条文・判例・学説を体系的に整理
慰謝料請求権の代位と行使上の一身専属
名誉侵害を理由とする慰謝料請求権は、被害者がその権利を行使する意思を表示しただけでは行使上の一身専属性を失わず、その具体的な金額が当事者間において客観的に確定したとき又は被害者が死亡したときに、行使上の一身専属性を失い、債権者代位の対象となる。
昭和58年10月6日最高裁第一小法廷民集37巻8号1041頁(損害賠償)
金銭・動産の代位請求と自己への給付
債権者代位権の行使において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、債権者は、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。
代位行使の訴え提起後の債務者の処分権
債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。
訴訟係属中の代位行使の制限
債務者が第三債務者に対する金銭債権の支払を求める訴えを提起しているときは、債権者は当該金銭債権を代位行使することができない。
昭和28年12月14日最高裁第一小法廷民集7巻12号1386頁(仮処分申請)
転用型の債権者代位権(登記請求権)
不動産の転得者は、自己の所有権移転登記請求権を保全するため前主が第三者に対して有する所有権移転登記請求権を代位行使することができるが、登記を直接自己に移転するよう求めることはできず、前主名義への登記移転を請求しうるにとどまる。
明治43年7月6日大審院民録16巻537頁(土地賣買登記及代金請求ノ件)
債権者代位権と被保全債権の発生原因
債権者代位権の行使に際し、被保全債権が被代位権利の発生の前の原因に基づいて生じたものであることは要件とされていない。
差押禁止債権と債権者代位権
債権者は、債務者に属する権利であって差押えを禁じられたものについては、行使することができない。
代位行使の通知と債務者の処分権
債権者が被代位権利の行使の事実を債務者に通知した場合であっても、債務者は被代位権利を行使することができる。
代位行使と訴訟告知
債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し訴訟告知をしなければならない。
債権者代位による移転登記請求
不動産が順次売却された場合において中間の移転登記がされていないときは、最終の買主は中間の売主に代位して最初の売主に対し移転登記手続を請求することができる。
明治43年7月6日大審院第二民事部民録16巻17号537頁(土地売買登記及代金請求の件)
代位訴訟と第三債務者の抗弁
債権者代位訴訟において第三債務者が債務者に対する相殺の抗弁を提出した場合、代位債権者は債務者が主張しうる再抗弁のみを提出でき、代位債権者独自の事情に基づく再抗弁を提出することはできない。
昭和54年3月16日最高裁第二小法廷民集33巻2号270頁(第三者の為にする契約に基づく振込金)
賃借権保全のための代位と対抗要件
土地の賃借人は、賃借権について対抗要件を備えていない場合であっても、その土地を不法に占有する者に対し、賃借権を保全するために賃貸人の所有権に基づく返還請求権を代位行使することができる。
昭和4年12月16日大審院民集8巻944頁
履行期前の保存行為の債権者代位
債権者は自己の債権の履行期が到来していなくても、保存行為については債務者に代位して債務者の権利を行使することができる。
動産引渡請求権の代位行使
金銭債権の保全のために、債務者の第三債務者に対する特定の一個の動産の引渡請求権を代位行使する場合、債権者は自己の債権額にかかわらず、その動産全部を自己に引き渡すよう求めることができる。
昭和29年9月24日最高裁第二小法廷民集8巻9号1658頁(室明渡請求)
債権者代位による登記移転の方法
債権者が債務者に代位して第三債務者へ所有権移転登記を求める場合、登記は債務者名義へ移転するよう請求しなければならず、債権者自身への直接移転は請求できない。
第三債務者の抗弁の援用
債権者が代位権を行使した場合、第三債務者は債務者に対して主張し得る同時履行の抗弁権等の抗弁を代位債権者に対しても主張することができる。
昭和54年3月16日最高裁第二小法廷民集33巻2号270頁(第三者の為にする契約に基づく振込金)
代位の被保全債権の先行成立の不要
債権者代位権を行使するためには、被保全債権が被代位債権よりも先に成立している必要はない。
夫婦間契約取消権の廃止と債権者代位
現行民法には夫婦間でした契約を婚姻中いつでも取り消せる特別の取消権はなく、その取消権を債権者が代位行使する場面は生じず、夫婦間契約も一般の意思表示・契約法の規律に従う。
詐欺取消権と債権者代位
詐欺による取消権は、債権者代位権の目的となり得る。
債権者代位権の保全必要性
金銭債権を保全するために債権者代位権を行使する場合、原則として債務者が無資力であることを要する。