条文・判例・学説を体系的に整理
取立債務の確定期限と履行遅滞
取立債務については、確定期限が到来しても、債権者が取立行為をしない(債務者の履行の提供の機会が与えられない)間は、債務者は履行遅滞の責任を負わない。
詐害行為取消しによる支払債務の遅滞
詐害行為取消しによる受益者の受領金支払債務は、期限の定めのない債務であり、履行の請求を受けた時に遅滞に陥る(詐害行為取消判決の確定時に遅滞に陥るのではない)。
平成30年12月14日最高裁第二小法廷民集72巻6号1101頁(旧取締役に対する損害賠償,詐害行為取消請求事件)
返還時期の定めのない消費貸借と催告
返還の時期を定めなかった消費貸借において、貸主が相当の期間を定めて返還の催告をしたときは、借主はその期間経過時から遅滞の責任を負い、貸主が相当の期間を定めないで催告をしたときは、催告の後相当の期間を経過した時から遅滞の責任を負う。
受領不能時の目的物保存の注意義務
買主が目的物を受領することができない場合、売主は履行の提供をした時から引渡しが完了するまで自己の財産に対するのと同一の注意をもって目的物を保存する義務を負う。
受領不能時の保管費用の負担
買主が目的物を受領することができないため売主が保管を続ける場合、その受領不能によって増加した保管費用は買主の負担となる。
登記義務と間接強制
債務者が所有権移転登記義務を履行しない場合、債権者は判決により意思表示が擬制され、間接強制によるのではなく意思表示擬制の方法により履行の強制がされる。
不特定物の引渡債務と直接強制
債務者が不特定物の引渡債務を履行しない場合、債権者は債務名義を得た上で直接強制又は間接強制の方法により履行の強制をすることができるが、代替執行は作為又は不作為を目的とする債務についての方法であり、引渡債務について代替執行の方法によることはできない。
不作為義務違反と代替執行
債務者が一定の高さを超える建物を建築しない義務に違反して建物を建築した場合、債権者は債務名義を得た上で代替執行の方法により超過部分の除去を求めることができる。
建物明渡債務と直接強制
債務者がその居住する建物の明渡債務を履行しない場合、債権者は債務名義を得た上で直接強制の方法により履行の強制をすることができる。
創作的な作為債務と履行の強制
小説を執筆する債務のように、債務者の自由な意思に基づく創作を要する債務は、債務の性質上強制履行が許されず、間接強制の方法による履行の強制をすることもできない。
履行提供後の遅滞責任
買主が目的物を受領することができない場合、売主は履行の提供をした時から目的物の引渡債務につき遅滞の責任を免れる。
公務員間の安全配慮義務
国の公務員である運転者が公務遂行中に道路交通法上の通常の注意義務に違反して自動車事故を起こし、同乗していた国の公務員が被害を受けた場合、運転者の運転上の注意義務違反があったからといって国の安全配慮義務違反があったものとすることはできず、国はその公務員に対して安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負わない(最判昭58.5.27)。
昭和58年5月27日最高裁第二小法廷民集37巻4号477頁(損害賠償)
安全配慮義務違反と遺族固有の慰謝料
雇用契約上の安全配慮義務違反により死亡した者の遺族は、雇用契約ないしこれに準ずる法律関係の当事者でないから、債務不履行により固有の慰謝料請求権を取得せず(最判昭55.12.18)、遺族固有の慰謝料を定める民法711条は他人の生命を侵害した者(不法行為)についての規定である。
昭和55年12月18日最高裁第一小法廷民集34巻7号888頁(損害賠償)
善管注意義務の特約による軽減
特定物の引渡しの債務者が負う善管注意義務は、当事者の特約により軽減することができる。
受領遅滞の効果
債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる。
特定物債務の善管注意義務と受領遅滞
特定物の引渡しの債務者は、引渡しまで善良な管理者の注意をもってその物を保存しなければならないが、債権者の受領遅滞があった場合には自己の財産に対するのと同一の注意に軽減される。
解除催告と債務不履行責任
債務不履行に陥っている債務者が債権者に対して解除するかどうかを確答すべき旨の催告をしても、債権者がその期間内に解除しなかったことをもって債務者の債務不履行責任は消滅しない。
不作為義務の間接強制と違反のおそれ
不作為を目的とする債務の強制執行として間接強制をするには、債務者がその不作為義務に違反するおそれがあることを立証すれば足り、現に違反していることの立証は不要である。
平成17年12月9日最高裁第二小法廷民集59巻10号2889頁(間接強制決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件)
謝罪広告と代替執行
事態の真相を告白して陳謝の意を表明する内容の謝罪広告を新聞紙に掲載すべきことを命ずる判決は、代替執行によることができる。
昭和31年7月4日最高裁大法廷民集10巻7号785頁(謝罪広告請求)
一年以上延滞の利息の元本組入れ
利息の支払が1年分以上延滞した場合において債権者が催告してもなお債務者がその利息を支払わないときは、債権者はこれを元本に組み入れることができる。