条文・判例・学説を体系的に整理
条例と法律の関係
条例が国の法令に違反するかどうかは、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較して判断すべきであり、国の法令中に明文の規定がないことだけで、条例が法令に違反しないことになるわけではない。
昭和50年9月10日最高裁大法廷刑集29巻8号489頁(集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反)
条例による刑罰規定と法律の委任
条例は公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であり法律に類するものであるから、条例によって刑罰を定める場合の法律による授権は、相当な程度に具体的であり限定されていれば足りる。
昭和37年5月30日最高裁大法廷刑集16巻5号577頁(大阪市条例第六八号違反)
憲法95条の地方特別法と住民投票
一の地方公共団体のみに適用される特別法の制定に当たっては、憲法95条により、当該地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得ることが要求されているが、実際にこの手続がとられた例はある。
地方議会と国会の制度的差異
地方議会議員の発言について、国会議員の憲法51条の免責特権に当たるものを憲法上保障していると解すべき根拠はなく、地方議会に国会と同様の議会自治・議会自律の原則を憲法上認めることもできない(最大判昭42.5.24)。
昭和42年5月24日最高裁大法廷刑集21巻4号505頁(公務執行妨害、監禁、職務強要)
議院自律権と地方議会
国会には憲法上議院自律権が保障されているが、地方議会の自律権は法律に基づくものであり、国会と同等の憲法上の保障は認められていない。
憲法92条の地方自治の本旨
憲法92条にいう「地方自治の本旨」は、93条で具体化されている住民自治と94条で具体化されている団体自治によって構成されていると解されており、最大判昭38.3.27の判旨もこの理解の余地を失わせるものではない。
地方自治の本旨
憲法92条は地方公共団体の組織及び運営に関する事項は地方自治の本旨に基づいて法律で定めると規定している。
地方公共団体の固有の前国家的基本権
最高裁は、憲法によって保障された地方自治の性質について、地方公共団体が国家に対して固有かつ不可侵の前国家的基本権を有するという固有権説には立っておらず、地方自治を政治民主化の一環として位置づけている。
昭和38年3月27日最高裁大法廷刑集17巻2号121頁(収賄)
国保保険料の租税同等の明確性要求の否定
市町村が行う国民健康保険の保険料方式の強制徴収には租税に類似する性質があるので憲法84条の趣旨が及ぶが、賦課要件の明確性の程度は、当該公課の性質、賦課徴収の目的、強制の度合い等を総合考慮して判断され、租税と同等のものが求められるわけではない。
平成18年3月1日最高裁大法廷民集60巻2号587頁(国民健康保険料賦課処分取消等請求事件)
条例による罰則制定の法律の授権
憲法31条は刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものではないが、条例で罰則を定めるには法律の授権が必要であり、その授権は不特定な一般的な白紙委任的なものであってはならない。
昭和37年5月30日最高裁大法廷刑集16巻5号577頁(大阪市条例第六八号違反)
住民投票と首長の義務
地方自治の本旨から地方公共団体が条例により住民投票を行うことは認められるが、条例で住民投票の結果を尊重するものと定めたことから直ちに、首長に住民投票の結果に従うべき法的義務が導かれるものではない。
条例と法律の関係
条例が法律に違反するかどうかを両者の趣旨、目的、内容及び効果を比較して決する見解によれば、地方公共団体が法律と同一目的で同一の汚染物質について条例でより厳しい排出基準を定めても、その条例が直ちに法律に違反することにはならない。
昭和50年9月10日最高裁大法廷刑集29巻8号489頁(集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反)
条例による罰則と刑罰手続の法定の区別
憲法31条の「法律」には法律の授権を受けた下位法令も含まれ、条例は、法律が相当程度具体的に限定して授権している場合には罰則を定めることができるが、刑罰を科す手続まで条例で定められるとされたわけではない。
昭和37年5月30日最高裁大法廷刑集16巻5号577頁(大阪市条例第六八号違反)
租税法律主義の法律に含まれる条例
地方公共団体が地方税を賦課徴収する場合、住民の代表である議会が民主的手続により制定する条例に基づく限り、行政権による専断的課税を防止する趣旨を害しないから、憲法84条の「法律」には条例が含まれる。
平成18年3月1日最高裁大法廷民集60巻2号587頁(国民健康保険料賦課処分取消等請求事件)
憲法に直接基づく条例制定権
条例は、憲法94条により直接に法律の範囲内で制定する権能を認められた自治立法であり、条例の制定に個別の法律の根拠を必要としない。
昭和37年5月30日最高裁大法廷刑集16巻5号577頁(大阪市条例第六八号違反)
地方特別法と住民投票
一の地方公共団体のみに適用される特別法については、当該団体の住民の権利義務に直接影響があるか否かにかかわらず、その住民投票による同意を必要とする。
地方議会の議事機関性と諮問機関化
憲法93条1項は地方公共団体にその議事機関として議会を設置すると定めており、法律で地方議会を単なる諮問機関とすることは許されない。
令和2年11月25日最高裁大法廷民集74巻8号2229頁(出席停止処分取消等請求事件)
ため池条例の財産権制約と自治事務
地方公共団体は、その事務に属する事項について、公共の福祉を保持するため条例により住民の財産権等の行使に制約を課すことも許され、このこと自体を直ちに違憲ということはできない(奈良県ため池条例事件)。
昭和38年6月26日最高裁大法廷刑集17巻5号521頁(ため池の保全に関する条例違反)
憲法94条の条例に首長規則を含む見解
憲法94条の「条例」には、地方公共団体の議会が制定する条例だけでなく、長の制定する規則も含まれる(広義説、更に各種委員会の規則等まで含む最広義説が多数説)。
憲法95条の一の地方公共団体の意味
憲法95条の「一の地方公共団体」は、一つの地方公共団体という意味ではなく特定の地方公共団体という意味であり、かつ、既に国法上の地方公共団体と認められているものであることを要する。