条文・判例・学説を体系的に整理
不法占有の承継と相続
土地を権原なく占有していた被相続人が死亡して相続が開始した場合、被相続人のその土地に対する占有は相続によって承継される。
昭和44年10月30日最高裁第一小法廷民集23巻10号1881頁(田地所有権確認等請求)
個人根保証の相続と保証人の責任
個人根保証契約における保証人の相続人は、主たる債務者と債権者が相続開始後に締結した契約に基づく主債務について履行する責任を負わない。
無権代理行為の追認と共同相続
無権代理人が本人を他の共同相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は相続人全員に不可分的に帰属する。
平成5年1月21日最高裁第一小法廷民集47巻1号265頁(貸金)
未成年者の相続の承認・放棄の熟慮期間
相続人が未成年者であるときは、相続の承認又は放棄をすべき期間は、その法定代理人が未成年者のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
法定単純承認事由としての相続財産の処分
相続人が自己のために相続の開始があったことを知りながら相続財産に属する土地を売却したときは、その相続人は単純承認をしたものとみなされる。
死因贈与と限定承認の対抗
不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合に限定承認がされたときは、死因贈与に基づく受贈者への所有権移転登記が相続債権者の差押登記より先にされても、受贈者は相続債権者に対し所有権の取得を対抗することができない。
平成10年2月13日最高裁第二小法廷民集52巻1号38頁(請求異議)
相続財産に関する費用
相続財産に関する費用は、相続人の過失によるものを除き、相続財産の中から支弁する。
配偶者居住権と共有建物
被相続人の子が、被相続人の死亡時に当該建物を被相続人と共有していた場合は、配偶者は配偶者居住権を取得しない(民法1028条1項ただし書)。
配偶者居住権と共有持分の消滅
遺産分割により配偶者および相続人が当該建物の共有持分をそれぞれ有するに至っても、配偶者が当該建物の所有権の全部を取得しない限り、配偶者居住権は混同によっては消滅しない(民法1028条2項・179条参照)。
配偶者居住権の登記義務
居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う(民法1031条1項)。
配偶者居住権の譲渡
配偶者居住権は、譲渡することができない(民法1032条2項)。
配偶者居住権と必要な修繕
配偶者居住権を取得した配偶者は、当該建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる(民法1033条1項)。
配偶者居住権と有益費の償還
配偶者居住権を有する配偶者は、建物を所有者に返還する場合において、それ以前に支出した有益費につき、その価格の増加が返還時に現存するときは、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額について償還を受けることができる(民法1034条2項・583条2項)。
包括遺贈と債務の承継
相続財産の一部の割合について包括遺贈を受けた者(包括受遺者)は、その割合に応じて相続財産に属する債務を承継する(民法990条)。
慰謝料請求権の相続
被相続人が他人の過失による交通事故によって即死した場合でも、その事故による被相続人の精神的損害についての慰謝料請求権は相続の対象となる。
昭和42年11月1日最高裁大法廷民集21巻9号2249頁(慰藉料請求)
相続財産に属する債務の承継
相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継する。
昭和34年6月19日最高裁第二小法廷民集13巻6号757頁(貸金請求)
他人物売主の地位と相続
他人物の売主が死亡し、その目的物の所有者が売主を単独相続した場合、相続人は、信義則に反すると認められる特別の事情がない限り、自己の所有権に基づいて売主としての履行義務を拒むことができる。
昭和49年9月4日最高裁大法廷民集28巻6号1169頁
相続放棄の遡及効と第三者
相続の放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなされ、この効力は絶対的で何人に対しても登記等なくして生ずるから、放棄者が法定相続分による相続登記を経て持分を第三者に譲渡し移転登記をしても、その第三者は他の相続人に対し持分の取得を主張することができない。
昭和42年1月20日最高裁第二小法廷民集21巻1号16頁(第三者異議)
相続分の指定と相続債権者
遺言により相続分の指定がされている場合であっても、相続債権者は、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができるが、相続債権者が共同相続人の一人に対して指定相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。
平成21年3月24日最高裁第三小法廷民集63巻3号427頁(持分権移転登記手続請求事件)
数次相続と第1相続のみの放棄
第1相続の承認又は放棄をすべき期間中に第1相続の相続人が死亡した場合(第2相続)、第2相続の相続人は、第1相続を放棄して第2相続のみを承認することができる。
昭和63年6月21日最高裁第三小法廷家月41巻9号101頁