条文・判例・学説を体系的に整理
懲戒処分の要否の判断と具体的基準
最判昭和52年12月20日は、国家公務員法は懲戒権者が懲戒処分をすべきかどうかについて具体的な基準を設けていないので、懲戒権者は、行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうかを決定することができるとした。
昭和52年12月20日最高裁第三小法廷民集31巻7号1101頁(行政処分無効確認等、附帯)
懲戒処分の種類選択と具体的基準
最判昭和52年12月20日は、国家公務員法は懲戒権者がいかなる懲戒処分を選択すべきかについても具体的な基準を設けていないので、懲戒権者は、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定することができるとした。
昭和52年12月20日最高裁第三小法廷民集31巻7号1101頁(行政処分無効確認等、附帯)
収用委員会の補償額の決定と裁量
土地収用法に基づく損失補償の範囲及びその額の決定につき、収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできず、裁判所は、証拠に基づき裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し、裁決に定められた補償額が認定額と異なるときは、これを違法とし、正当な補償額を確定すべきである。
平成9年1月28日最高裁第三小法廷民集51巻1号147頁(収用補償金増額)
生活保護の老齢加算改定と大臣の裁量
生活保護法に基づく保護の基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か等を判断するに当たっては、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。
平成24年2月28日最高裁第三小法廷民集66巻3号1240頁(生活保護変更決定取消請求事件)
公有水面埋立の国土利用要件と司法審査
公有水面埋立法4条1項1号(国土利用上適正かつ合理的であること)の要件については、諸般の事情を総合的に考慮した都道府県知事の判断が、事実の基礎を欠いたり社会通念に照らし明らかに妥当性を欠いたりするものでない限り、要件に適合するとの判断に瑕疵があるとはいい難い。
平成28年12月20日最高裁第二小法廷民集70巻9号2281頁(地方自治法251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件)
公有水面埋立の環境配慮要件と司法審査
公有水面埋立法4条1項2号(環境保全及び災害防止についての十分な配慮)の要件に適合するとした都道府県知事の判断に違法等があるか否かの裁判所の審査は、専門技術的な知見に基づいてされた知事の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきである。
平成28年12月20日最高裁第二小法廷民集70巻9号2281頁(地方自治法251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件)
剣道実技拒否事件と裁量権の濫用
市立高等専門学校の校長が剣道実技拒否を理由に原級留置処分及び退学処分を行った事案では、代替措置を採ることが実際上可能であったにもかかわらずこれを採らなかった以上、当該学生が剣道実技が必修でない学校を選択できたか否かや入学時の認識にかかわらず、当該処分は裁量権の範囲を超える違法なものとなる。
平成8年3月8日最高裁第二小法廷民集50巻3号469頁(進級拒否処分取消、退学命令処分等取消)
行訴法30条と裁判所の裁量
行政事件訴訟法30条の「取り消すことができる」は、裁量権の逸脱又は濫用がある場合に裁判所が処分を取り消しうることを意味するのであって、裁量権の逸脱濫用があっても取り消すか否かの裁量を裁判所に認める趣旨ではない。
車両制限令の特殊車両認定と裁量
車両制限令所定の基準に適合しないことが車両の構造又は積載貨物が特殊であるためやむを得ないかどうかについての道路管理者の認定は、基本的には裁量の余地のない確認的行為の性格を有するが、具体的事案に応じて道路行政上比較衡量的判断を含む行政裁量を行使することは許される。
昭和57年4月23日最高裁第二小法廷民集36巻4号727頁(車両制限令事件)
毒劇物取締法の登録と設備外事由の考慮
毒物及び劇物取締法に基づく毒物及び劇物の輸入業や販売業の登録は、もっぱら設備の面から規制を加えるものであり、行政庁が登録の対象となる製品の用途や目的等の設備外の事情を考慮して登録を拒否することは、判例上認められない。
昭和56年2月26日最高裁第一小法廷民集35巻1号117頁(毒劇物登録拒否事件)
在留期間更新と裁量審査基準
出入国管理及び難民認定法に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由に関する法務大臣の判断について、裁判所は、その判断が裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法であるとすべきものである。
昭和53年10月4日最高裁大法廷(マクリーン事件)
公立学校施設の目的外使用と管理者裁量
公立学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がないとしても、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的及び態様との関係に配慮した合理的な裁量判断により不許可とすることも許される。
平成18年2月7日最高裁第三小法廷民集60巻2号401頁(損害賠償請求事件)
不利益処分の比例原則
不利益処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合でも、処分の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められることを要するとされることがある。
平成24年1月16日最高裁第一小法廷集民239号1頁(停職処分取消等請求事件)
審査基準と個別事情
申請に対する裁量処分を行うかどうかを判断するための審査基準となる通達があるときでも、行政庁は事案の性質に応じて当該通達の定めと異なる内容の処分をすることが許される場合がある。
平成27年3月3日最高裁第三小法廷民集69巻2号143頁(営業停止処分取消請求事件)
退学処分の司法審査
公立学校の校長が行った学生に対する退学処分の適否を裁判所が審査するに当たっては、校長の裁量を尊重し、裁判所が校長と同一の立場に立って判断するのではない。
昭和52年12月20日最高裁第三小法廷民集31巻7号1101頁(行政処分無効確認等、附帯)
規制権限の不行使と違法
規制を目的とする不利益処分について処分の根拠法令が行政庁に効果裁量を認めている場合であっても処分を行わないという行政庁の不作為が違法となることがある。
平成7年6月23日最高裁第二小法廷民集49巻6号1600頁(損害賠償、民訴法一九八条二項による返還及び損害賠償)
裁量権の限界としての平等原則
処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合でも当該行政庁は理由なく特定の個人を差別的に取り扱い不利益を及ぼす自由を有するものではなくこの意味において行政庁の裁量権には一定の限界がある。
昭和30年6月24日最高裁第二小法廷民集9巻7号930頁(産米供出個人割当通知取消請求)
規制権限の不行使と裁量
規制を目的とする不利益処分について処分の根拠法令が処分を行うか否かの点で行政庁に効果裁量を認めている場合であっても、規制権限の不行使がその許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、処分を行わないという行政庁の不作為は違法となる。
平成7年6月23日最高裁第二小法廷民集49巻6号1600頁(損害賠償、民訴法一九八条二項による返還及び損害賠償)
要件裁量と事実認定
処分の根拠法令が処分要件該当性の判断について行政庁に要件裁量を認めている場合であっても事実認定について行政庁に裁量が広く認められるわけではない。
昭和53年10月4日最高裁大法廷民集32巻7号1223頁(在留期間更新不許可処分取消)
神戸税関事件と判断代置方式の否定
公務員の懲戒処分の適否を審査する裁判所は、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかを判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではない。
昭和52年12月20日最高裁第三小法廷民集31巻7号1101頁(行政処分無効確認等、附帯)