条文・判例・学説を体系的に整理
弁護活動の正当な範囲と違法性阻却
弁護人が被告人のためにした弁護活動であっても、それが名誉毀損罪の構成要件に該当する行為である場合に、弁護活動として正当な範囲を超えるときは、刑法35条による違法性の阻却は認められない。
名誉毀損と侮辱の事実摘示による区別
名誉毀損罪は、人の社会的評価を害するに足りる具体的事実の摘示がなければ成立しないが、侮辱罪は、事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱すれば成立する。
名誉毀損罪の被害者の特定
名誉毀損罪が成立するには、摘示された事実が特定の人又は団体の名誉を毀損するものであることが必要であり、ある市の住民全般について述べるような、誰のことであるかが特定されない漠然とした表示では、同罪は成立しない。
名誉毀損罪と摘示事実の真実性
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず名誉毀損罪の構成要件に該当し、摘示した事実が真実であっても、公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的で、真実であることの証明があったときでなければ、罰せられる。
名誉毀損罪の親告罪
名誉毀損罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない(親告罪)。
名誉毀損の処罰阻却説と違法性阻却
刑法230条の2を処罰阻却事由と解する見解に立っても、真実性の証明に失敗した場合に、刑法35条(正当行為)によって違法性が阻却される余地はあり得る。
処罰阻却事由説と調査の内容
刑法230条の2を処罰阻却事由と解する見解は、表現の違法性自体は肯定するから、いい加減な調査に基づく表現は結果的に真実であっても違法であるとする考え方と整合的である。
名誉毀損の真実性証明と違法性阻却説
刑法230条の2を違法性阻却事由と解する見解は、真実であることを証明可能な程度に表現内容の真実性が存在したことを違法性阻却の根拠とするものであり、真実性の証明の成否が犯罪の成否と無関係であることを根拠とするものではない。
法人に対する侮辱罪の成否
侮辱罪の保護法益を人の主観的名誉(名誉感情)とする見解からは、名誉感情を有しない法人に対する侮辱罪の成立を認めることはできない。
名誉毀損罪の公然性と伝播性の理論
事実摘示の相手方が特定かつ少数の者であっても、これを通じて不特定又は多数の者に伝播する可能性がある場合には、名誉毀損罪における公然性が認められる。
名誉毀損罪と侮辱罪の保護法益
名誉毀損罪の保護法益は人の外部的名誉(社会的評価)であり、侮辱罪の保護法益についても外部的名誉とする見解と人の主観的名誉(名誉感情)とする見解が対立している。
名誉毀損罪と侮辱罪の併存可能性
名誉毀損罪の保護法益を外部的名誉、侮辱罪の保護法益を名誉感情と解する見解からは、両罪は保護法益を異にするから、名誉毀損罪が成立する場合にも同時に侮辱罪が成立する可能性がある。
侮辱罪と公然性
侮辱罪の保護法益を名誉感情と解する見解に対しては、公然性の要件が必要であることを十分に説明できないとの批判がある。
侮辱罪の「事実を摘示しなくても」の意義
侮辱罪の保護法益を名誉感情と解し事実を摘示した場合にも侮辱罪が成立し得るとする見解からは、刑法231条の「事実を摘示しなくても」という文言は、事実の摘示の有無にかかわらず侮辱罪が成立し得るという趣旨で解釈される。
意識を喪失した終末期患者と侮辱罪
侮辱罪の保護法益を名誉感情と解する見解からは、意識を喪失した終末期の患者に対しては侮辱罪が成立しないことになる。
弁護活動と名誉毀損罪
弁護人が被告人の利益を擁護するためにした弁護活動であっても、それが名誉毀損罪の構成要件に該当する行為であれば、正当業務行為(刑法35条)又は公共の利害に関する事実(刑法230条の2)等の違法性阻却の要件を満たさない限り、名誉毀損罪が成立する。
昭和51年3月23日最高裁第一小法廷刑集30巻2号229頁(名誉毀損)
私人の私生活と公共の利害に関する事実
私人の私生活の行状であっても、その携わる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度等によっては、刑法230条の2第1項にいう「公共の利害に関する事実」に当たる場合がある。
昭和56年4月16日最高裁第一小法廷刑集35巻3号84頁(名誉毀損)
侮辱罪の教唆と刑法64条
侮辱罪(刑法231条)の法定刑には拘禁刑及び罰金が含まれ、拘留又は科料のみに処すべき罪に当たらないから、刑法64条の処罰制限は及ばず、事実を摘示せずに公然と人を侮辱することを教唆した者は、侮辱罪の教唆犯として処罰される。
名誉毀損罪の公然性
名誉毀損罪における「公然」とは、不特定または多数の者が認識しうる状態をいい、現に認識したことを要しない。
昭和36年10月13日最高裁第二小法廷刑集15巻9号1586頁(名誉毀損)
名誉毀損罪の構成要件
名誉毀損罪(刑法230条1項)は、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立し、その事実の有無にかかわらず処罰される。