条文・判例・学説を体系的に整理
不動産質権の設定の対抗要件(登記)
不動産質権の設定は、現実の引渡しがあっても、登記をしなければ第三者に対抗することができない(不動産質権の対抗要件は、登記である)。
中間省略登記の合意と当事者全員の同意
不動産が順次譲渡された場合に、最初の譲渡人から最終の譲受人へ直接の所有権移転登記を請求するには、中間者の同意のみでは足りず、最初の譲渡人(登記名義人)の同意も必要である。
平成22年12月16日最高裁第一小法廷民集64巻8号2050頁(持分所有権移転登記手続,遺産確認,共有物分割請求本訴,持分所有権移転登記手続請求反訴事件)
無断の中間省略登記と中間者の抹消請求
中間者の同意を得ることなく元の所有者から現在の所有者への直接の所有権移転登記がされた場合において、中間者が現在の所有者から売買代金を受領していないときは、中間者は、所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
二重譲受人の中間省略登記抹消請求
不動産が二重に譲渡された場合に、一方の譲受人への中間省略登記がされたとしても、他方の譲受人は、その登記が実体的権利関係に合致している限り、当該登記の抹消を求めることはできない。
転抵当の主債務者への通知と対抗力
抵当権の処分(転抵当)は、主たる債務者に通知し、又は主たる債務者が承諾すれば、抵当権設定者への通知・承諾がなくても、主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができ、主たる債務者が通知を受け又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。
無断の登記と虚偽表示規定の類推適用
他人が所有者に無断で自己名義の登記を備え、第三者がこれを信頼して取引をしても、所有者がその登記の存在に積極的に関与し又はこれを知りながら放置するなど虚偽の外観の作出につき帰責性がない場合には、民法94条2項は類推適用されず、第三者は善意無過失であっても所有権を取得しない。
平成18年2月23日最高裁第一小法廷民集60巻2号546頁(所有権移転登記抹消登記手続請求事件)
登記なき二重譲渡の対抗関係
不動産の二重譲渡において、いずれの買主も所有権移転登記を備えていないときは、各買主は互いに相手方に対して所有権の取得を対抗することができない。
売主死亡後の相続人と買主の対抗関係
売主が不動産を売却した後、所有権移転登記がされないまま死亡した場合、売主の唯一の相続人は、売主の地位を包括的に承継した当事者と同一の地位にあるため、買主に対する関係で民法177条の「第三者」に当たらず、買主は、登記なくして相続人に所有権の取得を対抗することができる。
昭和33年10月14日最高裁第三小法廷民集12巻14号3111頁(家屋収去土地明渡請求)
立木売買の解除と明認方法による公示
立木のみを売却した売買契約が解除されたときは、売主は、立木について明認方法を施すことにより、立木の所有権の復帰を公示することができる。
昭和36年5月4日最高裁第一小法廷民集15巻5号1253頁(立木所有権確認等請求)
明認方法の消失と対抗力
立木に施された明認方法が、第三者が利害関係を取得する当時に消失していたときは、明認方法があるものとして当該第三者に対抗することはできない。
昭和36年5月4日最高裁第一小法廷民集15巻5号1253頁(立木所有権確認等請求)
土地の登記による立木所有権の対抗
土地とその地上の立木を売却して買主が土地の所有権移転登記を備えた場合、その後に売主が立木のみを別の者に売却し、その者が立木について明認方法を施しても、先の買主は、立木の所有権の取得を後の買主に対抗することができる。
昭和35年3月1日最高裁第三小法廷民集14巻3号307頁(山林所有権確認等請求)
立木所有権の留保と土地譲渡後の明認
立木の所有権を留保して土地を売却した売主が、その後に買主から土地及び立木を買い受けた第三者に対して立木の所有権の留保を対抗するには、立木について明認方法を施す必要がある。
昭和35年3月1日最高裁第三小法廷民集14巻3号307頁(山林所有権確認等請求)
共有持分の放棄と登記(対抗要件)
共有者の一人が持分を放棄したときは、その持分は他の共有者に帰属するが、その旨の登記をしなければ、放棄した共有者の持分を差し押さえた債権者などの第三者に対抗することができない。
中間省略登記と真正な登記名義の回復
不動産の所有権が元の所有者から中間者、現在の所有者へと順次移転したのに登記名義が元の所有者にあるとき、現在の所有者は、登記名義人及び中間者の同意がない限り、登記名義人に対し直接自己に移転登記すべき旨を請求することは許されず、真正な登記名義の回復を原因とする移転登記手続を請求することも許されない。
平成22年12月16日最高裁第一小法廷民集64巻8号2050頁(持分所有権移転登記手続,遺産確認,共有物分割請求本訴,持分所有権移転登記手続請求反訴事件)
売主の買主に対する登記引取請求
自己の所有する不動産を他人に売却したにもかかわらず、買主が所有権移転登記手続に協力しないときは、売主は買主に対し、その所有権移転登記手続を請求することができる(登記引取請求権)。
昭和36年11月24日最高裁第二小法廷民集15巻10号2573頁(所有権移転登記抹消登記手続等請求)
順次売却の双方無効と抹消登記請求
不動産が順次売却されてそれぞれ所有権移転登記がされたが、いずれの売買契約も無効であるときは、中間者は、転得者に対し、中間者から転得者への所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
地上権の時効完成後の第三者と登記
地上権を時効取得した者は、時効完成後にその目的土地を取得してその旨の登記をした第三者に対し、登記をしなければ地上権の取得を対抗することができない。
昭和33年8月28日最高裁第一小法廷民集12巻12号1936頁(土地明渡請求)
要役地の譲渡と地役権の移転の対抗
承役地について地役権設定登記がされている場合において、要役地が譲渡されたときは、譲受人は、要役地の所有権移転登記をすれば、地役権の移転を第三者に対抗することができる。
一般先取特権と登記された抵当権の優劣
一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができるが、登記をした第三者(登記された抵当権者を含む)に対しては対抗できず、登記のない一般先取特権は登記された抵当権に優先しない。
抵当権者の同意登記と賃貸借の対抗力
抵当権者の同意による対抗力の特則(民法387条)は、登記をした賃貸借に関するものであり、引渡しにより対抗要件を具備したにとどまる建物賃貸借については、抵当権者が同意しても、賃借人は買受人に賃借権の設定を対抗することができない。