条文・判例・学説を体系的に整理
収用裁決無効の土地所有権確認訴訟類型
土地収用法に基づく権利取得裁決の無効を前提として従前の土地所有者が起業者を被告として提起する土地所有権の確認の訴えは、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」(形式的当事者訴訟)ではない。
職務命令の義務不存在確認と当事者訴訟
公立学校の教職員が提起する、校長の職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えは、当該職務命令の違反を理由とする行政処分以外の処遇上の不利益の予防を目的とする場合には、行政事件訴訟法4条後段の「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」(公法上の当事者訴訟)に当たる。
平成24年2月9日最高裁第一小法廷民集66巻2号183頁(国歌斉唱義務不存在確認等請求事件)
在外国民の選挙権行使確認の訴訟類型
在外国民が提起する、衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙において選挙権を行使する権利を有することの確認を求める訴えは、公法上の当事者訴訟のうち公法上の法律関係に関する確認の訴えであり、民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)ではない。
平成17年9月14日最高裁大法廷民集59巻7号2087頁(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件)
行政事件訴訟法4条の当事者訴訟
行政事件訴訟法4条は、当事者訴訟として「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」と「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」の二つの類型を規定している。
形式的当事者訴訟と裁判所の通知
形式的当事者訴訟が提起された場合に、当該処分又は裁決をした行政庁が当該訴訟の係属を把握できるようにするための仕組みとしては、行政事件訴訟法39条が裁判所から当該行政庁に対して訴訟が提起された旨を通知する制度を定めており、被告である国又は公共団体に対して訴訟の告知を義務付ける規定はない。
金銭給付を求める当事者訴訟の判決効力
国民が国又は公共団体を被告として金銭の支払を求める訴訟について、当該訴訟が実質的当事者訴訟である場合と民事訴訟である場合とでは、判決の既判力が第三者一般に及ばない点では共通するが、実質的当事者訴訟である場合には、判決の内容によっては行政事件訴訟法41条1項の準用する同法33条1項に基づき関係行政庁に対する拘束力を有することとなる点で、民事訴訟である場合と異なる。
土地収用と形式的当事者訴訟
土地収用法に基づく収用裁決により土地が収用された場合に、起業者が当該収用裁決において定められた損失補償額が過大であるとして、同法の規定に基づき当該土地の所有者を被告として提起する訴訟が形式的当事者訴訟に当たる。
義務不存在確認と当事者訴訟
公務員が懲戒処分の予防を目的として職務命令に基づく公的義務の不存在の確認を求める訴えは、実質的に懲戒処分の差止めの訴えを引き直したものと位置付けられ、公法上の法律関係に関する確認の訴え(実質的当事者訴訟)には当たらない。
平成24年2月9日最高裁第一小法廷民集66巻2号183頁(国歌斉唱義務不存在確認等請求事件)
医薬品郵便等販売の地位確認訴訟
郵便等販売をすることができる権利(地位)を有することの確認を求める訴えは、行政事件訴訟法第4条後段の当事者訴訟として適法に提起することができる。
平成25年1月11日最高裁第二小法廷民集67巻1号1頁(医薬品ネット販売事件)
職務命令違反と公法上の確認訴訟
公立学校教職員が職務命令に基づく義務の不存在確認を求める訴訟は、懲戒処分ではなく行政処分以外の処遇上の不利益の予防を目的とする場合、行政事件訴訟法4条後段の公法上の法律関係に関する確認の訴えとして位置付けられる。
平成24年2月9日最高裁第一小法廷民集66巻2号183頁(国歌斉唱義務不存在確認等請求事件)
当事者訴訟と執行停止
公権力の行使に関わらない公法上の法律関係に関する確認の訴えについては、執行停止に関する行政事件訴訟法の規定は準用されないから、執行停止の申立てをすることは不適法である。
選挙権行使制限の違法確認訴訟の適法性
改正後の公職選挙法が在外国民に衆議院小選挙区選出議員及び参議院選挙区選出議員の選挙における選挙権の行使を認めていない点において違法であることの確認を求める訴えは、より適切な訴えによって目的を達成することができるため確認の利益を欠き不適法である。
平成17年9月14日最高裁大法廷民集59巻7号2087頁(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件)
過去の法律関係の確認の利益
改正前の公職選挙法が在外国民に選挙権の行使を認めていなかった点の違法確認を求める訴えは、過去の法律関係の確認を求めるものであり、確認の利益が認められず不適法である。
平成17年9月14日最高裁大法廷民集59巻7号2087頁(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件)
立法不作為の違法確認と法律上の争訟
改正後の公職選挙法が在外国民に選挙権の行使を認めていないことが違法であることの確認を求める訴えは、抽象的に立法不作為の違法確認を求めるもので法律上の争訟に当たらないとされたのではなく、他により適切な訴えによって目的を達することができるとして確認の利益を欠き不適法とされた。
平成17年9月14日最高裁大法廷民集59巻7号2087頁(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件)
公法上の確認訴訟の確認の利益
職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えは、懲戒処分が反復継続的にされる危険や処遇上の不利益が累積的に拡大する危険がある場合には、行政処分以外の処遇上の不利益の予防を目的とする公法上の法律関係に関する確認の訴えとして確認の利益がある。
平成24年2月9日最高裁第一小法廷民集66巻2号183頁(国歌斉唱義務不存在確認等請求事件)
当事者訴訟と仮処分禁止
行政事件訴訟法には当事者訴訟について同法44条の規定の適用を排除する定めはない。
収用の補償訴訟の形式的当事者訴訟性
土地収用法に基づく収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴えは、法令の規定により法律関係の当事者の一方を被告とする訴訟であり、行政事件訴訟法4条前段の当事者訴訟(形式的当事者訴訟)に当たる。
公法上の法律関係に関する確認訴訟
行政事件訴訟法第4条の「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」には、国籍の確認を求める訴訟が含まれる。
平成20年6月4日最高裁大法廷民集62巻6号1367頁(国籍法違憲判決)
薬局許可の不要地位確認の公法訴訟性
薬局の開設を登録制から許可制に改めた法改正が憲法に違反するとして、旧法に基づく登録をして薬局を開設していた者が、国を被告として新法に基づく許可を受けなくても薬局の開設ができる権利があることの確認を求める訴訟は、公法上の法律関係に関する確認の訴えであり、行政事件訴訟法4条後段の当事者訴訟に当たる。
処分無効を前提とする所有権確認の争点訴訟
収用裁決の無効を前提として土地所有者が起業者を被告として提起する所有権確認訴訟は、私法上の法律関係に関する訴訟(争点訴訟、行政事件訴訟法45条)であり、公法上の法律関係に関する訴訟(4条後段)ではない。