条文・判例・学説を体系的に整理
所有権留保と第三者の撤去請求
代金債権の担保として動産の所有権を留保した者は、その動産が第三者の土地上に存在して土地所有権の行使を妨害している場合、残債務の弁済期が到来するまでは特段の事情がない限り撤去義務を負わないが、弁済期が経過した後は、留保された所有権が担保権の性質を有することを理由に撤去義務を免れない。
平成21年3月10日最高裁第三小法廷民集63巻3号385頁(車両撤去土地明渡等請求事件)
共益費用の先取特権と一部債権者の利益
各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用のうち、全ての債権者に有益でなかったものについては、共益の費用の先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。
扶養親族の葬式費用の先取特権
葬式の費用の先取特権は、債務者のためにされた葬式の費用のうち相当な額について存在し、債務者がその扶養すべき親族のためにした葬式の費用のうち相当な額についても存在する。
葬式費用と日用品供給の先取特権の順位
一般の先取特権が競合するときは、共益の費用、雇用関係、子の監護の費用、葬式の費用、日用品の供給の順で優先するから、葬式の費用の先取特権が日用品の供給の先取特権に優先する。
一般先取特権と特別先取特権の優先順位
一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権が一般の先取特権に優先するから(ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する)、一般の先取特権である雇用関係の先取特権と、動産の特別の先取特権である不動産の賃貸の先取特権とが競合するときは、不動産の賃貸の先取特権が優先する。
動産保存の先取特権
動産の保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用又は動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。
先取特権者のための物の保存と優先権
第一順位の先取特権者のために物を保存した者に対しては、第一順位の先取特権者は、その優先権を行使することができない。
動産売買先取特権と占有改定による譲渡
動産売買の先取特権は、債務者が目的動産を第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができず、この引渡しには占有改定による引渡しも含まれる。
昭和62年11月10日最高裁第三小法廷民集41巻8号1559頁(第三者異議)
動産売買先取特権に基づく引渡請求
動産売買の先取特権は目的物の引渡しを請求する権利を含まず、先取特権に基づいて目的物の引渡しを請求することはできない。
電気料金債権と一般の先取特権
法人に対して電気料金債権を有する者であっても、その電気が専ら法人の代表者及び家族の生活に使用されていた場合、法人の財産について一般の先取特権を有しない。
昭和46年10月21日最高裁第一小法廷民集25巻7号969頁(日用品供給の先取特権と法人)
建物賃貸借の譲渡と不動産賃貸の先取特権
建物賃貸借において、賃借権が適法に譲渡され、譲受人が建物に動産を備え付けた場合、賃貸借関係から生じた賃貸人の債権が譲渡前に発生していたものであっても、不動産の賃貸の先取特権はその動産に及ぶ。
不動産保存の先取特権と登記
不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。
一般先取特権の目的財産
一般の先取特権は債務者の総財産について成立するものであり、債務者以外の者の財産には成立しない。
動産売買先取特権と占有改定
動産売買の先取特権の目的物である動産を買主が第三者に売却し、占有改定によりこれを引き渡した場合、動産売買の先取特権はその動産について行使することができなくなる。
昭和62年11月10日最高裁第三小法廷民集41巻8号1559頁(第三者異議)
共益費用の先取特権と特別先取特権
共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有するが、すべての特別の先取特権に当然に優先するわけではない。
農業労務の先取特権の優先
果実に関しては、第一順位は農業の労務に従事する者、第二順位は種苗又は肥料の供給者、第三順位は土地の賃貸人に属するから、土地の賃貸人の不動産賃貸の先取特権は、農業労務の先取特権に優先することができない。
不動産先取特権の順位
同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が競合する場合、不動産保存の先取特権が不動産工事の先取特権に優先する。
同一順位の先取特権者間の配当
同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者はその債権額の割合に応じて弁済を受ける。
不動産工事先取特権の登記と抵当権
工事を始める前にその費用の予算額を登記した不動産工事の先取特権は、その登記に先立って設定登記がされている抵当権に優先する。
雇用関係の一般先取特権
会社の従業員は、会社が給料を支払っていない場合、未払期間にかかわらず、当該会社の総財産について雇用関係の先取特権を有する。