条文・判例・学説を体系的に整理
営造物責任と設置管理の瑕疵
営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において周辺住民に危害を生じさせる危険性がある場合(供用関連瑕疵)において、その利用の態様及び程度が社会通念に照らして受忍限度を超えるときは、物理的欠陥がなくても国家賠償法2条1項の設置又は管理の瑕疵が認められる。
昭和56年12月16日最高裁大法廷民集35巻10号1369頁(大阪国際空港夜間飛行禁止等)
営造物責任における費用負担者の範囲
国家賠償法2条1項の営造物責任に関し、同法3条1項の「費用を負担する者」には、当該営造物の設置費用につき法律上負担義務を負う者だけでなく、この者と同等又はこれに近い設置費用を負担し実質的にこの者と当該営造物による事業を共同して執行していると認められる者であって、当該営造物の瑕疵による危険を効果的に防止し得る者も含まれる。
昭和50年11月28日最高裁第三小法廷民集29巻10号1754頁(損害賠償請求)
道路の設置管理の瑕疵と過失の要否
道路の設置又は管理の瑕疵に基づく国又は公共団体の賠償責任(国家賠償法2条1項)は過失の存在を必要としないが、道路管理者が道路を安全な状態に保つことが客観的に不可能又は著しく困難であった場合には、瑕疵の存在が否定され免責されることがある。
昭和50年6月26日最高裁第一小法廷民集29巻6号851頁(損害賠償請求)
河川管理の瑕疵と安全性の判断基準
河川の管理についての瑕疵の有無は、河川管理における財政的、技術的及び社会的諸制約の下での同種・同規模の河川の管理の一般的水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるか否かを基準として判断される。
昭和59年1月26日最高裁第一小法廷民集38巻2号53頁(大東水害訴訟)
営造物管理の瑕疵と費用負担者
国立公園内に県が設置した周回路におけるかけ橋の設置管理の瑕疵により観光客が転落し重傷を負った場合、国が国立公園事業の一部の執行として県による当該周回路の設置を承認し、補助金の交付により設置費用の2分の1近くを負担するとともに、当該営造物につき法律上危険防止の措置を請求しうる立場にあるときは、法律上の設置費用負担義務を負っていなくても、国は国家賠償法3条1項所定の設置費用の負担者として損害賠償責任を負う。
昭和50年11月28日最高裁第三小法廷民集29巻10号1754頁(損害賠償請求)
営造物の設置管理の瑕疵と本来の用法
公の営造物が通常有すべき安全性の有無は、営造物の本来の用法に従った使用を前提として判断されるものであり、設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で営造物が使用された結果生じた損害については、設置管理者は賠償責任を負わない。
平成5年3月30日最高裁第三小法廷民集47巻4号3226頁(損害賠償請求事件)
河川管理の瑕疵と道路管理の瑕疵
未改修河川に要求される安全性は、財政的、技術的、社会的制約等の下で一般に施行されてきた治水事業による河川の改修、整備の過程に対応するいわば過渡的な安全性をもって足りるものとせざるを得ないから、道路の管理の場合とは管理の瑕疵の有無についての判断基準も異なる。
昭和59年1月26日最高裁第一小法廷民集38巻2号53頁(大東水害訴訟)
営造物の瑕疵と第三者への危害
国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態をいい、そこにいう危害は営造物の利用者以外の第三者に対するものを含む。
昭和56年12月16日最高裁大法廷民集35巻10号1369頁(大阪国際空港夜間飛行禁止等)
営造物の設置費用負担者と補助金交付の国
国家賠償法3条1項の設置費用の負担者には、法律上の負担義務者のほか、これと同等もしくはこれに近い費用を負担し実質的に事業を共同して執行していると認められる者が含まれ、地方公共団体に補助金を交付した国も、一定の場合には設置費用の負担者として責任を負う。
昭和50年11月28日最高裁第三小法廷民集29巻10号1754頁(損害賠償請求)
営造物の利用に伴う第三者危害の危険
国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵には、物的施設自体の欠陥による危険性のほか、営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において、利用者以外の第三者に危害を生ぜしめる危険性がある場合も含まれる。
昭和56年12月16日最高裁大法廷民集35巻10号1369頁(大阪国際空港夜間飛行禁止等)
通常予測できない行動と営造物責任
道路に設置された防護柵から幼児が転落した事故において、当該事故が通常予測することのできない被害者の行動に起因するものであった場合には、市が営造物の設置管理者としての責任を負うことはない。
昭和53年7月4日最高裁第三小法廷民集32巻5号809頁(損害賠償)
安全設備の普及と営造物の設置義務
新たに開発された視力障害者用の安全設備を駅のホームに設置しなかったことが設置・管理の瑕疵に当たるかの判断では、事故発生の危険性の程度、設置の必要性の程度、設置の困難性等のほか、その設備が標準化され全国的ないし当該地域に普及しているかどうかも考慮される。
昭和61年3月25日最高裁第三小法廷民集40巻2号472頁(損害賠償)
営造物の無過失責任と不可抗力免責
国家賠償法2条1項の責任は設置・管理者の過失を問わないが、損害の発生が不可抗力ないし回避可能性のない事由(設置・管理者の予測しえない事由)によるときは、同項の責任を免れ得る。
昭和56年12月16日最高裁大法廷民集35巻10号1369頁(大阪国際空港夜間飛行禁止等)
営造物の瑕疵による第三者被害
国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵による危害は、営造物の利用者に対するものだけでなく、利用者以外の第三者に対するものも含む(最大判昭56.12.16)。
昭和56年12月16日最高裁大法廷民集35巻10号1369頁(大阪国際空港夜間飛行禁止等)
改修済み河川の安全性の基準
工事実施基本計画に準拠して改修、整備がされた河川の備えるべき安全性とは、同計画に定める規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性をいう(最判平2.12.13)。
平成2年12月13日最高裁第一小法廷民集44巻9号1186頁(損害賠償)
改修中の河川の過渡的安全性
河川の備えるべき安全性は、治水事業の過程における改修・整備の段階に対応する安全性をもって足りる(最判平2.12.13)。
平成2年12月13日最高裁第一小法廷民集44巻9号1186頁(損害賠償)
道路管理の瑕疵と予算不足
道路への落石防止措置の費用が多額にのぼり予算措置に困却するとしても、道路管理者は道路管理の瑕疵による賠償責任を免れない(最判昭45.8.20)。
昭和45年8月20日最高裁第一小法廷民集24巻9号1268頁(損害賠償請求)