追認することができない。
取消権の消滅時効
取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないとき、または行為の時から20年を経過したときに時効によって消滅する。
錯誤取消しと承継人
錯誤によって取り消すことができる行為は、錯誤による意思表示をした者の代理人若しくは承継人(契約上の地位の特定承継人を含む)も、取り消すことができる(民法120条2項)。
無償行為の取消しと返還義務
無償行為が取り消された場合、給付を受けた者が、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度において返還の義務を負う。
負担のない贈与の錯誤取消しと返還義務
負担のない贈与について贈与者の錯誤を理由とする取消しがされたが、受贈者が既に給付を受けていた場合、受贈者は、給付を受けた時に贈与契約が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度において返還の義務を負う。
法定追認の要件
取り消すことができる行為について追認をすることができる時以後に法定追認事由に該当する事実が生じたときは追認をしたものとみなされるが、単に履行の請求を受けただけでは法定追認事由に該当しない。
明治39年5月17日大審院民録12巻837頁(約束手形金請求ノ件)
権利の譲渡と法定追認
取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡は法定追認事由に該当する。
制限行為能力者の取消権行使
制限行為能力者は法定代理人の同意を得ずにした法律行為を単独で取り消すことができる。
信義則による権利行使制限
共同相続人の一人が、持分しか取得していないのに単独相続の登記をして抵当権を設定しその登記をした場合、自己の持分を超える部分の抵当権の無効を主張して抹消(更正)登記手続を請求することは、信義則に照らし許されない。
昭和42年4月7日最高裁第二小法廷民集21巻3号551頁
期限の利益喪失の主張と信義則
貸金業者が、借主が期限の利益を喪失していないと誤信するような対応をし、その誤信を知りながらこれを解くことなく長期間弁済金を受領し続けた場合には、貸金業者が期限の利益喪失の特約に基づき借主が期限の利益を喪失したと主張することは、信義則に反し許されない。
平成21年9月11日最高裁第二小法廷集民231号531頁
公序良俗違反の効果
公序良俗に違反する法律行為は無効である。
有害物混入食品の製造販売契約の公序良俗
有毒性物質の混入した食品の販売を法令が禁止していることを知りながら、あえてこれを製造し、その事実を知る販売業者に継続的に売り渡す契約は、民法90条により無効である。
昭和39年1月23日最高裁第一小法廷民集18巻1号37頁
法定代理人の追認と本人の取消権
法定代理人が取り消すことができる行為を追認した場合、本人がその追認を知らなくても本人は取消権を失う。
取消しの意思表示
取消しは相手方に対する意思表示によって行う。
第三者のためにする契約の取消相手方
契約により相手方以外の第三者に給付を約した者が、相手方の詐欺を理由に契約を取り消す場合、既に第三者が受益の意思表示をしていたときでも、その取消しは、契約の相手方に対する意思表示によって行い、第三者に対して行うのではない。
取消しの遡及効
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされる。
成年後の代金支払による法定追認
制限行為能力者が行為能力者となった後に、取り消すことができる行為について全部又は一部の履行をしたときは、追認をしたものとみなされ(民法125条)、取り消すことができなくなる。