条文・判例・学説を体系的に整理
対等な行政機関間の権限争議の裁定
対等な行政機関間で権限について疑義が生じたときは、上級行政機関がこれを決することになるところ、主任の大臣の間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が閣議にかけて、これを裁定する。
上級行政機関の指揮監督権と代執行
上級行政機関は下級行政機関に対する指揮監督権を有するが、法律の特別の授権がない場合には、下級行政機関の権限を当該下級行政機関に代わって自ら行使することはできない。
権限の委任・専決と指揮監督関係
専決が行われても、専決を任された補助職員等に法令上の権限が委譲されるわけではなく、内部的に権限の行使がゆだねられるにとどまるから、権限を有する者の指揮監督関係(補助職員の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務)は失われない。
平成3年12月20日最高裁第二小法廷民集45巻9号1455頁(違法支出金補填事件)
租税法律関係における信義則の適用要件
租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係において信義則の法理の適用が認められるかどうかの判断に当たっては、納税者が税務官庁の表示した公的見解を信頼して行動した後にその表示に反する課税処分が行われたため経済的不利益を受けることになったかどうかおよびその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者に帰責事由がないかどうかという点の考慮が不可欠である。
昭和62年10月30日最高裁第三小法廷集民152号93頁(相続税更正処分等取消、所得税更正処分等取消)
施策変更と信頼保護
地方公共団体が一定内容の継続的な施策を決定し特定の者に対し同施策に適合する特定内容の活動を促す個別的具体的な勧告ないし勧誘をした場合、その後の施策変更により当該特定の者に看過し得ない程度の積極的損害が発生したときは、代償的措置を講ずることなく施策を変更することはそれがやむを得ない客観的事情によるのでない限り当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯びる。
昭和56年1月27日最高裁第三小法廷民集35巻1号35頁(損害賠償)
違法な事務処理と消滅時効の援用
普通地方公共団体に対する債権について消滅時効の主張が信義則に反し許されない場合は極めて限定されるべきであるが、違法な通達に基づき支給を打ち切るなど判示の事情の下では、地方公共団体が未支給の健康管理手当の支給義務を免れるために消滅時効を主張することは信義則に反し許されない。
平成19年2月6日最高裁第三小法廷民集61巻1号122頁(在ブラジル被爆者健康管理手当等請求事件)
租税法規に適合する課税処分と信義則
租税法規に適合する課税処分を信義則の適用により違法なものとして取り消すには、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお課税を免れさせなければ正義に反するといえるような特別の事情が必要である。
昭和62年10月30日最高裁第三小法廷集民152号93頁(相続税更正処分等取消、所得税更正処分等取消)
税務官庁の公的見解と信頼保護の公平性
信義則の適用の是非の判断に当たっては、少なくとも、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したか、納税者の信頼に責めに帰すべき事由がないかを考慮することが不可欠であり、このとき犠牲にされる租税法規適用の要請は納税者間の平等・公平である。
昭和62年10月30日最高裁第三小法廷集民152号93頁(相続税更正処分等取消、所得税更正処分等取消)
地方公共団体の時効援用と信義則
普通地方公共団体が、既に具体的な金銭債権として発生している国民の重要な権利に関し、法令に違反してその行使を積極的に妨げるような一方的かつ統一的な取扱いをし、その行使を著しく困難にさせた場合、権利行使を合理的に期待できる事情があったなどの特段の事情のない限り、当該普通地方公共団体が当該権利の消滅時効を主張することは、信義則に反し許されない。
平成19年2月6日最高裁第三小法廷民集61巻1号122頁(在ブラジル被爆者健康管理手当等請求事件)
自治体債権の時効と住民の平等取扱い
地方自治法236条2項が時効の援用を不要とするのは適正・画一的処理と平等的取扱いに資するためであるが、行政が違法に権利行使を積極的に妨げて時効にかからせた極めて例外的な場合に時効主張を信義則で排斥しても、その理念に反しない。
平成19年2月6日最高裁第三小法廷民集61巻1号122頁(在ブラジル被爆者健康管理手当等請求事件)
補助金交付の法律の根拠の要否
法律による行政の原理の下においても、国が補助金の交付を行う場合に、常に法律によってその根拠を定めなければならないものではなく、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律は、交付の根拠を定めるものではなく予算の執行の適正化を図るものである。
行政内部規則の法律の根拠の不要
行政機関が定立する定めであっても、国民の権利義務に直接関係しない行政規則は、行政機関が法律の根拠なくして定立することができる。
公権力行使への不動産対抗要件の適用
民法177条は私人間の法律関係を規律する規定であるが、国の滞納処分としての差押えなど、公権力の行使や公の行政活動についても適用される場合がある。
昭和35年3月31日最高裁第一小法廷民集14巻4号663頁(公売処分無効確認並びに所有権取得登記の抹消登記手続請求)
行政法上の慣習法の成立可能性
行政は法律に従って行われるのが原則であるが、行政上の法律関係においても、成立する余地は少ないものの慣習法の適用が排除されるわけではない。
情報公開法の目的と行政の説明責任
行政が自らの活動を国民に説明する責務(説明責任)は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律1条の目的規定で明文により掲げられている。
行政権の著しい濫用と処分の違法性
国又は地方公共団体の行為も、行政権の濫用を理由として違法と認定されることがあり、個室付浴場の営業阻止を目的とした児童遊園設置認可処分は行政権の著しい濫用によるものとして違法とされた。
昭和53年5月26日最高裁第二小法廷民集32巻3号689頁(損害賠償)
租税法律関係と信義則の適用要件
信義則の法理は行政上の法律関係にも適用される場合があるが、租税法律関係においては、納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情がない限り、信頼保護の要請は劣後する。
昭和62年10月30日最高裁第三小法廷集民152号93頁(相続税更正処分等取消、所得税更正処分等取消)
公営住宅の使用関係と信頼関係の法理
公営住宅の事業主体は入居者を決定するについて入居者を選択する自由を有しないが、使用関係が設定されたのちは両者の間に信頼関係を基礎とする法律関係が存するから、公営住宅の使用関係には賃貸借契約関係における信頼関係の法理の適用がある。
昭和59年12月13日最高裁第一小法廷民集38巻12号1411頁(建物明渡等)
行政活動による権利制限と法律の根拠
行政活動により国民の権利を侵害し又は自由を制限するには、行政機関の任務等を定める組織規範のみでは足りず、作用法上の根拠(具体的な要件・効果を定めた法律の規定)が必要とされる(侵害留保の原則)。
租税減免と法律の根拠
法律に定められた租税を行政機関が減免する措置をとるためには、法律の根拠が必要である。