条文・判例・学説を体系的に整理
無主物先占と所有者なき不動産の帰属
所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その占有者が所有権を取得するが、所有者のない不動産は国庫に帰属する。
無断増築の所有権と不動産付合の例外
建物の賃借人が賃貸人の了承を得ないで増築をした場合には、増築部分が構造上及び利用上の独立性を有していても、賃借人は増築部分を附属させる権原を有しないから、民法242条ただし書は適用されず、増築部分の所有権は建物の所有者である賃貸人に帰属する。
昭和44年7月25日最高裁第三小法廷民集23巻8号1627頁(建物収去土地明渡請求)
混和による所有権の取得と償金請求
所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合には、付合の規定が準用され、これらの規定の適用によって損失を受けた者は、不当利得の規定に従い、償金を請求することができる。
請負人が材料を提供した建前の所有権
請負人が自ら材料を調達して建築工事を行い、未だ独立の建物に至らない建前の段階で工事を中断した場合には、その建前の所有権は材料を提供した請負人に帰属し、注文者の土地に付合しない。
主従の区別のできない混和(共有)
所有者を異にする物が混和して識別できなくなった場合に、主従の区別ができないときは、各所有者は、混和の時における価格の割合に応じて混和物を共有する。
工作価格が著しく高い加工と所有権帰属
他人の動産に工作を加えて作品を製作した場合に、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者が加工物の所有権を取得する。
即時取得と占有改定
無権利者から動産を譲り受けた者が占有改定による引渡しを受けたにとどまる場合には即時取得は成立せず、その後に現実の引渡しを受けても前主が無権利であることにつき善意無過失でなくなっていたときは即時取得できない。
昭和35年2月11日最高裁第一小法廷民集14巻2号168頁(動産所有権確認同引渡請求)
時効取得と不法行為損害賠償
時効取得者は、取得時効の進行中に目的物を不法に毀損した者に対して損害賠償請求をすることができる。
加工と所有権の帰属
他人の動産に工作を加えた者があるときは、その加工物の所有権は材料の所有者に帰属するが、工作により生じた価格が著しく材料の価格を超えるときは加工者がその所有権を取得する。
立木と明認方法の対抗力
土地の買主が未登記のまま権原に基づいてその土地に立木を植栽した場合、その立木は民法242条ただし書の類推により買主の独立の所有権の客体となり得るが、その所有権を土地の二重譲受人で登記を経た第三者に対抗するには明認方法を要し、その第三者が土地を取得した当時に明認方法が存続していれば対抗することができる。
昭和36年5月4日最高裁第一小法廷民集15巻5号1253頁(立木所有権確認等請求)
立木の明認方法と土地の譲受人
土地の譲受人が未登記のまま権原に基づいて立木を植栽して明認方法を施した場合、その明認方法が、土地の二重譲受人が利害関係を取得した当時にも存続していれば、土地の所有権移転登記を受けた当該二重譲受人に対しても立木の所有権を対抗することができる。
昭和36年5月4日最高裁第一小法廷民集15巻5号1253頁(立木所有権確認等請求)
建築途中の建物と所有権の帰属
請負人が自ら材料を提供して建築した建前がいまだ独立の不動産に至らない段階で第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合、その建物の所有権の帰属は民法246条2項により決せられ、当該第三者が加えた工事及び材料の価格が建前の価格を上回るときはその建物は当該第三者に帰属する。
昭和54年1月25日最高裁第一小法廷民集33巻1号26頁
混和と不当利得
異なる所有者の動産が混和して識別できなくなった場合、所有権を失った者は不当利得の規定に従い償金を請求することができる。
動産の付合と償金請求
所有者を異にする数個の動産が付合により損傷しなければ分離することができなくなったときは主たる動産の所有者が合成物の所有権を取得し、従たる動産の所有者は主たる動産の所有者に対して償金を請求することができる。
盗品・遺失物の回復請求権者の範囲
盗品の回復請求をすることができる「被害者」には、所有者に限られず、盗品を寄託されていた受寄者のように占有を奪われた者も含まれ、賃借人も同様に含まれる。
昭和59年4月20日最高裁第二小法廷集民141号565頁(株券引渡)
指図による占有移転と即時取得
指図による占有移転によっても、民法192条の要件を満たせば即時取得は成立する。
昭和57年9月7日最高裁第三小法廷民集36巻8号1527頁(第三者異議)
即時取得の要件
即時取得が成立するためには、平穏・公然・善意・無過失で動産の占有を始めることが必要であり、占有改定による取得では即時取得は成立しない。
昭和35年2月11日最高裁第一小法廷民集14巻2号168頁(動産所有権確認同引渡請求)
意思無能力者からの取得と即時取得
意思無能力者との取引によって生じた無効の原因があっても転得者が善意無過失であれば即時取得により所有権を取得することができる。
即時取得の善意無過失要件
即時取得が成立するためには取引行為の時に動産の占有を始めた者が善意かつ無過失であることが必要であり、ここでいう善意とは取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信したことをいうから、相手方の権利に疑いを持っていた者は善意の要件を欠く。
昭和26年11月27日最高裁第三小法廷民集5巻13号775頁
伐採木と即時取得の取引行為要件
他人の土地上の立木を自己の土地上にあるものと過失なく信じて無断で伐採して占有を取得しても、取引行為による占有取得がないため、即時取得は成立しない。