条文・判例・学説を体系的に整理
独立した複数の営業・営業所と商号
個人商人は、数種の独立した営業を行い、又は数個の営業所を有する場合には、その各営業又は営業所につき別異の商号を有することができる。
名板貸人の責任(誤認の要否)
自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対して、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負うのであり、誤認したことが要件である。
商号の譲渡の対抗要件
商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り譲渡することができ、その譲渡は、登記をしなければ第三者に対抗することができない。
商号不続用の営業譲受人の債務引受広告
営業の譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用しない場合であっても、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人の債権者は、当該広告を見たか否かにかかわらず、その譲受人に対して弁済の請求をすることができる。
不実登記の効力
株式会社の代表取締役として選定されていない者について、故意又は過失によりその就任の登記をした株式会社は、その事項が不実であることを善意の第三者に対抗することができない。
商業登記の推定力
商業登記には、登記された事項が真実であるという法律上の推定力はない。
商業登記の消極的公示力
商法の規定によって登記すべき事項は、登記の後でなければ、善意の第三者に対抗することができないが、登記の後であっても、その登記があることを正当な事由によって知らなかった第三者に対しては対抗することができない。
商号変更の登記義務
個人商人(小商人に当たる者を除く)が商号を登記した場合において、その商号を変更したときは、変更の登記をしなければならない。
「新」を付した商号と続用
譲受人が、譲渡人の商号と会社の種類を異にし、かつ「新」の文字を付加した商号(例:「霞が関商事合同会社」から事業を譲り受けた会社の「新霞が関商事株式会社」)を使用するときは、譲渡人の商号を引き続き使用する場合に当たらず、譲受人は譲渡人の事業によって生じた債務を弁済する責任を負わない。
昭和38年3月1日最高裁第二小法廷民集17巻2号280頁
現物出資と商号続用
営業の現物出資を受けて設立された会社が現物出資をした商人の商号を引き続き使用する場合には、当該会社は当該商人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う。
昭和47年3月2日最高裁第一小法廷民集26巻2号183頁
ゴルフクラブ名称と商号
ゴルフクラブの名称がゴルフ場の事業主体を表示するものとして用いられている場合において、ゴルフ場の事業が譲渡され、譲受人がゴルフクラブの名称を引き続き使用しているときは、譲渡人の商号を譲受人が引き続き使用していなくとも、譲受人は譲渡人の事業によって生じた債務を弁済する責任を負いうる。
平成16年2月20日最高裁第二小法廷民集58巻2号367頁(ゴルフ場名称続用事件)
商号続用責任の趣旨
譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合に譲受人も譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負うとの商法の規定(商法17条1項、会社法22条1項)の趣旨は、債権者において、同一の営業主体による営業が継続しているものと信じたり、営業主体の変更があったけれども譲受人により譲渡人の債務の引受けがされたと信じたりすることを保護する点にある。
手形行為と名板貸
手形行為上自己の商号を使用することを許諾したにすぎない者は、自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾したものということはできない。
昭和42年6月6日最高裁判時487号56頁
名板貸と同種営業要件
商人が自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した場合に、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し責任を負うためには、特段の事情のない限り、商号使用の許諾を受けた者の営業がその許諾をした商人の営業と同種の営業であることを要する。
昭和43年6月13日最高裁第一小法廷民集22巻6号1171頁
名板貸と薬局開設許可
商人が営業としてする薬局の開設者として自己の商号を使用することを他人に許容し、当該他人が薬局開設の許可を申請した場合は、自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した場合に該当する。
昭和32年1月31日最高裁第一小法廷民集11巻1号161頁
名板貸と不法行為
商号使用の許諾を受けた者が交通事故その他の事実行為たる不法行為に起因して負担するに至った損害賠償債務は、自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した商人が責任を負う「当該取引によって生じた債務」に当たらない。
昭和52年12月23日最高裁第二小法廷民集31巻7号1570頁(示談金請求事件)
名板貸と重過失
商人が自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した場合において、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に重大な過失があるときは、当該商人はその者に対し当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負わない。
昭和41年1月27日最高裁第一小法廷民集20巻1号111頁(売掛代金請求)
複数商号の登記
個人商人は営業ごとに商号を選定することができるから、複数の営業を営む場合には複数の商号を登記することができる。
商号の譲渡
商人は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、商号を譲渡することができる。
商号譲渡の対抗要件
登記した商号の譲渡は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。