条文・判例・学説を体系的に整理
行政代執行の対象と代替的作為義務
行政代執行法による代執行の対象となる義務は、他人が代わってすることのできる行為(代替的作為義務)に限られ、建築工事を中止すべき義務のような不作為義務は対象とならない。
行政代執行の補充性と公益要件
行政代執行法2条は、義務者が義務を履行しない場合において、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、かつ、その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときに、代執行をすることができると定める(要件は選択的ではなく、両方を要する)。
営業停止義務の代執行の可否
営業停止処分による義務は営業をしないという不作為義務で、行政代執行法2条のいう「他人が代つてなすことのできる行為」ではないから、営業を続ける者に対し、営業を停止させる手段として代執行を用いることはできない。
代執行義務の根拠となる法律の範囲
行政代執行法2条は、代執行の対象となる義務を課す「法律」に法律の委任に基づく命令・規則・条例を含むとしており、法律の委任に基づく条例による処分によって課される義務についても代執行を行うことができる。
所有権に基づく代執行の可否
所有権に基づく物権的請求権を有する者であっても、行政代執行法に基づく代執行を行うことはできない。
代執行の文書による戒告と履行期限
行政代執行法3条1項により、代執行をなすには、原則として、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない(同条3項に緊急の場合の例外がある)。
罰則の適用と代執行の補充性要件
義務不履行について罰則の適用があるとしても、そのことのみで、行政代執行法2条の「他の手段によってその履行を確保することが困難」という要件を欠くことにはならない。
代執行費用の徴収方法
行政代執行法6条1項により、代執行に要した費用の納付を文書で命じても義務者が従わないときは、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。
代執行費用の徴収
行政代執行法に基づく代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により徴収することができ、民事裁判手続による必要はない。
道路法に基づく監督処分と代執行
道路法第71条に基づく監督処分として物件の撤去及び道路の原状回復を命じた場合、その命令に係る義務は行政代執行法に基づく代執行の対象となる。
都市計画決定の法的拘束力
行政計画に分類される都市計画決定の内容は私人に対して法的拘束力を有することがある。
昭和57年4月22日最高裁第一小法廷民集36巻4号705頁(盛岡広域都市計画用途地域指定無効確認)
通達発令権限
国家行政組織法第14条第2項は、各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができると定めているが、これは通達発令権限を有する行政機関を限定する趣旨ではないから、局長や部長といった内部部局の長も、所掌事務について通達を発することができる。
法の正しい解釈に沿う通達と課税の適法性
非課税の取扱いが長期間続いた後に、法定の課税対象物品に該当する旨の通達が発せられても、通達の内容が法の正しい解釈に合致する以上、通達を機縁としてされた課税処分は法の根拠に基づく処分であり、違法ではない。
昭和33年3月28日最高裁第二小法廷民集12巻4号624頁(物品税課税無効確認並びに納税金返還請求)
通達発出の権限
通達は上級機関が関係下級機関・職員に対してその職務権限の行使を指揮する等のために発するものであり、当該職務権限の行使を規律する法令の中に通達を発することができる旨の規定がなくても、上級機関はこれを発することができる。
昭和43年12月24日最高裁第三小法廷民集22巻13号3147頁(法律解釈指定通達取消請求)
通達と裁判所の拘束
裁判所は、法令の解釈適用に際しては、通達に示された法令の解釈に拘束されない。
昭和43年12月24日最高裁第三小法廷民集22巻13号3147頁(法律解釈指定通達取消請求)
通達に反する措置と平等原則
通達は法規ではないから通達違反それ自体で処分が違法となるものではないが、事務処理の全国的統一のための通達に反する措置は、通達に準拠して行われた他の措置との関係において、平等原則違反を理由に違法と判断される余地がある。
昭和43年12月24日最高裁第三小法廷民集22巻13号3147頁(法律解釈指定通達取消請求)
各省大臣の省令制定権
各省大臣は、主任の行政事務について、法律又は政令の特別の委任に基づくことなく、法律又は政令を施行するための省令を発することができる。
学習指導要領の法規性
告示は必要事項を公示するための形式であるが、文部科学大臣が告示として定める学習指導要領は法規としての性質を有する。
平成2年1月18日最高裁第一小法廷集民159号1頁(伝習館高校事件)
通達の法的性質
各省大臣の発する通達は、所管の諸機関及び職員に対する内部的な命令であるが、国民に対する直接の法的拘束力を有しないため、法規としての性質を有しない。
昭和43年12月24日最高裁第三小法廷民集22巻13号3147頁(法律解釈指定通達取消請求)
通達違反の処分の効力
行政機関が通達に反する処分をした場合でも、当該処分が直ちに無効となるわけではない。
昭和43年12月24日最高裁第三小法廷民集22巻13号3147頁(法律解釈指定通達取消請求)