条文・判例・学説を体系的に整理
強迫取消しと強迫者の二段の故意
強迫による意思表示の取消しには、強迫者に、強迫行為によって表意者に畏怖を生じさせる故意と、その畏怖により表意者に意思表示をさせる故意(二段の故意)が必要であると解される。
詐欺取消し前の善意無過失の第三者
詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができないが、表意者は、その第三者が現れた後でも詐欺による意思表示そのものを取り消すことができる。
詐欺の相手方による追認の催告
詐欺による意思表示をさせた相手方には、表意者に対し、その意思表示を追認するかどうかを確答すべき旨を催告する権利は認められない。
強迫取消しと善意相手方の現存利益返還
強迫による贈与の意思表示を取り消した場合でも、善意の相手方が受領した金銭を遊興のために費消して現に利益を受けていないときは、無償行為に基づく給付を受けた善意者として、現存利益の限度でしか返還義務を負わず、返還義務を負わない。
第三者の詐欺による取消しの効果
第三者の詐欺により意思表示をした場合の取消しは、詐欺を行った第三者と相手方の双方に対する意思表示によるのではなく、相手方に対する意思表示によってする。
第三者による詐欺と取消し
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知らなかったとしても、それを知ることができたときは、表意者はその意思表示を取り消すことができる。
96条3項の「第三者」と仮登記
欺罔により農地の売買がなされ、農地法上の許可を停止条件とする所有権移転の仮登記がなされた上で仮登記移転の付記登記を受けた者は、民法96条3項の「第三者」に当たる。
昭和49年9月26日最高裁第一小法廷民集28巻6号1213頁(所有権移転登記請求)
代理人に対する詐欺と取消権
代理人が第三者の詐欺により意思表示をした場合、本人が取消権を行使することができる。
詐欺取消し前の善意無過失の第三者
詐欺による意思表示の取消しは、取消し前に善意でかつ過失がなく新たに利害関係を有するに至った第三者に対抗することができない。
消費者契約と事業者の詐欺
消費者契約において、事業者の詐欺により消費者がした意思表示は、取り消すことができる。
第三者による詐欺と強迫の違い
第三者が詐欺を行った場合は、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り取り消すことができるが、第三者が強迫を行った場合は、相手方がその事実を知らなかったときでも取り消すことができる。
強迫取消しと取消後の第三者
強迫を理由として意思表示を取り消した場合、その取消し後に現れた第三者に対しては、登記なくして取消しを対抗することができない。
第三者詐欺と錯誤の関係
第三者の詐欺により相手方に対する意思表示をした者は、相手方が詐欺の事実を知らず、かつ知ることができなかったため詐欺による取消しができない場合でも、その詐欺によって生じた錯誤が民法95条の要件を満たすときは、錯誤を理由にその意思表示を取り消すことができる。
相手方に詐欺の故意がない場合の救済
相手方に詐欺の故意がなくても、要件を満たせば錯誤取消しや説明義務違反による損害賠償等の救済を受け得る。
強迫の要件
民法96条の強迫による意思表示については、害悪の告知により表意者が畏怖し、その結果意思表示をしたという主観的な因果関係を要するが、完全に意思の自由を失うまでは要しない。
昭和33年7月1日最高裁第三小法廷民集12巻11号1601頁(不動産売買予約履行並びに不動産所有権移転登記請求)
詐欺と同時履行の抗弁権
詐欺による意思表示をした表意者は、取消しをしない限り、詐欺を理由として自らの債務の履行を拒絶することができない。
詐欺と第三者保護
詐欺取消し自体は第三者がいても可能だが、取消しは善意無過失の第三者に対抗できない。
第三者強迫の相手方善意悪意不問の取消し
第三者が強迫を行った場合、民法96条2項の制限は詐欺についてのみのものであるから、相手方が強迫の事実を知らなかったときでも、強迫による意思表示は取り消すことができる。
詐欺取消しと第三者
詐欺による取消しは、善意かつ無過失の第三者に対抗できない。
第三者の強迫と相手方の善意悪意
第三者の強迫による意思表示は、民法96条2項(第三者の詐欺の場合の制限)の適用がなく、相手方の善意悪意を問わず、表意者は取り消すことができる。