条文・判例・学説を体系的に整理
錯誤の重要性の判断基準
錯誤を理由とする意思表示の取消しの可否について、錯誤の重要性は、表意者の主観的基準ではなく、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして判断される(民法95条1項)。
重大な過失による錯誤取消しの制限
錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合、表意者は、相手方が表意者に錯誤があることを知り若しくは重大な過失によって知らなかったとき、又は相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときを除いて、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができない(民法95条3項)。
錯誤取消しと善意無過失の第三者
錯誤を理由として意思表示が取り消された場合、表意者は、その取消し前に利害関係を有するに至った善意無過失の第三者に、その取消しを対抗することができない。
到達の妨害とみなされる到達時
相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされる。
債権譲渡通知と公示による方法
債権の譲渡人が債務者の所在を知ることができないときは、債権譲渡の通知(民法467条1項)を、公示による意思表示の方法(同法98条)によってすることができる。
被保佐人の意思表示の受領能力
意思表示の相手方が意思表示を受けた時に被保佐人であったとしても、受領能力の制限は意思能力を有しない者、未成年者及び成年被後見人に限られるから、表意者は、その意思表示をもって相手方に対抗することができる。
意思表示発信後の意思能力喪失と効力
意思表示は、表意者が通知を発した後に意思能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
隔地者に対する意思表示の効力発生時期
意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
意思表示の受領能力
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができないが、その法定代理人がその意思表示を知った後はこの限りでない。
意思表示の到達と受取拒否
契約を解除する旨の通知書を何度も発送したが相手方が正当な理由なくその受取を拒んだ場合、解除の意思表示は到達したものとみなされる。
昭和36年4月20日最高裁第一小法廷民集15巻4号774頁(建物収去土地明渡請求)
電子メールの不到達と意思表示
契約を解除する旨の通知を電子メールで発信したが、通信システムの不具合によりその通知が相手方に到達しなかった場合、解除の意思表示はその効力を生じない。
発信後の表意者の死亡
契約を解除する旨の通知書を発送した後に表意者が死亡し、その後通知書が相手方のもとに到達した場合、解除の意思表示はその効力を妨げられない。
公示による意思表示
相手方の所在を知らないことについて表意者に過失があった場合、公示の方法による意思表示は、到達の効力を生じない(民法98条3項ただし書)。
未成年者への意思表示と法定代理人
意思表示の相手方が未成年者である場合、その法定代理人がその意思表示を知るに至ったときは、表意者はその意思表示をもって相手方に対抗することができる。
意思表示の到達と受領拒否
特定の意思表示が記載された内容証明郵便が受取人不在のために配達できず留置期間の経過により差出人に還付された場合であっても、受取人がその内容を十分に推知することができ受領も困難でなかったときは、当該意思表示は受取人に到達したものと認められる。
平成10年6月11日最高裁第一小法廷民集52巻4号1034頁(遺留分減殺、土地建物所有権確認)
意思表示の到達主義と発信後の事情
意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生じ、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
意思表示発信後の行為能力喪失
意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けても原則として効力を妨げられないが、申込みには民法526条の特則がある。
契約解除と行為能力喪失
契約解除の意思表示は、相手方に到達した時にその効力を生じ、発信後に表意者が行為能力を喪失してもその効力を妨げられない。
意思表示の受領能力
意思表示の相手方が受領時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示を相手方に対抗できないが、相手方の法定代理人又は意思能力を回復し若しくは行為能力者となった相手方がその意思表示を知った後は対抗できる。
申込みの発信後の行為能力喪失
申込者が申込みの通知を発した後に行為能力の制限を受けた場合であっても申込みの効力は原則として妨げられないが、相手方が承諾の通知を発するまでにその事実を知ったときは、その申込みは効力を有しない。