条文・判例・学説を体系的に整理
労働組合の政治支援資金徴収の強制
労働組合が組織として支持政党又はいわゆる統一候補を決定し、その選挙運動を推進すること自体は自由であるが、組合員に対してこれへの協力を強制することは許されず、その費用の負担についても同様であるから、組合出身の立候補者の選挙運動を支援する目的でその所属政党に寄付するための資金を組合員から強制的に徴収することは許されない。
昭和50年11月28日最高裁第三小法廷民集29巻10号1698頁(組合費請求)
労働組合の統制権の根拠と範囲
最大判昭和43年12月4日は、憲法28条による労働者の団結権保障の効果として、労働組合は、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内において、その組合員に対する統制権を有するとした。
昭和43年12月4日最高裁大法廷刑集22巻13号1425頁(公職選挙法違反)
地方公務員の争議行為禁止の限定解釈
最大判昭和44年4月2日は、地方公務員法が地方公務員の争議行為を一般的に禁止し、あおり行為等を一律に処罰すると文字どおりに解するならば、必要やむをえない限度をこえて争議行為を禁止し刑罰の対象とするものとして違憲の疑いを免れないから、憲法の趣旨と調和しうるよう合理的に限定して解釈すべきであるとし、職務の性質・内容を具体的に検討せず一律に規制することには問題があるとした。
昭和44年4月2日最高裁大法廷刑集23巻5号305頁(地方公務員法違反)
公務員の勤務条件決定と現業への妥当
最大判昭和52年5月4日は、非現業の国家公務員の勤務条件は、憲法上、国会において法律、予算の形で決定すべきものとされており、団体交渉権も争議権も憲法上当然に保障されるものではないとし、この理は、公労法の適用を受ける五現業及び三公社の職員についても、直ちに又は基本的に妥当するとした。
昭和52年5月4日最高裁大法廷刑集31巻3号182頁(郵便法違反幇助、建造物侵入、公務執行妨害)
労働基本権の自由権的側面
憲法28条の労働基本権は、社会権的性質を有する権利であるが、国家からの干渉を排除する自由権としての側面も有し、正当な団体行動に刑事免責が認められること(労働組合法1条2項)はその現れである。
昭和41年10月26日最高裁大法廷刑集20巻8号901頁(郵便法違反教唆)
労働基本権の私人間効力と直接適用
労働基本権(憲法28条)は、国家との関係のみならず使用者対労働者の関係においても直接に効力を有し、正当な争議行為の民事免責(労働組合法8条)は、この直接的効力を前提とする。
昭和41年10月26日最高裁大法廷刑集20巻8号901頁(郵便法違反教唆)
争議行為あおり罪の限定解釈の否定
最高裁は、国家公務員法の争議行為のあおり行為等の罪について、違法性の強い争議行為を違法性の強い又は社会的許容性のない行為によりあおるなどした場合に限って刑事制裁を科す趣旨と解することは、刑事制裁を科し得る場合と科し得ない場合との限界が明確性を欠くこととなり、このように不明確な限定解釈はかえって犯罪構成要件の保障的機能を失わせ、その明確性を要請する憲法31条に違反する疑いすら存するなどの理由から、是認することができないとした。
昭和48年4月25日最高裁大法廷刑集27巻4号547頁(国家公務員法違反)
正当な争議行為の民事免責と立法措置
憲法28条の労働基本権の保障により、正当な争議行為によって使用者に損害を与えた勤労者は、別途の立法措置によらなくても民事上の損害賠償責任を免れ、労働組合法8条はこれを確認するものである。
政治目的のストライキと労働基本権
憲法28条は、勤労者に対し経済的地位の向上のための手段として争議行為等を保障するものであり、専ら自衛隊の海外派遣に反対する目的でするストライキのように、政治的主張を貫徹するための争議行為は、同条による保障の対象とならない(目的を問わず広く保障するものではない)。
昭和48年4月25日最高裁大法廷刑集27巻4号547頁(国家公務員法違反)
三井倉庫事件とユニオン・ショップ協定
ユニオン・ショップ協定において使用者が同協定を締結した組合以外の他の労働組合に加入している者を解雇する義務を負うと定めることは、憲法28条が保障する労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害するため許されない。
平成元年12月14日最高裁第一小法廷民集43巻12号2051頁(解雇無効確認等)
労働基本権の社会権的性格と積極的措置
労働基本権の社会権的性格から、国は労働基本権の保障を確実にするため積極的な措置を採るべきであり、労働組合法は不当労働行為の救済のため労働委員会を設置している。
争議行為の民事免責と契約による排除
正当な争議行為に対する民事免責(労働組合法8条)は、憲法28条の労働基本権の保障に基づくものであり、使用者と労働者の間の契約により排除することはできない。
勤労者の団結権の保障
憲法28条は勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利を保障する。
自衛官・警察官の団結権の制限
自衛隊員は勤務条件等に関し国の利益を代表する者と交渉するための組合その他の団体を、警察職員は当局と交渉する団体を、それぞれ結成し又はこれに加入することを法律で禁止されており、団体交渉権・団体行動権のみならず団結権も認められていない。
公務員の労働基本権と代償措置
全農林警職法事件判決は、憲法28条の労働基本権の保障は公務員にも及ぶとした上で、公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみ労働基本権に必要やむをえない限度の制限を加えることには十分合理的な理由があるとし、さらに制約に見合う代償措置として人事院等が設けられていることを挙げて公務員の争議行為の禁止を合憲としたものであり、職務の公共性を考慮すべきでないとしたものではない。
昭和48年4月25日最高裁大法廷刑集27巻4号547頁(国家公務員法違反)
労働基本権の保障と国の義務
憲法28条は勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利を保障しており、労働基本権には、国がこれをむやみに制約する立法等をしてはならないという自由権としての側面と、国が立法等によりこれを保護する措置を講ずべきであるという社会権としての側面がある。
昭和41年10月26日最高裁大法廷刑集20巻8号901頁(郵便法違反教唆)
全農林警職法事件判決の意義
全農林警職法事件判決(最大判昭和48年4月25日)は、公務員の地位の特殊性と職務の公共性を根拠に、担当する職務内容の別なく公務員の争議行為を一律に禁止することを合憲とし、以後の最高裁判例もこの立場を維持している。
昭和48年4月25日最高裁大法廷刑集27巻4号547頁(国家公務員法違反)
全逓東京中郵事件判決と限定解釈
全逓東京中郵事件判決(最大判昭和41年10月26日)は、公共企業体等の職員の争議行為にも労働組合法1条2項の適用があり、政治的目的のために行われた場合、暴力を伴う場合、社会の通念に照らして不当に長期に及び国民生活に重大な障害をもたらす場合などを除き刑事制裁の対象とならないとしたが、この判断は全逓名古屋中郵事件判決(最大判昭和52年5月4日)により変更された。
昭和52年5月4日最高裁大法廷刑集31巻3号182頁(郵便法違反幇助、建造物侵入、公務執行妨害)
公務員の争議行為と判例の立場
公務員の争議行為の一律禁止は、国民生活全体の利益を維持増進する必要との調和の見地から合理性が認められ、憲法上許されるとするのが判例の立場である。
昭和48年4月25日最高裁大法廷刑集27巻4号547頁(国家公務員法違反)
労働組合の除名と司法審査
労働組合は、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内においてのみ組合員に対する統制権を有し、その限界を超える統制処分は違法となるから、統制権に基づく除名処分についても司法審査が及ぶ。
昭和43年12月4日最高裁大法廷刑集22巻13号1425頁(公職選挙法違反)