条文・判例・学説を体系的に整理
行政不服審査の裁量処分の当不当の審査
行政不服審査においては、行政事件訴訟と異なり、裁量権の範囲内の当不当の問題についても審査することができる。
審査請求の対象となる事実上の行為
行政不服審査法上の「処分」には、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為が含まれ、公権力の行使に当たる事実上の行為も審査請求の対象となる。
再調査請求と審査請求の自由選択
行政庁の処分につき法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、処分に不服がある者は、再調査の請求と審査請求のいずれかを選択することができ、再調査の請求を経なければ審査請求ができないわけではない。
審査請求書の不備と補正命令の義務
審査請求書が19条の規定に違反する場合(審査請求の趣旨が記載されていない場合を含む)には、審査庁は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。
条例処分の不服申立てと条例の特則
行政不服審査法は、条例に基づく処分については審査請求をすべき行政庁を条例で特別に定めることができるとする(4条柱書)など、条例に基づく処分に対する不服申立てに関し条例による特別の定めを設けることを予定しており、これを認めていないわけではない。
行政不服審査法の固有の資格の意義
行政不服審査法7条2項の「固有の資格」とは、一般私人とは異なり、国の機関等であるからこそ立ち得る特有の立場をいい、その資格の有無は、処分に係る事務又は事業の実施主体が国の機関等に限られているか否か、限られていない場合でも当該事務又は事業を実施し得る地位の取得について国の機関等が一般私人に優先するなど特別に取り扱われているか否か等を考慮して判断すべきである。
令和2年3月26日最高裁第一小法廷民集74巻3号471頁(地方自治法251条の5に基づく違法な国の関与(裁決)の取消請求事件)
事実行為への審査請求の裁決と撤廃変更
事実上の行為についての審査請求に理由があり事情裁決をする場合でないときは、審査庁は裁決で違法又は不当である旨を宣言するとともに、処分庁以外の審査庁は撤廃又は変更を命じ、処分庁である審査庁は自ら撤廃又は変更するが、処分庁の上級行政庁以外の審査庁は変更を命じることができない。
審査庁の指揮監督権と審査請求
処分に関する審査請求について、審査庁が指揮監督権を有する上級行政庁である場合、当該審査庁は当該審査請求に対する裁決において審査請求の対象となった処分を変更すること又は変更すべき旨を命ずることができ、審査庁である上級行政庁が処分庁に当該処分をする権限を委任していた場合であっても、審査庁としての裁決権限に基づき処分を変更すること又は変更すべき旨を命じることができる。
審理員の指名義務
行政不服審査法は、審査庁に対し、審理員を指名し通知することを義務付け(9条1項)、処分に関与した者等以外の者を審理員に指名しなければならないとしており(同条2項)、これは努力義務にとどまるものではなく審査庁が遵守すべき義務である。
口頭意見陳述の招集
口頭意見陳述は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとされている(行政不服審査法31条2項)。
審理員意見書と行政不服審査会への諮問
審理員は、審理手続を終結したときは審理員意見書を作成して審査庁に提出しなければならず、行政不服審査会への諮問を行うのは審査庁であり、審理員が直接諮問することはない。
裁決と審理員意見書の関係
審査庁は、審理員意見書に拘束されるわけではないが、裁決の主文が審理員意見書と異なる内容である場合には、異なることとなった理由を裁決書に記載しなければならない。
再調査の請求に関する教示と送付義務
再調査の請求をすることができる処分につき処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、当該処分庁に再調査の請求がされ、再調査の請求人から申立てがあったときは、処分庁は再調査の請求書又は再調査の請求録取書及び関係書類を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならず、送付されたときは初めから審査請求がされたものとみなされる。
審査庁の執行停止権限と効力停止の補充性
処分の取消しを求める審査請求が適法にされた場合において、処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、当該処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置をとることができるが、処分の効力の停止は、それ以外の措置によって目的を達することができるときは、することができない。
申請却下・棄却処分に対する裁決と裁量
処分庁の上級行政庁である審査庁が、申請を却下し又は棄却する処分を取り消す裁決をする場合に、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、処分庁に対し当該処分をすべきことを命ずるが(行政不服審査法46条2項1号)、この命令が発せられない場合であっても、処分庁は裁決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならず(同法52条2項)、裁決の内容にかかわらず処分庁の判断に委ねられるわけではない。
不作為についての審査請求の裁決
申請に対する不作為についての審査請求に理由がある場合、審査庁は裁決で不作為が違法又は不当である旨を宣言した上で、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときに限り、不作為庁の上級行政庁である審査庁は不作為庁に対し当該処分をすべき旨を命じ、不作為庁である審査庁は自ら当該処分をする。
弁護士会の懲戒と処分性
弁護士会が弁護士法の規定に基づいて行う所属弁護士に対する懲戒は、自己に与えられた公の権能の行使として行うものであって広い意味での行政処分に属し、行政不服審査法による審査請求の対象となる同法上の「処分」(行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為)に当たる。
昭和42年9月27日最高裁大法廷民集21巻7号1955頁
行政不服審査の審査請求の方式
行政不服審査法上、審査請求は原則として審査請求書を提出して行わなければならず(19条1項)、他の法律(条例に基づく処分については、条例)に口頭ですることができる旨の定めがある場合に限り口頭での審査請求が認められる。
不利益変更の禁止
処分庁の上級行政庁である審査庁は処分庁に対する一般的指揮監督権を有するが裁決で当該処分を審査請求人の不利益に変更することはできない。
不作為に対する不服申立期間
行政庁の不作為についての不服申立てに関しては不服申立期間の制限がなく不作為状態の続く限りいつでも申立てが可能である。