条文・判例・学説を体系的に整理
国民審査権の制限とやむを得ない事由
最高裁は、国民の審査権又はその行使を制限するためにはやむを得ない事由が必要であり、その制限をすることなしには国民審査の公正を確保しつつ審査権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であると認められる場合でない限りやむを得ない事由はなく、国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは憲法に違反すると判断した。
令和4年5月25日最高裁大法廷民集76巻4号711頁(在外日本人国民審査権確認等、国家賠償請求上告、同附帯上告事件)
在外国民審査権の立法不作為と国賠責任
最高裁は、在外国民に審査権の行使を認める制度に関する議論の状況等を理由に、国会における違憲性の明白性を否定して国家賠償法上の違法の評価を受けないとした原審の判断を是認せず、立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けると判断した。
令和4年5月25日最高裁大法廷民集76巻4号711頁(在外日本人国民審査権確認等、国家賠償請求上告、同附帯上告事件)
国民審査権と選挙権の関係
最高裁は、国民審査権は、国民主権の原理に基づき憲法に明記された主権者の権能の一内容である点において選挙権と同様の性質を有することに加え、憲法が衆議院議員総選挙の際に国民審査を行うこととしていることにも照らせば、憲法は、選挙権と同様に、国民に対して審査権を行使する機会を平等に保障していると解した。
令和4年5月25日最高裁大法廷民集76巻4号711頁(在外日本人国民審査権確認等、国家賠償請求上告、同附帯上告事件)
地方議会の懲罰と司法審査
地方議会の議員に対する出席停止の懲罰について、その議員が取消しを求める訴えは、法令の適用によって終局的に解決し得る法律上の争訟に当たるところ、議会に一定の裁量が認められるとしても、裁判所は常にその適否を判断することができ、司法審査の対象となる。
令和2年11月25日最高裁大法廷民集74巻8号2229頁(出席停止処分取消等請求事件)
政党の内部紛争と司法審査
政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名処分は、原則として自律的な解決に委ねるのが相当であり、その除名処分が一般市民法秩序と直接の関係のない内部的な問題にとどまる限り司法審査の対象とはならないが、一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、当該処分の当否は、当該政党の自律的な規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限りその規範に照らし、規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続にのっとってされたか否かによって決すべきであり、その審理もこの点に限られる。
昭和63年12月20日最高裁第三小法廷集民155号405頁(家屋明渡等請求事件)
裁判員制度と国民の司法参加
大日本帝国憲法で「法律ニ定メタル裁判官ノ裁判」を受ける権利が保障されていたのに対し、日本国憲法第32条が保障するのは「裁判所において裁判を受ける権利」であることを踏まえれば、憲法上国民の司法参加がおよそ禁じられていると解すべき理由はない。
平成23年11月16日最高裁大法廷刑集65巻8号1285頁(覚せい剤取締法違反,関税法違反被告事件)
裁判の公開と裁判を受ける権利
性質上純然たる訴訟事件につき、事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定するような裁判が、憲法所定の例外の場合を除き、公開の法廷における対審及び判決によってなされないとするならば、それは憲法82条に違反するとともに、憲法32条が基本的人権として裁判請求権を認めた趣旨をも没却するものである(最大決昭35.7.6)。
昭和35年7月6日最高裁大法廷民集14巻9号1657頁(調停に代わる裁判に対する抗告についてなした棄却決定に対する再抗告)
憲法32条の保障内容
憲法32条は「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない」と規定し、民事・刑事を問わず裁判所による裁判を受ける権利を保障する。
裁判の公開の原則
憲法82条1項は裁判の対審及び判決は公開法廷でこれを行うと定め、裁判の公開を制度として保障している。
平成元年3月8日最高裁大法廷民集43巻2号89頁(メモ採取不許可国家賠償請求事件)
訴えの利益を欠く訴訟と裁判を受ける権利
憲法32条は、訴訟の当事者が訴訟の目的である権利関係について裁判所の判断を求める法律上の利益を有することを前提として、そのような訴訟について本案の裁判を受ける権利を保障したものであって、その利益の有無にかかわらず常に本案につき裁判を受ける権利を保障したものではない。
昭和35年12月7日最高裁大法廷民集14巻13号2964頁(碧南市議会議員除名取消請求)
地方議会の除名処分と司法審査
地方議会議員に対する懲罰としての除名処分は、議員の身分の喪失に関わるため、単なる内部規律の問題にとどまらず司法審査の対象となる。
昭和35年10月19日最高裁大法廷民集14巻12号2633頁(懲罰決議等取消請求)
大学の単位認定と司法審査
大学の単位認定行為は、他にそれが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として司法審査の対象とならない。
昭和52年3月15日最高裁第三小法廷民集31巻2号234頁(単位不認定等違法確認請求)
国家資格と単位認定の司法審査可能性
特定の授業科目の単位取得が国家資格取得の前提要件とされている場合には、大学の単位認定行為が一般市民法秩序と直接の関係を有するものとして司法審査の対象となる可能性がある。
部分社会の法理
自律的な法規範を有する団体の内部紛争については、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の司法審査は及ばない。
昭和52年3月15日最高裁第三小法廷民集31巻2号234頁(単位不認定等違法確認請求)
議員の中核的活動を制約する議会決定の審査
地方議会の議員の議事参与・議決等の議員としての中核的な活動を制約する議会の決定は、その性質や議員活動に対する制約の程度に照らし、その適否が専ら議会の自主的・自律的な解決に委ねられるべきものではなく、司法審査の対象となり得る。
令和2年11月25日最高裁大法廷民集74巻8号2229頁(出席停止処分取消等請求事件)
政党の内部問題と審判権の限界
政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばない。
昭和63年12月20日最高裁第三小法廷集民155号405頁(家屋明渡等請求事件)
政党の除名処分に対する司法審査の枠組み
政党の内部的な除名その他の処分は、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部問題にとどまる限り司法審査の対象とならず、一般市民としての権利利益を侵害する場合でも、自律的規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り、その規範(規範がないときは条理)に照らして適正な手続に則ったか否かに審理が限られる。
昭和63年12月20日最高裁第三小法廷集民155号405頁(家屋明渡等請求事件)
政党の内部紛争と司法審査の原則
政党の党員がその政党の存立や秩序維持のために自己の権利や自由に制約を受けることがあることは当然であり、政党が組織内の自律的運営として党員に対して行った処分の当否については原則として自律的な解決に委ねるのが相当である。
昭和63年12月20日最高裁第三小法廷集民155号405頁(家屋明渡等請求事件)
政党の処分と一般市民法秩序
政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、処分の内容や制約される権利の性質等を個別に考慮するまでもなく、裁判所の審判権は及ばない。
昭和63年12月20日最高裁第三小法廷集民155号405頁(家屋明渡等請求事件)
政党処分と市民法上の権利
政党の処分が党員の一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、処分の当否は、政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限りその規範に照らし、規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続に則ってされたか否かによって決すべきであり、裁判所の審理もその点に限られる。
昭和63年12月20日最高裁第三小法廷集民155号405頁(家屋明渡等請求事件)