条文・判例・学説を体系的に整理
条例違反の秩序罰の過料と自治体長処分
条例中に、条例に違反した者に対し過料を科する旨の規定を設けることができ(地方自治法14条3項)、これを科する処分は普通地方公共団体の長が行い(同法255条の3の告知・弁明の機会)、裁判所の手続を要しない。
過少申告加算税の賦課と刑罰の併科
追徴税(加算税)は納税義務違反の抑止を目的とする行政上の措置であって刑罰ではないから、同一の事実について追徴税の賦課と罰金等の刑罰とを併科しても、憲法39条(二重処罰の禁止)に違反しない。
昭和33年4月30日最高裁大法廷民集12巻6号938頁(法人税額更正決定取消等請求)
慣習法の行政法上の法源性
慣習法は行政法の法源として認められる場合があり、公水使用権のように私人の権利の根拠として用いられる慣習であっても、行政法の法源としての意義が否定されるわけではない。
昭和37年4月10日最高裁第三小法廷民集16巻4号699頁(行政命令取消請求)
立入検査と実力行使の禁止
立入検査をしようとする職員は、必要最小限の実力を行使して当該医師を排除した上で立入検査を行うことはできない。
犯罪捜査目的の立入検査の禁止
立入検査の権限を犯罪捜査のための手段として行使したような場合には、その立入検査は当該法律の規定に違反する。
昭和47年11月22日最高裁大法廷刑集26巻9号554頁(所得税法違反)
間接強制による立入検査の強制力
立入検査の拒否に罰則が定められていることからすると、当該法は間接的心理的に立入検査の受忍を強制しようとするものといえる。
国家公務員の安全配慮義務
国家公務員の災害補償について国家公務員災害補償法等に詳細な定めが置かれていても、国は、国家公務員に対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負い得る。
昭和50年2月25日最高裁第三小法廷民集29巻2号143頁(損害賠償請求)
公営住宅と私法規定の適用
公営住宅の使用関係は基本的に私人間の家屋賃貸借関係と異なるところはなく、公営住宅法及びこれに基づく条例に特別の定めがある場合を除き、原則として民法及び借地借家法が適用される。
昭和59年12月13日最高裁第一小法廷民集38巻12号1411頁(建物明渡等)
秩序罰としての過料と裁判手続
地方公共団体が条例の規定に基づいて科す過料は、地方自治法255条の3に基づき普通地方公共団体の長が行政処分として科すものであり、裁判手続によることを要しない。
建築基準法の外壁規制と民法の境界距離
建築基準法63条の定める防火地域又は準防火地域内にある耐火構造の外壁を有する建築物については、民法234条1項(境界線から50センチメートル以上の距離保持義務)の適用が排除される。
平成元年9月19日最高裁第三小法廷民集43巻8号955頁(建築基準法65条と民法234条事件)
生活保護受給権と相続
生活保護法に基づく保護受給権は当該個人に与えられた一身専属の権利であって相続の対象とならず、被保護者の生存中の金銭給付を内容とする扶助で既に遅滞にあるものについても相続の対象とはならない。
昭和42年5月24日最高裁大法廷民集21巻5号1043頁(朝日訴訟)
行政上の強制徴収と民事訴訟の関係
行政上の強制徴収が認められている金銭債権については、その履行を求める民事訴訟を提起することはできず、民事執行法による強制執行をすることも許されない。
昭和41年2月23日最高裁大法廷民集20巻2号320頁(農業共済掛金等請求)
行政上の義務の民事執行による履行確保
国が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り提起することが許される。
平成14年7月9日最高裁第三小法廷民集56巻6号1134頁(建築工事続行禁止請求事件)
行政庁の権限の委任と法律の根拠
行政庁が他の行政機関に法律に基づく処分の権限を委任することは、法律の根拠がなければ行うことができないが、行政庁がその権限に属する行為を他の行政機関に専決させることは、法律の根拠がなくても行うことができる。
委任と専決における処分庁の違い
行政庁の有する処分の権限が他の行政機関に委任された場合、当該処分は受任機関の名で行われ受任機関が処分庁となるが、行政庁の権限とされている処分を補助機関が専決により行う場合、当該処分は元の行政庁の名で行われ、その行政庁が処分庁となる。
省間の所掌事務紛争と機関訴訟の法定
省間で所掌事務の範囲をめぐり紛争が生じた場合でも、行政機関相互間の紛争は機関訴訟であり、法律に定める場合に限り提起できるところ、これを認める規定はなく、各行政機関は裁判所に提訴することができない。
権限委任と指揮監督
普通地方公共団体の長がその権限に属する事務の一部を補助機関である職員に委任した場合でも、受任者は長の補助機関である職員であることに変わりはなく、長は、その補助機関である職員を指揮監督する権限(地方自治法154条)に基づき、受任者による当該権限の行使について指揮監督をすることができる。