条文・判例・学説を体系的に整理
逮捕時捜索の緊急処分説と通常逮捕
証拠隠滅を防止する緊急の必要性を根拠とする見解(緊急処分説)に立っても、刑事訴訟法220条1項は通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕のいずれの場合も対象としており、通常逮捕の場合に逮捕に伴う捜索差押えが認められないことにはならない。
逮捕時の無令状捜索の相当説の範囲
逮捕の現場の捜索差押えを、証拠の存在する蓋然性が高いことから合理的な証拠収集手段として認める見解(相当説)に立つと、令状によらない捜索の範囲は、被逮捕者の身体及び直接の支配下にある場所・物件に限られず、逮捕の現場全体に及ぶ。
無令状捜索の相当説と逮捕行為への着手
逮捕の現場の捜索差押えを合理的な証拠収集手段として認める見解(相当説)に立つと、令状によらない捜索が開始された時点で、逮捕行為に着手している必要はないと考えることができる。
尾行と令状の要否
尾行は、対象者の意思を制圧せず、権利利益を侵害しない任意捜査であり、裁判官の令状を要しない。
覚醒剤の予試験と相手方の同意
所持品検査において、相手方の同意を得て拾得した物の予試験を行うことは、強制処分に当たらず、令状を要しない。
別件逮捕の別件基準説と余罪取調べ
別件について逮捕・勾留の要件が備わっている限り身体拘束は適法とする見解でも、別件による身体拘束中に専ら本件の取調べが行われ、別件の取調べが全く行われていないような場合には、本件の取調べが違法となることがある。
別件逮捕の本件捜査意図説と並行取調べ
別件の逮捕・勾留を専ら又は主として本件の捜査に利用する意図で行った場合に違法となるとする見解でも、別件の取調べと並行して本件の取調べを行った場合に、その身体拘束が違法とならないことがある。
別件逮捕の本件基準説と捜査意図審査批判
別件の逮捕・勾留が専ら又は主として本件の捜査に利用する意図による場合に違法とする見解に対しては、逮捕・勾留の場面で裁判官が捜査機関の意図・目的を審査することは現実的には容易ではないとの批判がある。
逮捕事実に未逮捕事実を併せる付加勾留
検察官が、逮捕していない被疑事実を逮捕された被疑事実に併せて勾留請求した場合に、裁判官が両事実について勾留の理由及び必要性が認められると判断したときは、両事実について勾留状を発付することができるとする見解がある。
別件逮捕の拘束期間実質説と期間の把握
別件による身体拘束期間が主として本件の捜査のために利用されるに至った場合にそれ以降の身体拘束が違法となるとする見解は、逮捕・勾留期間を、その理由とされた被疑事実について被疑者の逃亡・罪証隠滅を防止した状態で起訴・不起訴の決定に向けた捜査を行う期間であると捉える考えと整合する。
勾留期間の満了日
被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から10日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならず、この勾留期間は、勾留の請求をした日を初日として算入して計算する。
現行犯逮捕と令状の要否
現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者は現行犯人であり、現行犯人は、何人でも、逮捕状なくして逮捕することができる。
検察官の勾留請求却下への準抗告
裁判官がした勾留に関する裁判に不服がある者はその取消し又は変更を請求することができ、検察官は、勾留請求を却下する裁判に対しても準抗告を申し立てることができる。
三十万円以下の罰金の軽微事件の勾留
30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被疑者が定まった住居を有しない場合に限り勾留することができ、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある場合であっても、住居が不定でなければ勾留することはできない。
接見禁止の裁判を職権ですることの可否
勾留されている被疑者に対する接見禁止の裁判は、検察官の請求により又は職権ですることができる。
被処分者が不在の場合の捜索の立会人
住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者を立ち会わせることができないときは、隣人又は地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。
被疑者の勾留期間の起算日
被疑者の勾留期間は、勾留の請求をした日から起算し、勾留の裁判があった日から起算するのではない。
逮捕勾留の被疑事実同一性と罪名評価替え
逮捕に引き続く勾留の理由となる被疑事実は、先行する逮捕の理由とされた被疑事実と同一でなければならないが、同一の事実を強盗から恐喝に評価し直しただけの場合は、被疑事実の同一性が失われないから、恐喝の被疑事実を理由として勾留を請求することはできる。
逮捕勾留の被疑事実同一性と別事実勾留
逮捕に引き続く勾留の理由となる被疑事実は、先行する逮捕の被疑事実と同一でなければならないから、強盗の被疑事実で逮捕された者について、これに引き続き、別に判明した別の強盗の被疑事実のみを理由として勾留を請求することはできない。
一罪一逮捕一勾留の原則と一罪の分割
実体法上一罪の関係にある被疑事実を理由とする身体拘束は一回に限り認められるから、強盗の被疑事実を暴行の事実と窃盗の事実に分割して、暴行の被疑事実で逮捕・勾留された後に、改めて窃盗の被疑事実で逮捕状を請求することはできない。