条文・判例・学説を体系的に整理
生存権と給付の併給調整
生存権を具体化する立法には高度の専門技術的な政策的判断を要するところ、併給調整条項の適用により障害福祉年金の受給者と非受給者との間で児童扶養手当の受給に関する区別が生じても、その区別が著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合でなければ、憲法14条に違反しない。
昭和57年7月7日最高裁大法廷民集36巻7号1235頁(行政処分取消等)
教育内容の決定権
憲法26条の規定の背後には子どもは学習権を有するとの観念があり、子どもに対する教育は専ら子どもの利益のために行われるべきものであるが、教育の内容及び方法を決定する権能は教師のみにあるのではなく、国も、子ども自身の利益の擁護や子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において教育内容を決定する権能を有し、教育内容に対する国家的介入はできるだけ抑制的であることが要請され、誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付けるような教育を施すことを強制することは許されないが、これらのことは国の教育内容の決定権能を否定する理由とはならない。
昭和51年5月21日最高裁大法廷刑集30巻5号615頁(建造物侵入、暴力行為等処罰に関する法律違反)
労働基本権の制約と公共の福祉
労働基本権は、勤労者の経済的地位の向上のための手段として認められたものであって、それ自体が目的とされる絶対的なものではないから、国民全体の共同利益の見地からする制約を免れず、この制約は憲法13条の公共の福祉による制約の内容であって、13条の制約とは別に受ける制約ではない。
昭和48年4月25日最高裁大法廷刑集27巻4号547頁(国家公務員法違反)
勤労の義務と刑罰による強制の禁止
憲法27条1項は国民の勤労の義務を定めるが、これは勤労の権利と併せて勤労の意思のある者に就労の機会を保障する趣旨の道徳的・政治的な義務にとどまり、法律により刑罰をもって勤労を強制することまで許すものではない。
年金の拠出制・無拠出制と立法裁量
学生無年金障害者訴訟判決(最判平成19年9月28日)は、立法府は、補完的に無拠出制の年金を設けるかどうか、その受給権者の範囲、支給要件等の決定について、拠出制の年金の場合に比べて更に広範な裁量を有しているとした。
平成19年9月28日最高裁第二小法廷民集61巻6号2345頁(障害基礎年金不支給決定取消等請求事件)
老齢加算の廃止と期待的利益の裁量判断
最判平成24年2月28日は、老齢加算の廃止は被保護者の期待的利益の喪失を来す側面があることを否定し得ないとしつつ、厚生労働大臣は廃止の具体的な方法等について激変緩和措置の要否などを含め専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有するとし、老齢加算の廃止を内容とする保護基準の改定に裁量権の範囲の逸脱又は濫用はないとした。
平成24年2月28日最高裁第三小法廷民集66巻3号1240頁(生活保護変更決定取消請求事件)
年金の特例水準解消と立法裁量
最判令和5年12月15日は、特例水準によって給付の一時的な増額を受けた者について一律に特例水準を解消することは、年金制度の持続可能性を確保するとの観点から不合理なものではなく、立法府が年金給付を減額する措置をとったことは、裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たらないとした。
令和5年12月15日最高裁第二小法廷民集77巻9号2285頁(年金減額改定決定取消、年金減額改定決定取消等請求事件)
生存権の具体化と上積み給付の引下げ
生存権が法律・保護基準により具体化されると、その給付水準が憲法25条と一体をなして具体的権利となり、不利益変更には自由権の制限と同様の厳格な審査を要するとの見解によれば、最低限度から上積みされていた部分の引下げも厳格な審査に服する。
併給禁止の新設による給付引下げの審査
生存権の具体化により憲法上の具体的権利となった給付水準の不利益変更について厳格な審査を要するとの見解によれば、併給禁止規定の新設による引下げは、従前の具体化された水準からの不利益変更として審査される。
老齢加算の廃止と期待的利益の審査
最高裁は、生活保護基準の改定による老齢加算の廃止について、被保護者の期待的利益の喪失を、厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用を判断する際に可及的に配慮すべき一要素として考慮した。
平成24年2月28日最高裁第三小法廷民集66巻3号1240頁(生活保護変更決定取消請求事件)
障害福祉年金の国籍要件と平等原則
憲法25条の趣旨の具体化は立法府の広い裁量に委ねられており、障害福祉年金の支給対象者から在留外国人を除外することも立法府の裁量の範囲に属し、自国民を在留外国人に優先させることも許されるから、憲法14条1項に違反しない。
平成元年3月2日最高裁第一小法廷集民156号271頁(国民年金裁定却下処分取消請求事件)
堀木訴訟と25条の立法裁量
憲法25条の規定の要請にこたえて制定された法令において憲法14条違反の問題を生じる余地はあるが、併給調整を行うかどうかは立法府の裁量の範囲内に属し、児童扶養手当の受給に係る差別は合理的理由のない不当なものではない。
昭和57年7月7日最高裁大法廷民集36巻7号1235頁(行政処分取消等)
朝日訴訟と25条1項の法的性格
憲法25条1項は直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではないが、厚生大臣が現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し法律によって与えられた裁量の限界をこえた場合又は裁量権を濫用した場合には違法な行為として司法審査の対象となる。
昭和42年5月24日最高裁大法廷民集21巻5号1043頁(朝日訴訟)
生存権の抽象的権利性
憲法25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は極めて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容はその時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、同規定を現実の立法として具体化するに当たっては国の財政事情を無視することができず、また多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。
昭和57年7月7日最高裁大法廷民集36巻7号1235頁(行政処分取消等)
生活保護基準の引下げ
生活保護法による保護の基準を改定して給付水準を引き下げることは、厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がない限り、憲法25条に違反しない。
平成24年2月28日最高裁第三小法廷民集66巻3号1240頁(生活保護変更決定取消請求事件)
生存権と憲法25条各項の関係
憲法25条2項で定める防貧施策については広い立法裁量が認められる一方、同条1項で定める救貧施策については国は国民の最低限度の生活を保障する責務を負うが、前者よりも厳格な違憲審査基準が用いられるわけではない。
昭和57年7月7日最高裁大法廷民集36巻7号1235頁(行政処分取消等)
障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止
障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止規定は、限られた国の財源の下で福祉的給付を行うに当たり、公の金銭的給付についてどのような立法措置を講ずるかの選択決定は立法府の広い裁量に委ねられており、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない。
昭和57年7月7日最高裁大法廷民集36巻7号1235頁(行政処分取消等)
老齢加算廃止と裁量権
「健康で文化的な最低限度の生活」は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、老齢加算を廃止する保護基準の改定についても、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。
平成24年2月28日最高裁第三小法廷民集66巻3号1240頁(生活保護変更決定取消請求事件)
生存権と立法裁量
憲法25条の規定の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられているが、何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いや、個人の尊厳を毀損するような内容の定めがあれば、憲法14条及び13条違反の問題を生じることがある。
昭和57年7月7日最高裁大法廷民集36巻7号1235頁(行政処分取消等)
生活保護基準の設定と司法審査
老齢加算を廃止する保護基準の改定は、厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、激変緩和措置等に関する判断に被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項に違反し、違法となる(最判平24.2.28)。
平成24年2月28日最高裁第三小法廷民集66巻3号1240頁(生活保護変更決定取消請求事件)