条文・判例・学説を体系的に整理
国税滞納処分による差押えと民法177条
国税滞納処分による差押えの関係においても、民法177条の適用があり、国は、登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有しない第三者に当たる場合を除き、登記なくして対抗できない者に対して差押えの効力を主張できる。
昭和31年4月24日最高裁第三小法廷民集10巻4号417頁(公売処分無効確認等請求)
無許可営業と契約の効力
食品衛生法上の営業許可は取締規定にすぎないから、許可を得ずに営業しても、原則として当該営業上締結された契約は私法上無効とならず、客は飲食代金の支払を拒否することができない。
昭和35年3月18日最高裁第二小法廷民集14巻4号483頁
双方代理と民法108条類推適用
市長が市を代表するとともに相手方を代理して契約を締結した場合、双方代理に関する民法108条が類推適用されるが、市議会が双方代理の事情を認識した上で追認した場合には市にその法律効果が帰属する。
平成16年7月13日最高裁第三小法廷民集58巻5号1368頁(市長双方代理事件)
公共用財産の黙示の公用廃止と時効取得
公共用財産が長年公の目的に供されず形態・機能を全く失い、平穏・公然の占有によっても公の目的を害さず維持すべき理由もなくなった場合、黙示の公用廃止により取得時効の対象となり、民法162条の要件を満たせば公用制限のない所有権を取得できる。
昭和51年12月24日最高裁第二小法廷民集30巻11号1104頁(公共用財産時効取得事件)
退去義務の非代替性と代執行の否定
庁舎の使用許可の期限が経過した後も組合員が立ち退かない場合、退去義務は他人が代わってすることのできない義務(非代替的作為義務)であるから、同部屋からの組合員の退去について代執行をすることはできない。
市の所有権に基づく工作物除却の代執行
行政代執行は、法律又はそれに基づく命令等により命ぜられた義務の不履行に対する手段であり、市が所有する土地に権原なく工作物が設置された場合に、土地所有権に基づいて代執行により工作物を除却することはできない。
行政行為の成立と効力の発生(到達主義)
行政行為は、要件が充足され、行政庁が意思決定をしてこれを表示することによって成立するが、その効力は、相手方に到達し又は了知し得べき状態に置かれた時に発生するのであり、成立と同時に効力が発生するとは限らない。
行政行為の附款と裁量
行政行為の附款は、これを付し得ることが法律に明記されていない場合であっても、法律が当該行政行為について裁量を認めている場合には、その裁量の範囲内で付すことができる。
不当な行政行為の職権取消し
行政庁は、行政行為が当初から不当であるにとどまり違法ではない場合であっても、職権で取り消すことができる。
代執行と条例の根拠
条例によって課された代替的作為義務に違反した者に対し代執行を行うためには、個別の条例に代執行の規定がなくても、行政代執行法に基づいて代執行を行うことができる。
行政行為の効力発生時期
行政行為の効力が生ずるのは、特段の定めのない限り、相手方が現実に当該行政行為を了知したか、当該行政行為が相手方の了知し得べき状態に置かれたときである。
昭和29年8月24日最高裁第三小法廷刑集8巻8号1372頁
行政処分と民事訴訟の関係
原子炉の周辺住民が人格権に基づき原子炉設置の差止めを求める民事訴訟を提起するにはあらかじめ原子炉設置許可の取消し又は無効確認の判決を得ておく必要はない。
平成4年9月22日最高裁第三小法廷民集46巻6号1090頁(原子炉設置許可処分無効確認等)
行政行為の公定力
行政処分は、たとえ違法であっても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認むべき場合を除いては、適法に取り消されない限りその効力を有する。
昭和30年12月26日最高裁第三小法廷民集9巻14号2070頁(耕作権確認並耕地引渡請求)
特許無効理由と民事裁判所
特許の無効審決が確定する以前であっても、特許権侵害訴訟を審理する裁判所は、特許に無効理由が存在することが明らかであるか否かについて判断することができる。
平成12年4月11日最高裁第三小法廷民集54巻4号1368頁(債務不存在確認請求事件)
食品営業許可の条件と料金事前承認
食品衛生法の営業許可の条件は衛生上の目的に必要な範囲に限られ、メニュー料金の事前承認という条件は付せない。
授益的処分の撤回と法令の根拠の要否
行政庁は、相手方に利益を与える行政処分をした場合であっても、公益上その撤回の必要性が高いときは、法令上その撤回について直接明文の規定がなくても、処分の権限を付与されている者がその権限において撤回することができる。
昭和63年6月17日最高裁第二小法廷集民154号201頁(優生保護法指定医の指定取消処分取消等請求事件)
重大明白な違法処分の当然無効
行政処分に重大かつ明白な違法(瑕疵)があるときは、当該処分は取り消されなくても当然に無効である。
昭和34年9月22日最高裁第三小法廷民集13巻11号1426頁(土地所有権確認請求)
出訴期間経過後の職権取消し
処分庁は、自らした行政処分に成立当初から取り消し得べき瑕疵があった場合には、取消訴訟の出訴期間経過後に判明し、訴訟手続によって取り消される余地がなくなったときでも、当該処分を自ら職権で取り消すことができる。
昭和43年11月7日最高裁第一小法廷民集22巻12号2421頁(所有権確認等請求)
授益的処分の職権取消しと法律の根拠
処分庁は、授益的処分であっても、処分成立時からの瑕疵を理由として職権で取り消すことができ、その取消しを認める旨の法律上の明文の規定は必要でない(ただし、名宛人の利益との比較衡量による制約がある)。
昭和43年11月7日最高裁第一小法廷民集22巻12号2421頁(所有権確認等請求)
指定医師の指定取消しと撤回の区別
人工妊娠中絶を行う指定医師について、指定後に虚偽の出生証明書作成等による罰金刑が確定して適格性の欠如が明らかとなり、指定を存続させることが公益に適合しない状態が生じたことを理由に指定を取り消す行為は、後発的事情に基づいて将来に向かい効力を失わせる学問上の撤回に当たる。
昭和63年6月17日最高裁第二小法廷集民154号201頁(優生保護法指定医の指定取消処分取消等請求事件)