条文・判例・学説を体系的に整理
中止犯の効果の一身専属性
中止未遂(刑法43条ただし書)は、中止行為を行った者についてのみ刑の必要的減免の効果を生じ、その成立は刑法65条1項の身分には当たらないから、共犯者の一人に中止犯が成立しても、中止行為を行っていない他の共犯者には効果が及ばない。
偽証罪の宣誓証人と共犯の身分
刑法65条にいう身分は、男女の性別、内外国人の別、親族の関係、公務員の資格のような関係のみに限らず、一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態を指称するから、偽証罪における「法律により宣誓した証人」も同条の身分に当たる。
昭和27年9月19日最高裁第二小法廷刑集6巻8号1083頁(恐喝未遂、横領)
刑法65条1項と教唆・幇助への適用
刑法65条1項は、共同正犯だけでなく教唆犯・幇助犯にも適用されるから、非公務員が公務員に収賄を教唆した場合にも同項が適用され、非公務員は収賄罪の教唆犯となる。
非身分者の堕胎教唆と共犯の科刑
医師でない者が、妊婦を教唆して堕胎の決意をさせる一方で、医師を教唆して妊婦を堕胎させた場合、医師でない者には、業務上堕胎罪(刑法214条)の刑ではなく、身分のない者として通常の刑である同意堕胎罪(刑法213条)の刑が科される。
極端従属性説の正犯成立要件
共犯を処罰するためには、正犯が構成要件該当性、違法性及び有責性のすべてを備える必要があるとする見解がある。
極端従属性説と責任なき正犯の背後者
共犯の成立に正犯の有責性まで要求する見解に対しては、背後者が他人に指示して構成要件に該当する行為を実行させたが、その実行者に責任阻却事由が認められる場合に、背後者に共犯の責任を問うことができなくなり不当であるとの批判がある。
責任のない正犯の背後者と間接正犯
正犯に責任阻却事由がある場合に背後者を処罰する方法として間接正犯を幅広く認める考え方があるが、刑事未成年者でも是非弁別能力があり意思が抑圧されていない者を利用した場合にまで間接正犯を認めることには無理がある。
昭和58年9月21日最高裁第一小法廷刑集37巻7号1070頁(窃盗)
違法の連帯性と責任の個別性
適法な行為を援助する行為を処罰の対象とするのは妥当でないから、共犯においては、違法は連帯的に作用するが、責任は個別的に作用すると解する見解がある。
制限従属性説の正犯成立要件
共犯を処罰するためには、正犯が構成要件該当性及び違法性を備えれば足り、有責性までは要しないとする見解がある。
共犯従属性と刑法61条の犯罪
教唆犯について刑法61条が「犯罪を実行させた」という文言を使っていることは、共犯の成立に正犯が犯罪(構成要件に該当する違法で有責な行為)を実行することを要求する見解の根拠として挙げられる。
違法身分・責任身分説と条文上の批判
刑法65条について真正身分犯と不真正身分犯の区別を重要とせず、1項が違法身分の連帯的作用を、2項が責任身分の個別的作用を定めたと解する見解に対しては、同条の文言(1項は「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為」、2項は「身分によって特に刑の軽重があるとき」)に反するとの批判がある。
刑法65条の真正・不真正身分犯区別説
刑法65条1項は真正身分犯について身分の連帯的作用を、同条2項は不真正身分犯について身分の個別的作用を定めた規定であると解するのが判例・通説である。
昭和32年11月19日最高裁第三小法廷刑集11巻12号3073頁(業務上横領)
横領共犯の刑と非業務者間の均衡
業務上横領罪の教唆犯が成立する場合に、刑法65条2項により単純横領罪の刑を科すのは、業務者ではない占有者が業務上横領に加功した場合(共犯が業務者でない占有者のとき)との刑の均衡を図るためである。
業務上横領罪と占有者の身分
刑法65条1項を真正身分犯、同条2項を不真正身分犯に関する規定と解しつつ、業務上の占有者でない者が業務上横領に加功した場合に業務上横領罪の共犯の成立を認める見解(判例と同じ結論)は、業務上横領罪を占有者の身分によって構成すべき真正身分犯と考えて同条1項を適用し、業務者の身分による刑の加重については同条2項により通常の横領罪(刑法252条1項)の刑を科す。
昭和32年11月19日最高裁第三小法廷刑集11巻12号3073頁(業務上横領)
共犯の処罰根拠
共犯の処罰根拠は、法益侵害やその危険を間接的に惹起したことにあるとする見解が有力である。
身分共犯の違法身分・責任身分説
「違法の連帯性、責任の個別性」の原則を強調する立場では、刑法65条1項は身分が違法性に関係する場合(違法身分)についての規定、同条2項は身分が責任に関係する場合(責任身分)についての規定であるとし、真正身分犯か不真正身分犯かによって1項と2項を振り分けるものではない。
身分共犯の成立・科刑区別説
刑法65条1項が「共犯とする」、同条2項が「通常の刑を科する」とそれぞれ規定していることに着目し、1項は真正身分犯・不真正身分犯を通じて共犯の成立についての規定、2項は不真正身分犯の科刑についての規定であるとする見解がある。
真正・不真正身分犯の規定
65条1項が身分により構成すべき犯罪を問題とし、2項が身分により刑の軽重がある犯罪を問題としていることに着目し、1項は真正身分犯についての規定、2項は不真正身分犯についての規定であるとする見解がある。
保護責任者不保護罪の身分と教唆
刑法65条1項を真正身分犯の、2項を不真正身分犯の規定とし、刑法218条の「遺棄」を場所的離隔を生じさせることと解する見解によれば、保護責任者不保護罪は真正身分犯であり、保護責任者でない者が保護責任者を唆して嬰児に必要な食事をさせなかった場合、65条1項により刑法218条の罪の教唆犯が成立する。
刑法65条1項と2項の関係
刑法65条1項は「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは身分のない者であっても共犯とする」と規定し、同条2項は「身分によって特に刑の軽重があるときは身分のない者には通常の刑を科する」と規定する。
昭和31年5月24日最高裁第一小法廷刑集10巻5号734頁(尊属殺人)