条文・判例・学説を体系的に整理
国外の幇助と国内の正犯行為の国内犯性
日本国外で幇助行為をした者であっても、正犯が日本国内で実行行為をした場合には、刑法1条1項の「日本国内において罪を犯した」者に当たり、刑法が適用される。
平成6年12月9日最高裁第一小法廷刑集48巻8号576頁(覚せい剤取締法違反、同幇助、関税法違反、同幇助)
遡及処罰の禁止と刑の変更
行為時に適法であった行為を事後の法律で遡って処罰したり、事後に重く変更された法定刑で処罰したりすることは許されないが、事後に法定刑が軽く変更された場合に変更後の軽い法定刑で処罰することは許される。
日常的意味を超える刑罰法規の拡張解釈
判例の立場によれば、刑罰法規について、法律の文言上可能な範囲で、その法規の趣旨を考慮して、日常的意味よりも拡張して解釈することは許され、過失往来危険罪(刑法129条)にいう「汽車」にはガソリンカー(蒸気機関車の代用であるガソリン動力の鉄道車両)も含まれる(大判昭15.8.22)。
昭和15年8月22日大審院刑集19巻540頁(業務上過失致死傷、業務上過失列車転覆破壊)
外国人被害者の国外犯への刑法適用
日本国外で日本国民以外の者(外国人)に対して殺人罪を犯した日本国民以外の者には、行為も結果も国外で生じた場合、刑法3条の2も1条も適用されず、刑法は適用されない。
刑法の場所的適用の遍在説
犯罪の行為又は結果(危険)の一部が日本国内で生じた場合には、日本国内で罪を犯したものとして、刑法1条1項により刑法が適用される(遍在説)。
国民以外の者の国外犯
日本国外において日本国民に対して殺人罪を犯した日本国民以外の者には刑法が適用される。
猶予期間経過後の判決と執行猶予
刑の全部の執行猶予の期間内に犯した罪についてその期間内に公訴が提起され、猶予期間の経過後に判決を受ける場合、前の刑の言渡しは効力継続期間中なお効力を有するが、25条の適用については効力を失っているものとみなされるから、拘禁刑3年、5年間の刑の全部の執行猶予(保護観察付き)の判決を宣告することができる。
全部執行猶予期間経過と効力継続の例外
刑の全部の執行猶予を取り消されずに猶予期間を経過すると原則として刑の言渡しは効力を失うが、期間内に更に犯した罰金以上の罪について公訴が提起されている場合は刑法27条2項の効力継続期間がある。
継続犯継続中の法定刑加重と新法適用
監禁罪のような継続犯において、犯罪行為の継続中に法定刑を重くする改正法が施行された場合は、施行後も犯罪行為が継続しているため、新法が適用される。
昭和27年9月25日最高裁第一小法廷刑集6巻8号1093頁(銃砲刀劒類等所持取締令違反)
横領既遂後の法定刑加重と旧法適用
横領罪は、自己の占有する他人の物について不法領得の意思を発現する行為(売却の意思表示など)をした時点で既遂となり、相手方の承諾や物の引渡しを要しないから、売却の契約締結後・引渡し前に法定刑を重くする改正法が施行されても、行為時の旧法が適用される(大判大2.6.12)。
大正2年6月12日大審院刑録19巻714頁(業務横領賍物故買ノ件)
刑の変更と軽い刑の適用
犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。
実行行為後結果前の法定刑加重と旧法適用
傷害致死罪のような結果犯では、暴行(実行行為)の後、結果の発生までの間に法定刑を重くする改正法が施行されても、行為時の旧法が適用される。
状態犯既遂後の法定刑軽減と新法適用
窃盗罪や殺人罪のように既遂後に法定刑を軽くする改正法が施行された場合は、犯罪後の法律による刑の変更として、刑法6条により軽い新法が適用される。
国内の幇助行為と刑法の場所的適用
共犯行為地も共犯の犯罪地となるとする見解によれば、外国人が日本国内で凶器を貸して外国での殺人を幇助した場合、正犯行為が外国で行われても、幇助者に刑法(殺人幇助罪)が適用される。
属地主義
日本国内で毒薬を飲ませた被害者が公海上の外国船舶内で死亡した場合、実行行為が日本国内で行われているから、行為者が外国人であっても刑法(殺人罪)が適用される(刑法1条1項、犯罪事実の一部が国内で生じれば足りるとする見解による)。
国内の正犯行為と国外の幇助行為
正犯行為地も共犯の犯罪地となるとする見解によれば、外国人が外国で凶器を貸して日本国内での殺人を幇助し、正犯が日本国内で殺人を実行した場合、幇助者に刑法(殺人幇助罪)が適用される。
国外の正犯と国内共犯行為地の扱い
共犯行為地は正犯の犯罪地にならないとする見解によれば、外国人が日本国内で外国人からピストルを借り、外国で外国人を殺害した場合、正犯の犯罪地は外国にしかないから、日本国民が被害者である場合の国外犯処罰規定も適用されず、正犯に刑法(殺人罪)は適用されない。
旗国主義
公海上空を飛行中の日本航空機内で外国人が外国人に毒薬を飲ませ、被害者がその後外国の病院で死亡した場合、日本航空機内で罪を犯した者として刑法(殺人罪)が適用される(刑法1条2項)。