条文・判例・学説を体系的に整理
政教分離の宗教団体と宗教上の組織
憲法20条1項後段の「宗教団体」、89条前段の「宗教上の組織若しくは団体」は、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体を指す。
平成5年2月16日最高裁第三小法廷民集47巻3号1687頁(運動場一部廃止決定無効確認等、同附帯及び慰霊祭支出差止)
愛媛玉串料訴訟と憲法20条3項・89条
県が宗教法人の挙行した例大祭・みたま祭・慰霊大祭に際し玉串料・献灯料・供物料を公金から支出して奉納したことは、一般人が社会的儀礼にすぎないものと評価しているとは考え難く、県が特定の宗教団体との間にのみ意識的に特別のかかわり合いを持ったことを否定できないから、憲法20条3項・89条に違反する。
平成9年4月2日最高裁大法廷民集51巻4号1673頁(損害賠償代位)
信仰に基づく剣道拒否と宗教的中立性
信仰上の理由による剣道実技の履修拒否に対し、学校が、その理由の当否を判断するため、申請に係る宗教上の信条と履修拒否との合理的関連性が認められるかどうかを確認する程度の調査をすることは、公教育の宗教的中立性に反しない。
平成8年3月8日最高裁第二小法廷民集50巻3号469頁(進級拒否処分取消、退学命令処分等取消)
目的効果基準と政教分離
国家と宗教との関わり合いが憲法20条3項に違反するか否かは、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるかどうかを基準として判断される。
昭和52年7月13日最高裁大法廷民集31巻4号533頁(行政処分取消等)
政教分離原則と公金支出
憲法20条1項後段・3項及び89条は政教分離の原則に基づく規定(政教分離規定)であり、20条3項は国及びその機関の宗教的活動を、89条は公金その他の公の財産の宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のための支出又は利用に供することを禁止しているが、最高裁は、政教分離規定をいわゆる制度的保障の規定であって、国家と宗教との分離を制度として保障することにより間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものとする。
昭和52年7月13日最高裁大法廷民集31巻4号533頁(行政処分取消等)
玉串料と宗教的活動
知事が玉串料として公金を支出して奉納した行為は、たとえそれが戦没者の慰霊及びその遺族の慰謝を直接の目的としてされたものであったとしても、憲法20条3項の禁止する「宗教的活動」に該当する。
平成9年4月2日最高裁大法廷民集51巻4号1673頁(損害賠償代位)
政教分離と完全分離・限定分離
政教分離原則は、国家と宗教との完全な分離を理想としつつも、社会的・文化的諸条件に照らし、国家と宗教との一定のかかわり合いを認めざるを得ない。
昭和52年7月13日最高裁大法廷民集31巻4号533頁(行政処分取消等)
政教分離原則の制度的保障としての性質
政教分離規定は、信教の自由を確実に実現するためには、単に信教の自由を無条件に保障するのみでは足りず、国家といかなる宗教との結び付きをも排除する必要性が大であったことから設けられたものであり、憲法は、政教分離規定を設けるに当たり、国家と宗教との完全な分離を理想とし、国家の非宗教性ないし宗教的中立性を確保しようとしたものである(最大判昭52.7.13)。
昭和52年7月13日最高裁大法廷民集31巻4号533頁(行政処分取消等)
憲法20条3項の「宗教的活動」の意義
憲法20条3項の禁止する「宗教的活動」とは、国及びその機関と宗教とのかかわり合いが相当とされる限度を超え、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいう。
昭和52年7月13日最高裁大法廷民集31巻4号533頁(行政処分取消等)
靖国参拝と損害賠償請求
内閣総理大臣の靖国神社参拝について、他の宗教を信じる者が宗教上の感情を害されたとしても、そのことから直ちに損害賠償を請求することはできない。
平成18年6月23日最高裁第二小法廷(靖国参拝訴訟)
自衛官合祀と信教の自由
判例は、信教の自由の保障は、何人も自己の信仰と相容れない信仰をもつ者の信仰に基づく行為に対して、それが強制や不利益の付与を伴うことにより自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であることを要請しているとし、県護国神社による殉職自衛官の合祀は、信教の自由により保障されているところとして同神社が自由になし得るところであり、それ自体は何人の法的利益をも侵害するものではないとした(自衛官合祀訴訟)。
昭和63年6月1日最高裁大法廷(自衛官合祀訴訟)
宗教的活動の参加強制と信教の自由
憲法20条3項の禁止する宗教的活動に含まれないとされる宗教上の祝典等であっても、国又はその機関がその参加を強制することは信教の自由の直接侵害として憲法20条2項に違反する。
昭和52年7月13日最高裁大法廷民集31巻4号533頁(行政処分取消等)
政教分離と宗教的活動
憲法20条3項は国及びその機関は宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならないと定めるが、判例は、同項にいう宗教的活動とは、国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いをもつすべての行為を指すものではなく、当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうとしている(目的効果基準)。
憲法20条の信教の自由の三つの内容
憲法20条が保障する信教の自由には、内心における信仰の自由、宗教的行為の自由、宗教的結社の自由の三つの内容が含まれる。
内心における信仰の自由の絶対的保障
信教の自由には内心における信仰の自由が含まれ、信仰の自由は内心にとどまるものである限り絶対的に保障され一切の制約が許されない。
信仰に関する申告強制と信教の自由
宗教とは無関係な行政上の要請によるものであっても、いずれの宗教を信じているか等の個人の信仰に関する申告を強制することは、内心における信仰の自由の侵害となる。
宗教的行為の自由の保障根拠
宗教的行為の自由は、憲法20条1項前段の信教の自由の一内容として保障され、同条2項は宗教上の行為等への参加を強制されない自由を定めるものであって、宗教的行為の自由の保障根拠は同条1項前段である。
宗教的結社の自由の信教結社の二重保障
特定の宗教の宣伝や共同で宗教的行為を行うことを目的とする団体を結成する自由は、信教の自由の一内容である宗教的結社の自由として保障されるとともに、憲法21条1項の結社の自由によっても保障されるのであって、信教の自由としての保障が否定されるものではない。
宗教的祭祀への公金支出
判例は、県が神社の挙行する恒例の宗教上の祭祀に際して玉串料等を奉納したことは、県と神社とのかかわり合いが相当とされる限度を超え、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たるとした。
平成9年4月2日最高裁大法廷民集51巻4号1673頁(損害賠償代位)
市有地の神社敷地への無償提供と解消方法
神社敷地として無償使用される市有地を町内会へ譲与した富平神社事件では、寄附前は町内会の前身の実質的所有であったこと、寄附目的の用途が廃止されたこと、施設撤去が地域住民の信教の自由に重大な不利益を及ぼすこと等の事情を総合し、譲与は政教分離上の問題を是正解消する手段として相当性を欠かず、憲法20条3項・89条に違反しないとされた。
平成22年1月20日最高裁大法廷民集64巻1号128頁(富平神社事件)