条文・判例・学説を体系的に整理
共有者間の費用立替えと事務管理
共有者の一人が、共有者各自の負担に帰すべき費用の全部を支払ったときは、他の共有者のための事務管理が成立し得る。
事務管理者の注意義務と緊急事務管理
管理者は、本人の利益に適合する方法によって事務管理をしなければならず(民法697条1項)、自己の財産に対するのと同一の注意で足りるのではなく、善良な管理者の注意が求められる(急迫の危害を免れさせるための緊急事務管理の場合に限り、悪意又は重大な過失がなければ損害賠償責任を負わない)。
本人の意思に反する事務管理の成否
管理者が他人の事務の管理を始めた時に、それが本人の意思に反することが明らかであったときは、事務管理は成立しない。
管理者の本人の意思に従う義務
管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
事務管理者の引渡金消費と利息
管理者は、本人に引き渡すべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。
事務管理における費用の前払請求の可否
事務管理において、管理者は、本人に対して費用の前払を請求することはできず、本人のために有益な費用を支出したときに、その償還を請求することができるにとどまる。
本人の意思に反する事務管理と費用償還
事務管理の開始後にその管理が本人の意思に反することが明らかになった場合、管理者は本人に対し既に支出した費用の償還を請求することができる。
事務管理の開始通知義務
事務管理の管理者は本人が既に知っている場合を除き、事務管理を始めたことを遅滞なく本人に通知しなければならない。
事務管理の継続義務
事務管理の管理者は本人又はその相続人若しくは法定代理人が管理をすることができるに至るまで事務管理を継続しなければならない。
事務管理の途中放置と損害賠償責任
事務管理者が事務管理の途中でこれを放置し本人に損害を生じさせた場合、管理者は管理継続義務(民法700条)に違反したとして損害賠償責任を負い、本人は管理者に対して損害賠償を請求することができる。
事務管理者の報告義務
事務管理の管理者は本人の請求があるときはいつでも事務管理の状況を報告しなければならない。
複数目的の事務管理と費用償還
事務管理者が本人のためだけでなく自己の利益のためにも事務管理をした場合であっても、本人のための管理部分については、管理者は本人に対して費用の償還を請求することができる。
事務管理者の報酬請求権
事務管理者は、本人に対して報酬を請求することはできない。
事務管理者の損害賠償請求権
事務管理者は、本人のために有益な費用を支出したときはその償還を請求できるが、事務管理のために過失なく損害を被ったとしても、その損害の賠償を請求することはできない。
事務管理者の有益債務と代弁済請求
義務なく他人のために事務の管理を始めた者は、本人のために有益な債務を負担した場合において、その債務が弁済期にあるときは、本人に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。
事務管理者の義務と報酬請求の関係
事務管理の管理者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって事務を管理しなければならず、事務管理には管理者の報酬請求を認める規定はない。
緊急事務管理の悪意・重過失と賠償責任
本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をした管理者は、これによって本人に損害を与えたときであっても、悪意又は重大な過失がなければ損害賠償の責任を負わない。
事務管理の有益債務の代弁済請求
事務管理によって管理者が本人のために有益な債務を負担した場合には、管理者は、自己に代わってその弁済をすることを本人に対して請求することができる。
事務管理の無権代理性と効果帰属
事務管理は管理者に代理権を与えるものではなく、管理者が本人の名でした法律行為の効果は、当然には本人に帰属しない(最判昭36.11.30)。
昭和36年11月30日最高裁第一小法廷民集15巻10号2629頁(所有権移転登記手続請求)
事務管理の善管注意義務と緊急時の例外
管理者は、本人の身体・名誉・財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をした場合には悪意又は重過失がなければ責任を負わないが(民法698条)、それ以外の場合には善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負う。