条文・判例・学説を体系的に整理
取消可能な債務の保証人の取消権の否定
取り消すことができる法律行為に基づく債務を保証した者は、その法律行為を取り消すことができない。
無権代理における追認拒絶の法的性質
本人が無権代理行為の相手方に対してする追認の拒絶は、意思表示を要素とし相手方に対する法律効果の発生を目的とする単独行為であるから、法律行為に当たる。
債務の承認の法的性質
債務者が債権者に対してする債務の承認は、権利の存在を認識している旨を表示する観念の通知であって効果意思に基づくものではないから、法律行為に当たらない。
相殺の意思表示の法的性質
相殺は当事者の一方から相手方に対する意思表示によってするものであり、対当額で債務を消滅させる効果意思に基づく単独行為であるから、法律行為に当たる。
債務免除の法的性質
債権者が債務者に対してする債務を免除する旨の意思表示は、債権を消滅させる効果意思に基づく単独行為であるから、法律行為に当たる。
弁済受領拒絶の表示の法的性質
債権者が債務者に対してあらかじめ弁済の受領を拒絶する旨を表示することは、債権者の意思を通知する意思の通知(準法律行為)であって、その効果は法律が付与するもので効果意思に基づくものではないから、法律行為に当たらない。
安全配慮義務
国は、公務員に対して、その生命及び健康等を危険から保護するように配慮すべき義務(安全配慮義務)を、信義則上負う。
昭和50年2月25日最高裁第三小法廷民集29巻2号143頁(損害賠償請求)
失効の原則
解除権を有する者が長期にわたりこれを行使せず、相手方においてその権利はもはや行使されないものと信頼すべき正当の事由を有するに至ったという特段の事情がある場合には、解除権の行使は信義誠実の原則に反するものとして許されない。
昭和30年11月22日最高裁第三小法廷民集9巻12号1781頁(仮処分異議)
債権者の問い合わせ義務
動産売買における引渡場所について、買主が売主に問い合わせをすれば知ることが容易であった場合には、問い合わせを怠った買主は、信義則上、遅滞の責任を免れない。
権利濫用による妨害排除請求の制限
妨害により所有権が侵害されても、生じた損失が軽微であり、妨害を除去することが著しく困難で、多大の費用を要する場合には、不当な利益を獲得する目的で妨害の除去を求めることは、権利の濫用として許されない。
強迫取消しと催告による追認のみなし
制限行為能力者の相手方の催告権(20条)は制限行為能力者の取り消すことができる行為についての規定であり、強迫による意思表示をした者に対する催告には適用されず、期間内に確答を発しなくても、その行為を追認したものとはみなされない。
取消後の返還義務と現存利益
行為の時に制限行為能力者であった者は、取り消された行為によって現に利益を受けている限度において返還の義務を負い、受け取った金銭を賭博等で浪費して利益が現存しないときは、その部分の返還義務を負わない。
法定代理人の追認と本人の取消権の消滅
被保佐人がした法律行為を法定代理人が追認したときは、以後その法律行為を取り消すことができない。
未成年者の追認と法定代理人の同意
未成年者は、成年に達するまでは、法定代理人の同意を得なければ、取り消すことができる行為を自ら追認することができない。
取消権の消滅時効
取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないとき、または行為の時から20年を経過したときに時効によって消滅する。
錯誤取消しと承継人
錯誤によって取り消すことができる行為は、錯誤による意思表示をした者の代理人若しくは承継人(契約上の地位の特定承継人を含む)も、取り消すことができる(民法120条2項)。
無償行為の取消しと返還義務
無償行為が取り消された場合、給付を受けた者が、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度において返還の義務を負う。
負担のない贈与の錯誤取消しと返還義務
負担のない贈与について贈与者の錯誤を理由とする取消しがされたが、受贈者が既に給付を受けていた場合、受贈者は、給付を受けた時に贈与契約が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度において返還の義務を負う。
法定追認の要件
取り消すことができる行為について追認をすることができる時以後に法定追認事由に該当する事実が生じたときは追認をしたものとみなされるが、単に履行の請求を受けただけでは法定追認事由に該当しない。
明治39年5月17日大審院民録12巻837頁(約束手形金請求ノ件)
権利の譲渡と法定追認
取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡は法定追認事由に該当する。