条文・判例・学説を体系的に整理
選挙無効訴訟と民衆訴訟
公職選挙法204条に基づく選挙無効訴訟は、行政事件訴訟法5条の民衆訴訟に該当する。
昭和51年4月14日最高裁大法廷民集30巻3号223頁(選挙無効請求)
行政上の義務の民事仮処分による履行請求
地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に行政上の義務の履行を求める民事訴訟(仮処分申立てを含む)は、法律に特別の規定がない限り法律上の争訟に当たらず不適法である(宝塚市パチンコ店等規制条例事件)。
平成14年7月9日最高裁第三小法廷民集56巻6号1134頁(建築工事続行禁止請求事件)
特許無効審決取消の形式的当事者訴訟性
特許無効審判の審決に対する訴えは、特許法179条ただし書により審判の請求人又は被請求人を被告とするものであり、行政事件訴訟法4条前段の形式的当事者訴訟に当たり、4条後段の公法上の法律関係に関する訴訟ではない。
怠る事実の住民訴訟の民衆訴訟性
普通地方公共団体の住民が、市に対して不法行為を行った者に対して市長が損害賠償請求権を行使しないことの違法確認を求める訴え(住民訴訟)は、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する民衆訴訟である。
機関訴訟の例
かつての職務執行命令訴訟(平成11年改正前の地方自治法146条)や現行の代執行訴訟(地方自治法245条の8第3項)のように、国の機関と地方公共団体の機関との間の権限の行使に関する紛争についての訴訟は、機関訴訟である。
機関訴訟の対象と法定訴訟の原則
機関訴訟とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟であり、行政事件訴訟法42条により、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。
民衆機関訴訟への取消訴訟規定の準用
民衆訴訟は自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものであるため、処分の取消しを求める場合でも、行政事件訴訟法43条1項により、取消訴訟の原告適格に関する9条(及び10条1項)の規定は準用されない。
行政上の工事中止命令不履行と民事訴訟
国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではなく、法律上の争訟に当たらず、強制的に履行させる手段が条例に定められていない場合でも、不適法である。
平成14年7月9日最高裁第三小法廷民集56巻6号1134頁(建築工事続行禁止請求事件)
不作為違法確認と国家賠償の違法の区別
不作為の違法確認訴訟における違法(行政手続上の作為義務の違反)と、応答処分の遅延による損害につき賠償を求める国家賠償請求訴訟における違法(私的利益の侵害という意味での違法)は同じではなく、前者の認容判決の既判力は後者の訴訟には及ばない。
平成3年4月26日最高裁第二小法廷民集45巻4号653頁(水俣病認定業務に関する熊本県知事の不作為違法に対する損害賠償)
行政上の義務履行確保と民事訴訟
国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするもので自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟に当たらない。
平成14年7月9日最高裁第三小法廷民集56巻6号1134頁(建築工事続行禁止請求事件)
許可と民事差止訴訟の関係
産業廃棄物処理施設の設置許可を受けた場合でも、周辺住民は許可の取消訴訟を提起することなく、人格権に基づき施設操業の差止めを求める民事訴訟を適法に提起することができる。
不作為の違法確認訴訟の対象
不作為の違法確認訴訟は、申請に対して相当の期間内に何らの処分もしないことが対象であり、申請を拒否する処分がされた場合には対象とならない。
公害防止協定の履行請求と法律上の争訟
市町村が処分業者に対し、公害防止協定に基づく義務の履行を求める訴えは、法律上の争訟に当たる。
平成21年7月10日最高裁第二小法廷集民231号273頁(産業廃棄物最終処分場使用差止請求事件)
反則行為の不成立主張方法
反則金の通告を受けた者が反則行為の不成立を主張しようとするのであれば、反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときに刑事手続において裁判所の審判を求めるべきである。
昭和57年7月15日最高裁第一小法廷民集36巻6号1169頁(行政処分取消)
行政事件訴訟の分類
行政事件訴訟法第2条は、行政事件訴訟とは、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟をいうと定めている。
法定外抗告訴訟の許容性
行政事件訴訟法が抗告訴訟として列挙する処分の取消しの訴え等の6類型は、抗告訴訟として許容されるものをこれに限定する趣旨ではなく、法定外抗告訴訟(無名抗告訴訟)も認められると解されている(これを認めない異説もある)。
増額再更正と当初更正の訴えの利益
当初の更正処分における所得金額を増額する再更正処分がされると、再調査により判明した結果に基づき課税価格が決定し直されたものであるから、当初の更正は消滅し、その取消しを求める訴えは対象を欠き、訴えの利益を失う(増額再更正の効力が争われるべきものとなる)。
昭和32年9月19日最高裁第一小法廷民集11巻9号1608頁(不当課税取消請求)
取消訴訟の検証物提示命令と民訴の例
行政事件訴訟に関しこの法律に定めがない事項については民事訴訟の例によるから(行政事件訴訟法7条)、取消訴訟においても、裁判所は、民事訴訟法の検証に関する規定に従い、検証の目的物の所持者にその提示を命ずることができる。
国による公開決定取消訴訟と機関訴訟
地方公共団体の長が情報公開条例に基づいてした自衛隊庁舎の設計図面の公開決定に対して国が提起する取消しを求める訴えは、国が建物の所有者として有する固有の利益が侵害されることを理由とするものであれば、行政主体間の権限の行使に関する紛争(機関訴訟)ではなく、国が自己の財産上の権利利益の保護救済を求める訴えとして法律上の争訟に当たる。
平成14年7月9日最高裁第三小法廷民集56巻6号1134頁(建築工事続行禁止請求事件)
取消訴訟から国等への賠償請求への変更
裁判所は、取消訴訟の目的たる請求を、処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体に対する損害賠償その他の請求に変更することが相当であると認めるときは、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、原告の申立てにより、決定をもって訴えの変更を許すことができる。