条文・判例・学説を体系的に整理
動画サイト運営者のわいせつ媒体陳列罪
動画配信サイトの運営者が、わいせつな動画の投稿者を広く勧誘し、勧誘を受けた者が投稿して不特定多数の者が認識できる状態にさせたときは、運営者が自ら投稿していなくても、共同正犯の要件(共謀と共同の実行の意思)を満たす限り、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の共同正犯が成立し得る。
酔った被害者の脱衣と公然わいせつ罪
通行人の面前で、酔い潰れて同意しない意思を表明することが困難な状態の被害者の衣類を剥ぎ取って全裸にした行為は、不同意わいせつ罪にあたるとともに、公然とわいせつな行為にもあたり、公然わいせつ罪も成立する。
わいせつ物の借受けと対向犯の教唆
わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を頒布する罪は、頒布する側のみを処罰する対向犯であるから、頒布を受ける側(借り受けた者)の行為は、頒布罪の教唆犯にならない。
昭和43年12月24日最高裁第三小法廷刑集22巻13号1625頁(弁護士法違反、同教唆、恐喝、窃盗)
自動送信とわいせつ電磁的記録頒布
刑法175条1項後段の「頒布」とは、不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめることをいい、不特定の者への販売業として、客のダウンロード・申込みに応じてわいせつな動画データを送信してその者のコンピュータに記録・保存させる行為は、客が1人であっても、頒布にあたる。
平成26年11月25日最高裁第三小法廷刑集68巻9号1053頁(わいせつ電磁的記録等送信頒布,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件)
賭博常習者の非常習者による幇助の罪責
賭博の常習性は刑を加重する身分であり、常習者の賭博行為を常習性のない者が幇助した場合、刑法65条2項により、常習性のない者には通常の刑(単純賭博罪の幇助犯)が科される。
大正3年5月18日大審院連合部刑録20巻932頁(賭博)
わいせつ物頒布罪の故意と猥褻性の認識
わいせつ物頒布罪(刑法175条)の故意の成立には、問題となる記載の存在の認識とこれを頒布販売することの認識があれば足り、その文書が同条所定の猥褻性を具備するかどうかの認識までは必要でない。
昭和32年3月13日最高裁大法廷刑集11巻3号997頁(猥褻文書販売)
賭博罪の成立時期
賭博罪は、賭博行為をした時に成立し、賭博行為が開始されれば足り、勝敗が決し金品の授受がされることは要しない。
昭和23年7月8日最高裁第一小法廷刑集2巻8号822頁(常習賭博)
勝敗既知の賭けと詐欺賭博
あらかじめ勝敗の結果を知った上で、その結果を知らない者との間で金銭を賭けて利益を得る行為(詐欺賭博)は、勝つ機会が全くないのにあるかのように欺く詐欺罪に当たり、偶然の勝敗によって財物の得喪を争う賭博の実質を欠く。
昭和26年5月8日最高裁第三小法廷刑集5巻6号1004頁(詐欺未遂)
短期間の賭博営業と常習性
賭博の営業を長期間継続する意思のもとに多額の資金を投下して賭博遊技機を設置した遊技場の営業を開始し、摘発を受けるまでの数日間営業した場合にも、賭博を反覆累行する習癖の発現として賭博をしたと認められるときは、常習賭博罪が成立する。
昭和54年10月26日最高裁第二小法廷刑集33巻6号665頁(常習賭博)
賭博場開張図利罪と賭博者の集合の要否
賭博場開張図利罪は、参加者を特定の場所に集合させることなく、事務所の電話を利用して参加者から賭客の申込みを受けさせて賭博をさせた場合にも成立する。
昭和48年2月28日最高裁第二小法廷刑集27巻1号68頁(賭博場開帳図利幇助等)
わいせつ文書頒布罪と芸術的価値
わいせつな内容を含む書籍であっても文芸的・思想的価値があることをもって直ちにわいせつ文書頒布罪の成立が否定されるわけではなく、同罪の犯意の成立には問題となる記載の存在の認識とこれを頒布販売することの認識があれば足りるから、販売の目的が作品の価値を社会に主張することにあったとしても同罪は成立し得る。
昭和32年3月13日最高裁大法廷刑集11巻3号997頁(猥褻文書販売)
わいせつ電磁的記録等送信頒布罪
動画配信サイトにわいせつな動画のデータファイルをアップロードし、顧客のダウンロード操作に応じて顧客のパソコンに自動的に送信させ保存させた場合、わいせつ電磁的記録等送信頒布罪が成立する。
平成26年11月25日最高裁第三小法廷刑集68巻9号1053頁(わいせつ電磁的記録等送信頒布,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件)
相手方一名のわいせつ物頒布
わいせつ物を1名に対してのみ交付した場合でも、不特定人に対する交付であれば頒布に該当しうる。
平成26年11月25日最高裁第三小法廷刑集68巻9号1053頁(わいせつ電磁的記録等送信頒布,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件)
わいせつ物頒布罪と被頒布者の理解能力
わいせつ文書の頒布罪は被頒布者がその内容を理解できるかどうかにかかわらず成立する。
わいせつ物頒布罪の教唆と購入者
わいせつ物の販売業者に購入を申し込んで購入しただけの者には、購入が販売(頒布)に当然予想される関与行為であり、これを処罰する規定もないから、わいせつ物頒布罪の教唆犯は成立しない。
昭和43年12月24日最高裁第三小法廷刑集22巻13号1625頁(弁護士法違反、同教唆、恐喝、窃盗)
わいせつ物頒布と有償貸出し
わいせつな映像を記録したDVDを多数の顧客へ有償で貸し出す行為はわいせつ物頒布罪における頒布に該当する。
わいせつ物頒布と電子データ送信
わいせつな映像のデータを電子メールに添付して1名に送信した場合であっても、わいせつ物頒布罪が成立し得る。
平成26年11月25日最高裁第三小法廷刑集68巻9号1053頁(わいせつ電磁的記録等送信頒布,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件)
わいせつ物有償頒布目的所持罪の成立要件
わいせつ物有償頒布目的所持罪は有償で頒布する目的を要件とするため、無料で交付する目的で所持する場合には同罪は成立しない。
常習賭博の教唆と共犯の身分
正犯が単純賭博罪にとどまる場合でも、教唆者が賭博の常習者であるときは、刑法65条2項により、常習賭博罪の教唆犯が成立する。
公然わいせつ罪と現実の認識
不特定又は多数の者が認識し得る状態でわいせつな行為をすれば、現実に認識した者がいなくても公然わいせつ罪は成立する。
昭和32年5月22日最高裁第二小法廷刑集11巻5号1526頁(猥褻図画陳列等)