条文・判例・学説を体系的に整理
約束手形の金額変造前の署名者の責任
約束手形の金額が振出後に変造された場合には、変造前の署名者である振出人は、原文言(変造前の手形金額)に従って責任を負う。
為替手形の必要記載事項と支払人名称
為替手形には、支払を為すべき者(支払人)の名称を記載しなければならない。
為替手形の支払人の資格と銀行以外
為替手形の支払人は銀行に限られず、手形法は支払人の資格を制限していない(小切手の支払人が銀行に限られる点と異なる)。
自己宛為替手形
為替手形は、振出人の自己宛てで振り出すことができる。
手形保証の方式(手形又は補箋への署名)
手形保証は原則として手形又は補箋上に保証等の文言と保証人の署名を要するが、手形表面の単なる署名を保証とみなす特則があり、約束手形にも準用される。
法人の裏書における代表者の署名
裏書人が会社その他の法人である場合には、当該法人の代表機関が法人のためにすることを明らかにして自己の署名をすることを要し、会社名の記載と会社印・代表者印の押捺だけで代表者の自署又は記名捺印がない裏書は、法人の裏書としての効力を生じない。
昭和41年9月13日最高裁第三小法廷民集20巻7号1359頁(約束手形金請求)
他人名を自己表示に用いた手形振出責任
自己を表示する名称として他人の氏名を使用して約束手形を振り出した者は、その名義を用いた手形署名が自己自身の署名とみられるから、振出人として手形金の支払義務を負う。
昭和43年12月12日最高裁第一小法廷民集22巻13号2963頁(約束手形金請求)
白地手形の支払呈示と事後補充の遡及効
白地手形を満期に白地のまま支払のために呈示しても、裏書人に対する手形上の権利行使の条件が具備せず、後日白地を補充しても、その呈示が遡って有効になるものではない。
昭和41年10月13日最高裁第一小法廷民集20巻8号1632頁(約束手形金請求事件)
強迫による手形取消しと善意の所持人
強迫を理由とする手形行為の取消しの抗弁は、手形法上のいわゆる人的抗弁であり、善意の手形所持人に対抗することができない。
昭和26年10月19日最高裁第二小法廷民集5巻11号612頁(約束手形金請求)
原因債務の履行と手形金請求(人的抗弁)
手形振出しの原因関係上の債務と手形上の債務が併存する場合に、原因関係上の債務が履行されたときは、振出人は、受取人(直接の相手方)からの手形金請求を人的抗弁(手形法17条)として拒むことができる。
手形授受の原因債務の担保目的の推定
手形が原因関係たる債務の支払確保のために振り出された場合には、当事者間に特約その他別段の意思表示がなく、債務者自身が手形上の唯一の義務者であるときは、手形は担保を供与する趣旨で授受されたものと推定され、支払に代えてされたものと推定されるのではない。
昭和23年10月14日最高裁第一小法廷民集2巻11号376頁(貸金請求)
通称と裏書の連続
裏書の連続の有無は手形の外観から形式的に判断すべきであるから、約束手形の受取人欄の氏名と第一裏書人欄の署名の氏名とが異なる場合には、裏書人が受取人の通称を用いた同一人であっても、裏書の連続は認められない。
昭和29年6月8日最高裁第三小法廷民集8巻6号1029頁(約束手形金請求)
肩書付記載と裏書の連続
約束手形の受取人欄に会社名と支店長等の職名を付記した個人名が記載され、第一裏書人欄に当該個人名義の署名がある場合には、特段の事由のない限り、受取人の記載は当該個人を指称するものと解され、裏書の連続に欠けるところはない。
昭和30年9月30日最高裁第二小法廷民集9巻10号1513頁(譲受債務金請求)
小切手の支払委託と手形支払約束の単純性
小切手の支払委託も約束手形の支払約束も、単純なものでなければならず、条件を付すことはできない。
白地手形と白地小切手
約束手形が手形要件の一部を欠く場合は白地手形として有効になり得るが、小切手も小切手要件の一部を欠く場合は白地小切手として有効になり得る。
小切手の満期(一覧払)
小切手は一覧払のものであり、これに反する記載は記載しなかったものとみなされるため、約束手形のように、一覧後定期払や日附後定期払を満期として選択することはできない。
裏書の連続と権利行使
裏書の連続が欠ける約束手形の所持人も、裏書の連続が欠ける部分につき実質的な権利移転の事実により自己の権利を証明すれば、手形上の権利を行使することができる。
白地式裏書と権利推定
約束手形の最後の裏書が白地式裏書であり、それより前の裏書が連続している場合には、当該約束手形の所持人は権利者と推定される。
手形振出人の支払義務
約束手形の振出人は、適法な所持人に対して手形金を支払う手形法上の義務を負う。
隠れた取立委任裏書と人的抗弁の対抗
隠れた取立委任裏書において、手形上の権利は裏書人にあり被裏書人は権利行使の資格と権限を授与されるにすぎないとする見解によれば、被裏書人は手形上の権利者ではないから、手形債務者は、被裏書人に対する人的抗弁をもって被裏書人に対抗することができない。