条文・判例・学説を体系的に整理
被告人本人の自白調書の補強証拠適格
補強証拠は被告人本人の自白とは独立した証拠でなければならず、公判期日での自白を、同じ内容の自白を録取した供述調書によって補強することはできない。
昭和25年7月12日最高裁大法廷刑集4巻7号1298頁(窃盗)
共犯者の自白と本人の自白の補強法則
共犯者又は共同被告人の自白は、刑事訴訟法319条2項・憲法38条3項の「本人の自白」には含まれないから、共犯者の自白のみを証拠として被告人を有罪とすることができる。
昭和33年5月28日最高裁大法廷刑集12巻8号1718頁(傷害致死、暴行、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、窃盜)
殺人罪の故意の補強証拠の要否
自白の補強証拠は、罪体(客観的構成要件)の主要部分について必要であり、主観的要件である故意については、被告人の自白だけで認定することができ、補強証拠は必要不可欠ではない。
死体遺棄罪の補強証拠と死体発見の要否
死体遺棄罪で有罪とするための補強証拠は、死体遺棄行為の客観面を裏付けるものであればよく、死体の写真等死体の発見を前提とする証拠が必要不可欠とは限らない。
違法逮捕と別罪の尿鑑定書の証拠能力
窃盗被疑事実で違法に逮捕された被疑者から逮捕当日に採取された尿の鑑定書は、覚醒剤自己使用の事実の立証に用いる場合でも、違法な逮捕と密接に関連する証拠として、その証拠能力が否定されることがある。
平成15年2月14日最高裁第二小法廷刑集57巻2号121頁(覚せい剤取締法違反,窃盗被告事件)
違法の重大性と捜査機関の主観的事情
違法収集証拠排除法則における「違法の重大性」の判断に当たっては、手続の客観的な違法の程度のほか、警察官が違法を糊塗するため逮捕状に虚偽事項を記入し、内容虚偽の捜査報告書を作成し、公判廷で事実と反する証言をしたなど、捜査機関の態度(主観的事情)も総合的に考慮される。
平成15年2月14日最高裁第二小法廷刑集57巻2号121頁(覚せい剤取締法違反,窃盗被告事件)
違法手続と証拠の関連の程度と排除相当性
違法な手続と最終的に獲得された証拠との間の因果性(関連性)の程度は、証拠の排除相当性の判断において考慮される(違法収集証拠排除法則においては、違法の重大性と排除相当性を総合して証拠能力の有無を判断する)。
平成15年2月14日最高裁第二小法廷刑集57巻2号121頁(覚せい剤取締法違反,窃盗被告事件)
鑑定書の信頼性と違法収集証拠排除
鑑定書が定型的に高度の信頼性を有する証拠であるとしても、鑑定の対象となる尿が、重大な違法を伴う逮捕と密接に関連する証拠であるときは、その鑑定書の証拠能力が否定される。
平成15年2月14日最高裁第二小法廷刑集57巻2号121頁(覚せい剤取締法違反,窃盗被告事件)
自白排除の黙秘権説への批判
不任意自白を証拠とすることができない根拠を黙秘権の保障に求める見解に対しては、黙秘権を侵害して得られた自白の証拠能力が否定されるのは黙秘権保障の内容そのものであり、黙秘権と自白法則を混同しているとの批判がある。
自白の虚偽排除説と派生物証の許容性
不任意自白の排除の根拠を虚偽のおそれによる誤判の防止に求める見解(虚偽排除説)によっても、不任意自白に基づき発見された物は、その関連性が不任意自白によらなければ証明されない場合には、証拠として許容されない。
自白の虚偽排除説と不任意自白の例示
不任意自白の排除の根拠を虚偽のおそれに求める見解(虚偽排除説)によれば、刑事訴訟法319条1項に挙げられた強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白は、任意にされたものでない疑いのある自白の例示とみることができる。
自白の違法排除説への批判
不任意自白の排除の根拠を違法な手続により得られた結果であることに求める見解に対しては、違法な手続により得られた自白の全てが任意にされたものでない疑いがあるわけではないから、それらが全て刑事訴訟法319条1項により排除されるとするのは規定の文言上無理があるとの批判がある。
自白の違法排除説と偽計による自白
不任意自白の排除の根拠を違法な手続により得られた結果であることに求める見解によれば、取調官が偽計を用いて得た供述は、手続の違法性を理由として排除されるのであり、供述者の主観的な心理状態に影響を及ぼした疑いがある場合に限って証拠能力が否定されるものではない。
共犯者の自白の補強証拠適格と本人自白
被告人が否認し共犯者だけが自白している場合は有罪とせず、被告人も自白している場合は共犯者の自白を補強証拠として有罪とする立場は、憲法38条3項の「本人の自白」に共犯者の自白が含まれるのは被告人が否認している場合に限られると考えることになる。
裁判官面前調書の相反供述と特信情況
裁判官の面前における供述を録取した書面は、供述者が公判期日において前の供述と異なる供述をしたときは、前の供述を信用すべき特別の情況の存否を問わず、証拠とすることができる(特信情況が要件とされるのは検察官面前調書の場合)。
通常業務過程で作成した書面の証拠能力
商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面は、作成者を証人として尋問してその真正に作成されたことを供述させなくても、323条2号により証拠とすることができる。
被告人供述を録取した第三者の検察官調書
共犯者の検察官に対する供述調書中に被告人がその共犯者に対してした供述が含まれているときは、321条1項2号及び324条1項(322条の準用)の要件を満たす限り、これを被告人の被告事件において証拠とすることができる。
自白等の任意性の調査の時期
刑訴法325条による書面に記載された供述が任意にされたものかどうかの調査は、通常は証拠調べに先立って行われるが、必ずしも証拠調べの前にされなければならないものではなく、証拠調べ後にその証明力を評価するに当たって調査しても差し支えない。
昭和54年10月16日最高裁第三小法廷刑集33巻6号633頁(公職選挙法違反)
違法収集証拠排除法則の法的根拠
違法に収集された証拠物の証拠能力については、刑事訴訟法に規定がないが、この問題は刑事訴訟法の解釈に委ねられている。
昭和53年9月7日最高裁第一小法廷刑集32巻6号1672頁(覚せい剤取締法違反、有印公文書偽造、同行使、道路交通法違反)
違法収集証拠排除法則の目的
違法収集証拠排除法則の目的には、将来における違法な捜査の抑制が含まれる。
昭和53年9月7日最高裁第一小法廷刑集32巻6号1672頁(覚せい剤取締法違反、有印公文書偽造、同行使、道路交通法違反)